わらび餅がおいしい季節になりました 梅雨。湿気を帯びた空気は重く、人も刀剣も憂鬱な気持ちを抱えながら暗い空を見上げる日々。本丸では皆僅かな清涼感を求めては縁側に転がり、扇風機を奪い合い、水浴びでは飽き足らず修験者に着いて滝行へと出掛けるものもいた。
審神者ももちろん例外では無く、この日も唯一空調設備の整った私室──こんのすけに無理を言って取り付けさせたものだ──にて、近侍である御手杵とともに無為に過ごしていた。
「今日は御手杵にわらび餅を刺してもらいます」
「……なんて?」
「刺す事なら得意でしょ?万屋で安売りしてたの。こう蒸し暑い時はのどごしの良いわらび餅一択!」
「そうかぁ?まあ主が言うなら……」
「ひとつしか無いから皆には内緒ね。はい、竹楊枝!」
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