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    村雨先生がかわいくて!かわいい顔をもっと見せてくれ!!

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    両想いっぽいけど伝わらないししさめ

    #獅子神敬一
    lionGodKeiichi
    #村雨礼二
    murayuReiIi
    #推し香水

    香水1.Bel Ami
     あなたにはいつも世話になっているから、何か贈りたいと思った。それだけで、他意はない。そんな怪訝そうな顔をせずに受け取ってほしい。
     あとに残らないものがいいと思ったのだが、食べ物ならあなたが作るものが一番美味なのだし、どのみちあなたは摂生していて食べないだろうから、やめておいた。
     人に何かを贈ったことなどあまりないものだから、よくわからなかったのだが。街を歩いていたら、あなたがたまに身に着けているブランドの店があったものだから、そこで。香水なら消耗品だし、気に入らなければ水に流せるだろうから。

     そんなに喜んでもらえるとは思わなかった。つけてみたい? ああ、試してみてくれ。
     なぜ服を脱ぐ? え? 地肌につけるものなのか。脇腹に? 私が?
     ……これくらいか?
     ああ、いい香りだな。私も店で試させてもらった。あのしおりのような紙で……ムエット? そう、それで。だが、あの時とは少し香り方が違うようだ。あなたは体温が高いからかな。思ったよりも甘いし、濃厚に感じる。
     服を着た方がいい。なんだか酔いそうだ。
     そう、服で隠して、少し薫るくらいでちょうどいい。誰も彼もを酔わせる必要はないだろう? 意中の人をつかまえたい時に脱いでみたらいいのではないか?
     なぜまた脱ごうとする?

     この香りを選んだ理由?
     そうだな、名前がいい。ベラミ……美しい友人、という意味だろう? あなたに贈るのにふさわしいと思ったんだ。
     知らなかったのか? 私は最初からあなたの美しさを認めている。切り開いてみなくても、あなたの内臓は艶々したピンク色だろう。骨格も歪みがなく、筋肉もよく発達している。どこもかしこも健康的で、とてもいい。医者の手が必要なさそうで安心する。あなたのような人はなかなかいない。
     なぜがっかりした顔をする。ほめているのに。
    え? 顔? さあ、それは人それぞれ好みがあるのだから、一概に美醜を語ることはできないな。
     私から見て? そうだな……それでは近すぎて見えない。こら、眼鏡を返せ、何も見えない。

     ……獅子神、このクッション、香水の香りが染みついているな。
     あなたのものではないだろう。こんな香りをつけていたことはないはずだ。
    そんなに赤くなるところを見ると、恋人のものか。
    ……そうか、交際相手の一人や二人くらい、いるに決まっているな。思い至らなくて申し訳なかった。私は最近、あなたのところへ来すぎていたな。邪魔だったろう、言ってくれればよかったのに。
     恋人なんかいない? クッションに香水をかけただけ?
     別に隠さなくていい。あなたのような人が放っておかれるわけがない。私の勤め先でも、あなたの噂で持ち切りだ。紹介してくれとせがまれて困っているのだが、もう決まった人がいるようだと伝えておこう。
     ……いい香りだな。甘く愛らしい香りだ。どんな人なのだろう、こんな香りをまとうのは。
     私の兄嫁は、いつも優しい花の香りをまとっているんだ。心根も優しい人だ。私にもよく話しかけてくれる。明るくて、誰にでも分け隔てなく親切で……。ああいう人が私は好きだな。
     うらやましいとか、嫉妬とか、そういう感情ではない。私は、私の好きな人が幸せに暮らしているのを、遠くから見ているのが好きなんだ。そこに私はいなくていい。私には似合わないから。わかっている、それくらい。

     どうした、苦しそうな顔をして。ササミがのどに詰まっているのか?
     違う? 話したいことがある?
     ……まさか、冷蔵庫のタルトを勝手に食べてしまった件か? 違う? ではマカロン……チョコレート……マンゴーは食べていないぞ、剥いていなかったからな。
     私の手を摑まえてどうしようというのだ。指紋なんか取らなくても、盗み食いについては今すべて白状したが。
     あ、携帯が鳴っている。

