ラブイズブラインド 夜は部屋の鍵をかけないと決めている。高専の寮には夏油を含め大した人数が住んでいるわけでもなく、特段人の出入りに気をつける心配がないからだ。結界によって敵襲はほとんどなく、あったとしても警告音によって叩き起こされるが、その前に気づいて目が覚める。比較的安全な場所であり、ぐっすりと眠れる場所でもあった。
静かにドアが開く音がした。古い部屋は建て付けが悪く、どうしても開閉時にぎぃ、と重い音が響く。その音がする前から人の気配に気づいた夏油は目を覚ましていたが、ひたひたと迫る足跡を耳にしながらじっと毛布に包まっていた。
ベッドの前へと立ったその気配は、やがて布団を捲ってその中へと体を滑り込ませてくる。外の冷気を纏った体が背中にぴたりと寄り添い、その冷たさにぶるりと身震いした。
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