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    torua_e

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    torua_e

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    砂花概念アルカヴェを書こうとして失敗していたので供養

    no title 「美しい」という言葉は、正に彼女の為にある言葉だ。
    髪も目も肌もその造形の全てが、この世の者とは一線を画している。一歩進めば、そこには水が溢れオアシスとなり赤紫のパティサラが咲き誇る。一つ声を発すれば、そこには歌が溢れ人々の心に愛を伝える。
    己もよくその見目と功績から、民衆からは「太陽」と讃えられるが、彼女を表現するのであれば冷たい砂漠の夜を優しく照らす「月」。けれど、普通の月とは違い、自ら光り輝くことの出来る特別な月だった。
     いつしか自分も彼女を愛し、そして彼女に愛されたいと思うようになってしまった。しかし彼女はなかなか素直に愛を受け入れてはくれなかった。口説き落とされてくれたのは、最後に一度だけ。それも、砂嵐と共に消えてしまった。
     烈日に飲み込まれる彼女に言われた一言が、どうしようもなく忘れられない。それは今でも頭の中で繰り返し繰り返し再生されていて、けれどどうにも自分にはその言葉の意味が解明できないのだ。己の身が滅び、輪廻を経験し、その先で二十以上の言語を学ぼうとも。どうしても、彼女の最後の言葉の意味がわからず、けれどその意図を汲み取ることを諦めることもできず、今日も手がかりを探す為に本のページを捲るのだ。

     アルハイゼンがその男と出会ったのは、教令院を卒業する間近のタイミングだった。本を借りる為にたまたま訪れていた知恵の殿堂で、何やら大賢者へ直々に自分たちの学園への予算増額を訴える為に騒いでいるところを、迷惑な学者がいたものだと場所を移動するついでに、ちらりと野次馬したのが初めての出会いだった。
    既に学園を卒業しているその者は、妙論派の栄誉卒業生であるカーヴェという男だった。名前こそ聞いたことはあれど、そもそも学派も通っている学院も異なるので、実際に本人を目にしたことは無かった。
    「カーヴェさん、落ち着いてください」という周りの声が無ければ、その人が「カーヴェ」だということすら把握できなかったであろう。
     しかしアルハイゼンにとって、その男がかの有名なカーヴェであることはどうでも良かった。

    それよりも、一目見てすぐその人が自分の中に永遠の課題を残し、烈日の中に消えていった愛しい人だということに気がついてしまった。
     どうしてわかったのか。何か目印があった訳ではない。その姿も声も性別も、前世の物とは全く異なっている。彼女は、慈悲深く美しく聡明であったが、目の前の彼は妙論派の予算を出せと分けのわからない論を並べ立てており、前世の聡明さとは程遠いように感じる。
    それでも、ただ己の中にある漠然とした確信だけが、彼を己の愛おしい人なのだと告げていた。

    「………チッ」

     思わず出た舌打ちは、やけに大きく、特徴的なピアスをつけた渦中の人の耳にまで届いてしまったようで、ゆっくりと赤い瞳がアルハイゼンの方を捉えた。
    そしてカーヴェの視線に釣られるよう、詰め寄られていた賢者もアルハイゼンの姿を捉える。

    「おお!良いところに。カーヴェ、予算についてだが、君の主張を通すには提出してもらった書類では不備がある。向こうの彼は、そう言った書類関係の作成が得意な男だ。君の希望する予算の許可が欲しければ、彼に書類作成を頼むと良い。そうでなければ、この予算を通すことは出来ないよ。それでは」

     そう言って賢者はさっさとその場を退散していった。残されたのはカーヴェと、その野次馬と、突然厄介ごとを押し付けられたアルハイゼンのみである。
    今度は舌打ちではなく、深いため息をつく番のようだ。アルハイゼンとて、面倒ごとには関わりたくないので、さっさとその場を退散すれば良かったのだが、それよりも行動力の早かったカーヴェに距離を詰められ、腕を掴まれてしまい、逃げ出すことが出来なかった。
    だって、そうだろう。アルハイゼンの腕を掴んだのは、ずっと自分が探し求めていた愛おしい人の手だったのだから。流石に即座に振り解くことなんて、出来やしないのだ。
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    torua_e

    DOODLE最初から最後までモブ男の独白です。
    よくある「お前の好きなやつ寝とったから!ざまあみろ!え?!どうしてもっていい人捕まえてんだよ!くっそー!」系の展開をアルカヴェで出来ないかと思って書いた文です

    ・設定
    教令院時代設定。アルハイゼンがモブ女に気があると思ったモブ男が、アルハイゼンからモブ女を奪おうとして、アルカヴェを見せつけられる。
    馬鹿にして笑えよ僕は教令院に通う男子学生のモブ太郎。顔と身長は中の上、成績は中の中、家柄は由緒正しき学術家庭だ。普通と思ったか?天才の集う教令院で成績の中間を収めることは、それだけで非常に大変なことなんだぞ!
    そんなことよりも大変なことが起こった。
    僕と同じクラスにいる学年のマドンナ的存在のモブ美に、最近お気に入りの男が出来たんだ。
    そいつの名前はアルハイゼン。僕と比べて、少し身長が高く、少し成績がよく、顔は……まぁ人それぞれ好みがあるだろう。しかし性格は僕の何倍も悪いやつだから、総合的には僕の方が優れている。
    アルハイゼンは基本的に昼休憩になると、ふらっと姿をくらませる奴なのだが、最近は何故か休憩時間になってもどこにも行かずに、ただ黙々と本を読んでいるんだ。そしてそんなアルハイゼンに優しく慈愛の心で声をかけたのがマドンナのモブ美だ。
    1997

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