【サンプル】騒がしき揺籃歌(戦衣都+強行部)【依頼内容:藤ヶ谷つかさ 極秘警護】
Aporia店内は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。照明は落とされ、カウンターの奥に置かれた間接灯が、琥珀色の柔らかな光で空間を包み込む。
節見と弥代は、事前にアポイントのあった男性と向き合っている。約束の時間ちょうどにAporiaのドアを叩いた依頼人は朝倉と名乗り、落ち着いた物腰のまま勧められた席に腰掛けていた。
「……つかさ嬢の件は、社長にも内密でお願いしたいのです」
三人だけが集ったこの場が、たった一言により急速に張り詰める。その名前は記憶に新しい。こちらの心情を悟らせまいと、節見が軽く頷き、弥代もまたそっと姿勢を正す。
年の頃は四十代半ば。朝倉の人当たり良さそうな印象の隙間からは意志の強さが見え隠れしており、言葉にも揺らぎがない。
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