それはまるで天使が舞い降りたような───14年前
マーケット店員を担当することを考えたのも、はやくここ(セピア)から出ていくための金を集めやすいかと思ったからだ。
それに、最近できたムレの話や情勢も聞けていい。
なんて、いつも通り過ごしているうちにさんさんと降り注いでいた日差しは影を潜め、自分の業務時間も終了した。
いつもより早めの帰宅になりそうだから食材を帰ろうかと考えていたところ、ふと道の脇にあったモノに目が入る。
(孤児か…)
黄色くて、産まれたての子イカだ。そこまで衰弱してない様子からして、さっきここに置いていかれたのだろう。
ここではでは孤児なんてよくあることだ。自分だって無視する。こんな子供を拾うやつなんて生活に余裕のあるムレか、聖人か、狂人のどれかだ。
今この瞬間までそう思っていた。
「…?!」
この子は泣きもせず、こちらを微笑んでいた。……ように見えた。
それは、天使の微笑みのようだった。天使ってイマイチわからんけど。
そして、気づけば買い物も忘れてその子を家に連れ帰っていた。仲間には呆れられたが、育てることにはわりと協力的だった。
この子を守るためなら、自分はどうなったってもいい。夢だって。
「この子の名前どうするんだ?」
仲間から聞かれて、そういえばまだ名前を付けていないことに気がついた。
「そうだな…名前は……
また、自分がいたムレがシラツユに吸収されたのは遠くない話だ。