世界はそれを…これはとあるお話の続きの話。
あったかも知れないし、無かったかもしれない
そんなお話。
「我が可愛い可愛い息子、万太郎~おかえり~」
「お帰りなさい、万太郎」
「父上!母上!ただいまー!」
わぁあ とお城の出入り口で抱き合う3人組
キン肉万太郎の父親キン肉スグルと母親のビビンバが帰省した万太郎を出迎えて抱きしめ合う。
久しぶりの帰省に万太郎は大喜びで両親の愛を受け止める
「ミートから聞いておるぞ、今回消えてしまいそうになったらしいのお」
「もうこの子は心配ばかりかけて」
「えへへ、ごめんよ母上」
「そこをケビンマスクが助けたそうじゃのぉ、良かったのぉ万太郎」
「まあ、それなら今度お会いした時にお礼をしなくちゃ」
「ケビンにそこまでしなくて僕いいと思うけどな~」
「何を言っているのこういうのはちゃんとするものです」
「ふーん」
(そう言えばあの時嬉しさが勝って忘れてたけど、ケビンが僕を見つけてくれた時、ずっと人に触れられなかったのに何でケビンには触れられたんだろ?)
はて、と首を傾げるが まあ助かったからいっか、なんか知らないけどケビンも僕のこと見えてたみたいだし と思考を切り親子水入らずの時間に戻る。
今は何より父上と母上と沢山お話したいし甘えたい、そう思い父上と母上の手を繋いでもう一度 ただいま!父上!母上! と言う。2人は声を揃えて おかえり と僕の頬にキスを落としてくれた。
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「って、親子の感動的な再会シーンの筈なのに…何このゴミの山」
ロビーを抜けていつも家族団欒に過ごしている部屋に向かうとそこには山のように積まれたガラクタが部屋の真ん中にあり万太郎が指をさして尋ねた。
「おーおー万太郎これはガラクタじゃないぞ、お前の生まれてきてからの思い出のものばかりじゃ」
「いーえ!ゴミです!あれほど片付けてと言ったじゃないですか!」
「ひ、酷いぞビビンバ!万太郎との思い出を捨てろというのか!」
「だからと言って初めて万太郎が使ったおまるや、初めて万太郎が拾ってきたいい感じの木の棒など必要ありません!場所がいくらあっても足りないんだから!」
「父上……」
万太郎本人も少し引き気味になる。
流石にそれは捨てようよと、妻と息子から言われて肩をガックシと落として渋々選別をし始める。
その様子を見たビビンバがフーと思いため息をつく、そんな両親を見てフッと笑みが零れる
(僕、消えなくて良かった)
そう思い目線をガラクタの山に向けて見るとガラクタの中に埋まっていた古びた絵本に目が止まった。
万太郎は不思議と吸い寄せられるように手が伸びてその本を取ると表紙についた埃を手で払う
「なんか…見たことある…」
「あら!懐かしい!ここにあったのね!」
「母上この本知ってるの?」
「知ってるも何も昔貴方に良く読み聞かせていた絵本よ、ふふっ懐かしいわぁ」
万太郎の手からビビンバの手に渡ってページを捲っては微笑む母の姿に どうやらこの本好きみたい、と微笑んでいるとビビンバの口から思わぬ事を聞かされた
「そう言えば昔…アリサさんとケビンマスクが来た時寝かしつける為にこの本を一緒に読んだわねぇ…」
「え、ケビンが?うちに来て?」
「そうよ。アリサさんもこの絵本気に入っちゃったから何度も読んだの、懐かしいわぁ。
そしてその時の…ふふ、貴方とケビンの言葉が可愛くてね、余計にこの絵本が好きになっちゃったの」
「言葉?僕とケビンの?」
「ええ、恋をしてしまう王子とお姫様のお話なのだけど貴方達がじゃあ愛しちゃったらどうなるのー?って聞きに来るからなんてお間瀬さん何でしょって思ってね。貴方ならどうするのー?って2人に聞き返したの、そしたら…ふふ」
クスクスと笑うビビンバに そんな事聞いたの!? と気恥ずかしくなる万太郎、幼少期の事とは言え自分の記憶に無い思い出に何を口走ったのか気が気で無い万太郎は少し躊躇いながら なんて言ったの? とビビンバにその言葉の先を問う。
すると優しく微笑んだあとにこう言ったのだ
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早朝
正義超人たちの合同練習場にて
休みの日で閉まっている筈だがそこに1人の人影があったキン肉万太郎はキン肉星から帰ってきた後ビビンバのあの言葉を聞いてから気が動転して体を動かずには居られず最近だと自主的に毎朝ここに来てはミット打ちをして何も考えないようにする事に必死だった。
