Steal!「おい流川、お前週末暇か飯付き合えよ」
嵐のように飛び込んで来た先輩に、流川は小さく眉根を寄せた。
「…ワンオン」
「おう、やってやるから飯付き合え」
乱暴な口振りに黙って頷くと、先輩は「よし」と睨み付けるような目で流川に拳を突き出した。拳を合わせ、流川は胸に溜まる複雑な気持ちを飲み込んだ。
こういう時の先輩のプレイは、責め気満々で楽しい。それは良い。問題は、飯の方だ。何と言われなくても、流川には十二分に何の話をされるか見当が付いていた。
「ぜってえ負けねえ」
「おう、かかって来いや」
勇ましくボールを掴んでコートに入る先輩の背中を、流川はとびきり恨めしげに睨み付けた。
週末。流川が連れて来られたのは、男子高校生が部活後に連れ立って入るにはあまりにも軟弱なパスタ屋だった。
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