「タルタロスの瞳」
「ああ、ドラルク。お父様だよ! そっちは大丈夫──え? なんのことだって? 急に吸血鬼ご都合主義展開とやらが現れて、そこらかしこの人たちを若返らせてしまったんだが──その様子だと、お前には影響がなかったようだね。さすが我が息子! おかげでお父様の腰は絶好調だが、シンヨコハマは大混乱だよ。おれの新しいスマホをショップに取りに行ったノースも帰ってこないし──うん? あれ? もしもし? も、もしもし? ドラルク?」
天と地を結んだ距離よりも、なお遠く。冥府よりも深く、なお深く。海神が護る青銅の門を超え、九つの昼と、九つの夜を経てたどり着くそこは、永劫の深淵。逃れえぬ牢獄。
その色はきっと、鳩の血の色によく似ているのだ。
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