     獅子神、病院から呼び出しだ。行ってくる。
     話はまた今度聞こう。ああ、でも、ここへはもう来ないようにする。恋人とうまくやってくれ。

    (涙が止まらないのだが、これはどうしたわけだろう)
    2.BLANCHE
    「おまえを思って選んだ香水をお気に入りのクッションに吹きかけて、抱きしめて香りを胸いっぱい吸い込んでは、いつかおまえ自身にそうする日を想像してにやにやしてる」
     なんて言われたら、どう思う? ドン引きだろう。だから言えるわけがない。
     せっかく村雨が、香水なんて洒落たものをオレにプレゼントしてくれたっていうのに、「オレもおまえに選んだ香水があるんだよ。もらってくれねえ?」と言えるチャンスだったのに。
     開封済みで中身は半分になってるし、うちのクッションからその香りがしてるなんて、気持ち悪くて受け取ってもらえないだろう。
     どう考えても、脈がねえもんなあ。
     香水なんかくれるから、ちょっとはその気があるのかなと思ったけどさ。
    半裸で迫って頬を寄せて、じっと瞳を見つめる。普通、脈があるなら目を閉じて唇を差し出してくれるだろう。ところがどっこい、あの据わった眼で咎めるように見つめ返されるだけだった。全っっ然つけ入る隙がねえ。
    結局なんなんだあいつは、オレのメシが目当てなだけか?
    そうは思いたくない。頼んでもないのにオレのこと鍛えてくれるし、オレのこと特別に目をかけて、特別な感情を持っててくれてるって思いたい。
    オレはなんであんな奴を好きになっちまったんだろう。
    最初は、あいつを毒のある危険生物みたいに思ってた。でも格上のあいつから学べることは学んでやろうと、「会わないか」って誘ってみたんだ。そしたら結構ノリがよくてさ、一緒にメシ食いに行くことになった。
    あいつ、メシの食い方がきれいなんだよな。背筋がピンと伸びててさ、ナイフとフォークを優雅に操る姿は品がよくて、育ちの良さがうかがえる。でも気取ってるわけじゃなくて、なんか、自然とにじみ出てるっていうか。
    オレは育ちが悪いから、そういうのに憧れてしまう。それでじーっと見てたらさ、あいつ、デザート食う時にすげえうれしそうな顔したんだ。いい大人が、悪魔的に頭の切れる男が、甘ったるいデザートの皿を前に、頬をゆるませて。そしたら意外とかわいいんだ。
    その顔を見た時、ああ、こいつにもっといろんなものを食べさせたい、もっと一緒にメシを食いたい、できればオレのつくったもので一番いい顔させてみせたいって思っちまったんだ。
    それで、何を食べさせたら喜ぶかなあとか、どこに誘おう、何を着ていこう、こんなのあいつは好きかなあとか、気づいたらずっとあいつのことばかり考えるようになっていた。
    一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、愛着が湧く。人間ってのはそういう風にできている。だから、オレの気持ちもただの愛着、親しみの域を出ない……そう思ってたけど、違った。
    オレの家でメシを食った時、食後の片付けで手がふさがってたオレは、あいつにデザートの桃を切ってくれって頼んだんだ。一玉五千円もするでかい桃だ。そしたらすぐに、「あっ」って小さな声が聞こえた。
     見ると、あいつの手のひらから真っ赤な血がだらだら出てるじゃねえか。
    「村雨っ」
     オレはとっさに、その手を取って傷口を吸ってた。
    「何やってんだよ、おまえ、外科医なんだから手先器用じゃねえのかよ。なんで桃くらい剥けねえんだ?」
    「人体とは構造が違うからな」
     薄く冷たい手のひらからにじみ出る血が止まらない。
    すげえ胸が痛くなった。なんでオレは、こいつにこんなことさせちまったんだろう。
    「もう……おまえはもう二度と桃なんか剥くな!」
