inseparable「岡田」
くい、と服の裾が軽く引っ張られ、歩きだそうとした足は足踏みをしただけで終わる。引っ張られた方向を見れば、ハヤテが不満そうな顔で俺を見ていた。
「どこに行くんだよ」
「いや……見回り?」
眠れなくて、眠ろうとしても嫌な夢を見てしまいそうで。少しでも歩けば変わる、と思い休憩所を出たところだった。
「オレも連れてけ、お前だけじゃ頼りにならない」
「ははは……じゃあお願いしちゃおうかな」
「……ふん」
夜が明けない遊園地で、二人で歩く。ハヤテがずっと裾を掴んだまま離さない。少しも信頼されてないのが悲しくて、小さい彼に聞く。
「そんなに頼りない?」
「頼りない、だから……」
帽子で隠れた彼の顔は、少しも見えない。掴まれたままの裾が強く引かれた気がした。
「オレから離れんな」
「岡田」
ぐ、と腕が何かに引っ張られベッドへ逆戻りする。
「どこ行くんだ……」
「いや、朝ごはんの準備しようかと」
「もう少し、寝てろ」
俺をそのままぎゅうと抱きしめ、すやすやと眠り始めた。目の前にあるハヤテの顔は、子供の頃とは違い眉間にシワは寄ってない。
「……あの時と同じだなぁ」
離れようとしない体に、いつかのゆぅろぴあのことを思い出す。あの時信頼されていないと思っていたのに、今じゃこんなに懐かれて――身体も許してしまった。あの日の俺に、教え子に抱かれてますって言っても信じてくれないだろう。
「……ありがとうな、ハヤテ」
ずっと頼りない俺から、離れないでいてくれてありがとう。そっと頬にキスをしたら、少しだけ笑ったよつな気がした。
inseparable