シュウデン・モウ・ナイツ 残業は、無能の証左である。
特別業務部において、この概念は残業権という形で表されている。与えられた仕事を、定時内に終わらせられないのは、無能だからだ。キャリアを接収されても、致し方ない。それが嫌なら、残業権を買ってでも仕事を終わらせろ。
(本当に、覚えなきゃいけないことが山ほどあるな)
夜道でひとり、御手洗は息を吐く。
特別審査部に異動して早4か月、あれよあれよという間に真経津の担当となって、ハーフライフのゲームを組んで、主任間の代理戦争の最前線で戦って、と目まぐるしい日々を送っているうちに、日常業務を学ぶ機会をすっかり逃してしまっていた。知らぬ業務に慣れぬ手続き、せっかく梅野らに懇切丁寧に教えてもらったのに、記載漏れというつまらないミスをやらかしてしまった。
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