「はあ…はあ……熱い…」
ギィとパイプ椅子に座って汗をタオルで拭う
フーと息を着いて天井を見上げればまたあの言葉を思い出してブンブンと首を振る
「もう…聞くんじゃなかったよ…あんな事……」
また思い出してしまった、顔が熱くなる。
そうビビンバから聞いた昔自身が言った言葉とケビンが言った言葉
貴方は愛を知ってしまったら
運命の人に出会ってしまったら
貴方はどんな風に世界が見えちゃうのかしらね
『その時、ケビンマスクったらこう言うのよ
誰よりも早く駆けつけて 誰よりもその人を見つけて
命をかけて守ってあげるって
ふふっ、あの時からナイト様だなんて素敵だわ
ケビンマスクに愛されちゃったらきっとその人は幸せ者ね』
『・・・ふーん、ケビンってそんな小さいときからキザだったんだ~で、僕はなんて言ったの?』
『貴方はね 離れたくないって』
『へ?』
『ずっと離れたくない!ずっと傍に居たい!寂しいときも悲しいときもずっと傍に居てほしいって、ふふっ可愛いわねぇ』
『ちぇ、なんだよ、僕ももっとかっこいい事言えばいいのにただの駄々っ子じゃん』
『仕方ないわよ、貴方は幼かったから、でその続きなんだけど』
『げぇ、まだ何かあるの?』
『貴方ったらケビンマスクの方を見てね だからずっと僕の傍に居てね って言ってたの、ケビンマスクも分かった僕が万太郎が困った時誰よりも早く傍に居るね!って言うもんだから可愛くて仕方無くてって・・・どうしたの?万太郎?』
その言葉に顔全体が赤くなって黙り込む。
そしてそれからというもの万太郎はその言葉を思い出しては赤面をするのを繰り返してた。
(小さいときの事とは言え恥ずかしすぎる・・・ケビン覚えて無いと良いけど・・・)
椅子から立ち上がり目の前にあるサンドバッグをボス、ボスと殴る。
そんな事をしても過去が改竄されるはずも無いが、行き場の無いこの感情を一人で発散し処理するにはこうするしか無い。
ミートには自主練を始めた万太郎にまだ具合が悪いのでは無いかと心配される始末だ。
(僕の事なんだと思っているんだ・・・)
ポス、サンドバッグに頭をひっつけてケビンの事を考える。
(いつもいつも、僕がピンチの時に駆けつけてくれる・・・不安なとき、悲しいとき、辛いとき・・・キザで格好付けで気に食わない奴だけど、僕は・・・)
「・・・・・・」
かぁあ・・・とまた顔が赤くなる。心臓の音を落ち着かせたいのにちっとも落ち着いてくれない。
駄目だよ自覚しちゃ・・・だってこんなの・・・
「僕・・・ケビンの事・・・」
「俺がどうかしたのか?」
「ひぎゃああ!!」
後ろから声を掛けられて心臓が飛び跳ねるくらいびっくりし目の前のサンドバッグに飛びつき抱きしめる、ドッ、ドッと鳴る心臓に胸を押さえながら声を掛けてきた人物を見るとそこには一番今会いたくない人物のケビンマスクが立っていた。
「なんつー声上げてんだ・・・」
「ケ、ケビンがいきなり声かけるからだろ!てかなんでここに居るの!?」
「ミートがお前の様子がおかしいから様子を見てくれって頼まれたんだよ。まだ調子でも悪いのか?お前が自主練なんてよ・・・」
(よ、余計な事を・・・大体みんな僕の事なんだと思ってんだ!ていうかそれで来ちゃうケビンもケビンじゃん・・・何だよもう断っちゃえば良いのに・・・)
「ケビンには関係無いから!別に体調も悪く無いし、考え事しててちょっと体動かしたかっただけだし」
「考え事?なら俺が相談に乗ってやろうか?」
「は、はあ!?」
なんでそうなるんだ!?と目を白黒させる。
ケビンは ほら、早く話せと言うように万太郎に迫る、こんなに強引な奴だっけ!?と近づいてくるケビンにサンドバッグの後ろに隠れて盾代わりにする。
(ど、どうしよう、本人目の前にすると余計に意識しちゃって・・・)
こんな引き腰な事無いのにとケビンの前だといつもの僕じゃ無いみたいに臆病になってしまう。
ケビンには気づかれたく無いし何だか負けた気分になるのにケビンに気遣ってもらって心配してもらえるのが嬉しい。
感情に振り回されたくないから一人で考えてたのに!とサンドバッグの盾の奥から腕が伸びきてそれに捕まる。
「なんでそんなビビってんだよ」
「ビビってなんかない!放せよバカ痛いんだよ!」
勿論痛くなんか無い。寧ろ手加減されてる、そんな気遣い今までしてくれてたの?