     村雨はしょぼんとした顔で、傍らの桃を見た。不格好にえぐられた果肉が、村雨の血で赤く染まっている。
    「怒っているのか? 私が桃をダメにしてしまったから……」
    「ちげえよボケ‼ おまえが食う桃は、一生全部オレが剥いてやるって言ってんだ! 桃でも林檎でもパイナップルでも、オレが剥くからおまえは口開けて待ってりゃいいんだよっ‼」
     オレはむんずと桃をつかむと、正中線に切れ目を入れた。種を中心にひねると、すぽりと果肉と種が分かれる。よく熟れてるから皮はぺろりとはがれ、果肉を串切りにするまで5秒とかからない。
     村雨は手品を見る子どもみたいな顔で、それを見ていた。
     果肉の血に染まった部分はオレの口に入れる。かぐわしい芳香が鼻に抜け、鉄錆の匂いが混じってるけど、とても甘い。
    「うまっ! ほら、食ってみな」
     一切れつまんで差し出すと、村雨は黙って口を開けた。
     滴る果汁を零さないように気をつけながら口に入れてやると、たまらない感じに口角が上がる。
    「ふふ。これは上物だな」
    「だろ。奮発したんだぜ」
     また口を開けてるから、どんどん食べさせてやる。最後の一切れを口に入れると、指に吸いつかれた。
     ぬるりと、冷えた舌が指に絡む。ちゅぷ、と音を立てて唇が離れた。
     これはもう、まぐわう流れだよな!!!!
    「では行くか」
     すたすたと歩きだした村雨に、オレは首の縄を引っ張られるようにふらふらついていく。行くってベッド? それともシャワー? オレは全然キッチンでもかまいませんけど? 早くやろうぜ!
     村雨が開けたのは玄関のドアだった。
    「え?」
     ぽかんとするオレに、村雨が小首をかしげて振り返る。
    「送ってくれるとさっき言っていただろう。今日は当直だ、もう出なくては間に合わない」
     そういえばそんな話をしていたな。
    あれ? まぐわひは? おまえはその気もないのにあんなことしたのか? 馬鹿にされてんのかオレ?
     わけがわからないままに村雨を送り、無意識のうちに買って帰ったパルファムを、思いっきりクッションにぶっかけた。
     正直に言おう。その香りに興奮してオナニーしまくったねオレは。
     村雨の肌を想像し、あの優雅な指がオレの肉を這う感触を想像し、あの唇が美味そうにオレのをしゃぶるところを想像して、何回もいった。
     人工的なクセがあって、前に試した時は全然いいと思えなかった香り。でも今、オレの中の村雨のイメージにはこの香りが近い。
     糊のきいた清潔な白衣をめくると、透き通るような肌。冷たい雪みたいな白さだけど、触れていくうちに色づいていく。薔薇、菫、芍薬の色が淡く透ける。時間をかけて、舐めて、ほぐして、雪が解けると、声をあげて甘えてくるんだ。甘く優しい香りに変わるラストノート。上品だけど、その奥に、秘めた色気を感じる香り。
     BLANCHE――「白」なんて私にふさわしくない、とあいつは言うかもしれない。
     がんばってけばけばしい警告色のオーラ出して、人を寄せつけないようにしてるから。でも、本来のあいつは、透明に近い白だと思うんだ。オレの前では、時々それが見える。
     できれば他の奴には見せないでほしい。ワガママ言ったりおねだりしたり、無邪気な本音はオレだけに見せてほしい。
     そしたらオレは、全力でおまえを甘やかして、おまえの無垢なところが傷つかないように、世界中のすべてのものからおまえを守るよ。
     まあ、今のところ、オレの方が守ってもらってるんだけど。
    早く強くなりたいよ。
     そしたらもっと甘えてくれよな。
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