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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy
    戦衣都
    夏ボイスの破壊力たるや。シチュエーションを捏造しました。

    ※思いきり台詞バレ

    「ったく、言わんこっちゃねえな」

    #戦衣都
    #brmy男女CP

    笑えねえから、もうやるな(そよいと) 七月二十三日・快晴。予想最高気温・三十六度。
     うだるような暑さが約束された日の午前六時。じわじわと上がる湿度と不快指数。
     そして、貴重なオフの日。

     本来ならばこんな日に、無闇やたらと屋外へ出ることですらどうかしているのだ。

    (けれど、気になるものは気になる……)
     長袖とジーンズ。サンバイザー。首にはアイスネックを装着して、もちろん日焼け止めも忘れずに塗っている。完全防備の姿での草むしりは強制されているわけではないけれど、やはり必要なことだと思った。
     仕事にも慣れ、任される業務の増加に伴って慌ただしい日々が続く中で、唐突に気がついたのだ。寮のベランダは荒れているとまではいえないけれど、このままだと草が伸び放題で大変なことになってしまう。相場よりも遥かにお手頃な家賃で住まわせて頂いている以上、最低限の手入れはしておきたい。
     それに、草むしりそのものは嫌いではない。地味ながらも黙々と作業をしていれば、意外と時間は過ぎていくものだ。
    (そろそろ休憩……いや。ここの区画までは終わらせておきたい)
     早朝といえど、日差しはだんだんと強くなっていく頃合いだ。少しずつ顔に熱が集まっているような気がしたけれど、中途半端で放置したくない性分と自分の性質を理解している。
     あと少しの間ならば、気づかないふりができるだろう。

     自分を納得させて、再び手を動かそうとした時だった。

    「おい」
     心持ち鈍くなった動作で前方を見やると、早朝ランニング帰りの大きな影に気がついた。
    (ああ……新開さんか)
     いつもならすっと出てくる挨拶をうまく返せず、ぼうっと新開さんの姿を見つめる。今朝も相変わらず元気そうだ。このあと飲むプロテインは何味だろうか。
     至極とりとめのない事柄をつらつらと考えている中で、新開さんはこちらを一瞥するや否や、迷いのない足取りで近づいてくる。
     そして新開さんは距離を詰めて、顔を覗き込んで言う。
    「弥代。へばんなら冷房つけた室内にしとけ」
     その表情の険しさに、一拍遅れて自らの置かれた状態に気がついた。
    「……いえ、へばってなど」
    「あ?」
     口をついた否定と、即座に返される抗議の意を込めた視線。もしかしなくても、いろいろと読まれている。
     これまでのいきさつや屋外に出ている理由に加えて、横柄して休憩を先延ばしにしようとしていることまで。何もかも、悟られた気配を感じる。
    「そのままでいんなら、問答無用で持ち上げんぞ」
    「そ、そんな。お手を煩わせるようなことは」
     ……いや。やりかねない。新開さんならきっと、やりかねないだろう。
     慌てて立ち上がろうとするけれど刹那、くらりと意識を持っていかれそうになってフリーズする。
     と同時に大きな手が伸びて。
    「ったく、言わんこっちゃねえな」
     前方へ傾くのを阻止するように、両肩を掴まれている。
    「寄っかかっていいから。取り敢えず縁側に座っとけ」
     立てるか? と、続けて頭の上に降ってきた声が思ったよりも近距離で、色々な意味で顔を上げるのがこわい。

     いっそのこと意識を手放して、新開さんに持ち上げられた方がよかった。
     けれど今は間の悪いことに、都合よく何もかも忘れさせてはくれない。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都

    味のある大根について
    辛さが喉元通り過ぎれば(そよいと) 七……八…………。
     バーベルを持ち上げる腕が、回数を追うごとに重たくなってくる。
    (オーソドックスなのは煮物かおでんだろうか)
     九…………。
     視界の端にトレーナー、もとい新開さんの姿を認める。余計なことを考えてしまうのは、目の前にのしかかる負荷からの逃避なのだろうか。
    (けれど、この時期ならもっと、さっぱりしたものが食べたい。となると)
     …………十。
    (さっぱり…………大根サラダ?)


    「よし、休憩」
    「ふう……」
     取り敢えずの結論が出たと同時にカウントが終わり、十キロのバーベルを所定の位置に戻す。仰向けの体勢のまま私は、天井の壁の無機質な模様の一点をぼんやりとみつめていた。
     当初は五キロほどで息も絶え絶えだった私が、今は倍の重量をそれらしく動かせる程度には進歩している。とはいえまだまだ初心者の域を出ない重量に違いはないし、まだまだトレーナーもとい新開さんのサポートは必須だけれど。いつものジム内、ほぼ貸し切り状態で行われるトレーニングは定期的に続けている甲斐あって、微々たる成長とともに「ある」寄りの体力に近づきつつある。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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    michiru_wr110

    PASTanzr 初出2023.7.
    夏メイ
    イメソンは東京j...の初期曲。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》
    青く冷える七夕の暮れに(夏メイ) 新宿は豪雨。あなた何処へやら――イントロなしで歌いはじめる声が脳裏に蘇ってくる。いつの日かカラオケで夏井さんが歌った、昔のヒット曲のひとつだ。元々は女性ボーカルで、かなり癖のある声色が特徴らしい原曲。操作パネルであらかじめキーを変えて、あたかも自分のために書き下ろしされたかのように歌い上げてしまう夏井さんの声は、魔法のように渇きはじめた心に沁み渡っていく。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》

     情緒あふれる解説が無機質なラジオの音に乗せて、飾り気のない部屋に響く。私は自室の窓から外を見やった。俄かに薄暗く、厚みのある雲が折り重なっていく空模様。日中には抜けるような青空の下、新宿御苑の片隅で夏の日差しを感じたばかりだというのに。この時期の天候はどうにも移り気で変わり身がはやい。
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