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    skydovapic

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    skydovapic

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    NVを買ってすぐの頃に運び屋のキャラと先生との関係性を掘り下げる為に書いたやつ。焚き火の話

    「運び屋、ここで少し休憩しないか?」
    月が荒野をぼんやりと照らす下の、誰かが作ったキャンプファイヤーの残骸の側で、歩みを止めたアルケイドが振り返って声を掛ける。彼の数歩後ろ、大きな荷物を背負った青いvaultスーツ姿の運び屋は、瞳をぱちくりとさせながら「きゅーぅ、け…?」と首を傾げた。
    そっか、『休憩』はまだ分からないか、ハハ。とアルケイドは小さく呟きながらキャンプファイヤーに火種を放って座り込み、自分の横に座るよう手招きをする。その仕草の意味は分かったらしく、運び屋はコクコクうなずいて隣に座った。
    「そう、これが『休憩』だ。だいぶ歩いたからな、一休みしてからまた頑張ろう。」
    ね、と微笑めば運び屋はニッコリと笑って答える。それは理解した事を示す笑みではなく、相手が微笑んだから自分も真似をしたという反射的な笑みだろう。
    だが新しく知った言葉への興味は失われていないようで、運び屋はもごもごと「きゅー、う、け。きゅう、けー…」と休憩の5文字を繰り返し練習し始めた。
    脳天に撃ち込まれた2発の9mm弾によって白紙に戻った運び屋の知性。そこにグチャグチャの筆跡で文字を書き連ねていく。膨大で途方も無い作業、だが今確実に『きゅうけい』の5文字がそこに書き加えられたのだろう。良い兆しだ、患者の回復を喜ぶ医師の顔でアルケイドは頷いた。
    「よし、休憩を覚えたお祝いをしようか。」
    運び屋の背に負わせたままの荷物を地面に下ろさせ、ガサゴソと未開封のサンセットサルサパリラの瓶を2つ引っ張り出す。
    ナイフを用いたテコの原理で瓶のキャップを宙に飛ばすと、運び屋が優れた動体視力と反射神経ですぐさまキャッチする。2キャップ儲かったね、と瓶を手渡し「こういう時に何ていうか覚えてるかい?この前教えたよな?」と運び屋に問い掛ける。
    「…!かんぱい!」
    適切な言葉と仕草を思い出したのか、嬉しそうに自身の手の中の瓶とアルケイドの手の中の瓶を軽く叩いて鳴らす。
    コツン、という澄んだ音は焚き火の音にかき消されてしまった。
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