心臓の音がどんどん大きくなる。顔だって情けなくないくらい真っ赤になってる筈だ。
これ以上近づくと絶対にバレてしまう・・・そう思って振りほどこうとするけどケビンはそれを制して寧ろ手を引かれて抱きしめられてしまう。
「っ!!///」
「?」
先ほどまで暴れていた万太郎が急に静かになる、急に暴れたり静かになったりといつも以上に慌ただしい万太郎にケビンは おい と声を掛けて覗き込むとそこには首まで真っ赤にして困り顔で半べそ状態の万太郎の顔があった。
「は・・・はなせよぉ・・・ばかぁ・・・///」
「!」
唯一出た言葉も声が震えてて迫力が無い
その様子を見たケビンはヒュッと喉を鳴らして自分のマスクを外して万太郎に目線を合わせる。
「な、なんでマスク・・・」
「悪いな・・・もう我慢しねぇことにした」
「?、何言って、っ、」
口と口が重なる、何が起きたか理解できずケビンの胸を叩くとぬるっと舌が差し込んできて舌が絡まる。
キスされてる!?と理解するもケビンは止める様子も無くそれどころかより一層キスを深めてきて下半身が甘く痺れる。
舌先をジュッと吸われたり上顎を撫でられたりするともう駄目だ、ガクガクと足下が震えて最後の抵抗に押し返そうとしてた手も力が抜けてぶらりと垂れ下がる。
頭の後ろと腰を固定されて逃げれない、息継ぎも禄に出来ず酸欠状態になりながら目尻に生理的な涙が浮かぶ。
漸く口が離れた時にはもうケビンに体重を預ける他なく肩で大きく呼吸をして脳に酸素を送る
「なんでぇ・・・きすぅ・・・///」
「お前が気づかねぇのが悪い」
「い、み、わかんな、い・・・///」
はあ、はあと酸素を吸い込んでいたらまたケビンの顔が近づいて唇を奪われる
もう完全に体はケビンの支えなしじゃ立っていられない。
抵抗しねぇなら止めてやらねぇ、と耳打ちされるも力が抜けてる上に好きな人にそんな事されて抵抗する方がおかしいと そんなの無理ゲーじゃん・・・と心の中で愚痴る、絶対にケビンには言ってやらないけど。
何度も何度も唇を奪われてその後ケビンは万太郎を横抱きにしてその場を後にする。
その日を堺にケビンは人前でも関係無く愛を囁き万太郎を口説いている姿があった、
万太郎は万太郎で うるさい!知らない!あっち行けバカ!!と顔を真っ赤にしてケビンから逃げていた。
「傍に居てほしいって言ったのはてめぇだろ」
「なっ!?///し、知らない!!そんなの覚えてない!!///」
「覚えてるじゃねぇか」
「知らないったら!///ケビンのバカ!///」
白状をすると万太郎がキン肉星から帰った後ビビンバがケビンに助けてくれてありがとうといったお礼の電話としていた際に昔話に花が咲きキン肉星で起こった事も話してしまったのである。
顔を真っ赤にしてまるで恋をしているみたいに・・・と
その後ミートから二世の様子がおかしいとの連絡がケビンの所に来てこの機会を逃すかよと今までの分も全部万太郎にぶつける事にしたのである。
お陰で万太郎はケビンからのアプローチにたじたじになりながら逃走劇を繰り広げていた。
その様子をミートに報告してほしいと頼んでいたビビンバはキン肉星で微笑みながらその報告を聞き二人の恋の行く末を楽しみにしていたのである。
「は、母親とは怖いのぉ・・・」
「あらあら、私は息子の恋を応援して背中を押しただけですよ。だってあの子帰ってくる度にケビンマスクの事ばかり話すんですもの、私もそろそろ新しい家族がほしいですし♡」
「ひ、ひぃぃ・・・」
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「好きだ万太郎、愛してる」
「ばっ///ばっかじゃないの!///そんな歯の浮くような台詞!///本当にお前ってばキザなんだから!!///」
「好きなくせによ」
「好きじゃ無い!!///バカケビン!バカ!えっと・・・あ、あんぽんたん!!///」
「思っても無ぇ事言うから語彙力下がってるじゃねぇか」
「思ってる!!///ばかばかばか!!///」
ケビンの腕の中で悪態をつく なら思いっきり殴れば良いのによ と思うがそうしないのはそういうことなんだろう?と自然に頬が緩む。
(まぁ、言うと本気で怒るだろうから言わねぇが・・・)
あまりにも可愛いから口を口で塞ぐと赤かった顔がより一層赤くなる。
(たまらねぇな・・・)
ぎゅっとケビンの服を掴んで自ら舌を差し出してるのも気づいてねぇんだろうなとこの初心で天邪鬼なプリンセスをどうやって落としてやろう?とケビンは心の中で意地悪く笑うのである。