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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy
    戦衣都
    かりそめの恋人を演じる衣都と、彼女の手に目を奪われる新開さん

    その細く、あえかな手でこれまで何に触れて来たのだろう。

    #戦衣都
    #brmy男女CP

    掌中のまぼろし(そよいと)「手、ちっさ」
     心の声がそのまま漏れ出た感想に弥代は屈託なく笑う。繁華街の喧騒が漏れ聞こえる路地裏で、俺の独り言を正確に拾ったらしい。
    「戦さんの手が大きいだけですよ」
     そして、つないだ手の指先を身じろぐように動かし、さぞ当たり前かのように絡め合う。触れ合う手のひらは柔らかで、しかしトレーニングの影響か、まめも出来ている。健気にみずからの仕事を全うする、働く女性特有の手。
     その指先……親指が、手の甲を勿体ぶるように撫でる仕草。フラットな態度からほんの僅か滲み出る、甘い空気感。
     一瞬真っ白に、呑まれそうになった自身に活を入れつつ、弥代を見つめる。弥代と……弥代の背後で蠢く、気配の変化に意識を向けながら。

     まさか、俺が。何かの冗談だろう。何だったら任務中の今だってどこかで疑っている節がある。
     何しろ俺が――よりによって、演技力において誇れる技術など何ひとつ持ち合わせていない俺が――交際部の真似事のようなことをしているのだから。

     いわゆる囮捜査で(難色を示した静さんをいつも通り説き伏せてしまった)、ターゲットは俺に私怨を持つ人物。俺に恋人がいると誤解させた後、おびき寄せて返り討ちにする流れだ。
     交際部の店内代行で慣れている弥代はいつも通りに接しつつ、随所で恋人同士特有の親密さを表に出す。俺に指定されたのは、弥代を下の名前で呼ぶことだけ。後はいつも通りだというのに、まさかここまで、纏う空気を変えられるとは思いもしなかった。

     弥代の仕事ぶりには終始驚きの連続だったが、そろそろこの手を離さなければならない。
     弥代を敢えて一人にさせて、相手を動かすことが今回最大の目的なのだから。

    「すぐ戻るから、少し待ってろ」
    「……はい」
     合図を察知した弥代は繋いだ手を緩める。絡まった温もりが外れて、俺は離れた弥代の指先を一瞬、見つめた。

     ――本当に小さな手だ。

     その細く、あえかな手でこれまで何に触れて来たのだろう。自分を犠牲にして、関わる人たちを導き、時にはその手を擦ってでも守り抜き……そして、何を手放してきたのだろう、と。

     刹那、気がつくと再び弥代の手を掴んでいた。

    「……そよぐ、さん」
     理屈ではどうにも、説明できない衝動。
    「待ってろよ。ぜったいに」
     勢いのままに、今だからこそ伝えなければいけない言葉を届ける。

     どうせいつか、何もかもを手放すつもりなら。
     せめてここにいるうちは目の届くところにいろよ。
     必ず守るから、勝手に消えてくれるな。俺や他の奴らが差し出す善意に、甘えろよと。

     一回り小さな温もりを掌中に閉じ込めながら願い、言い聞かせる。
     仮初といえ、恋人同士なら主張する権利くらいは、ある。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都

    味のある大根について
    辛さが喉元通り過ぎれば(そよいと) 七……八…………。
     バーベルを持ち上げる腕が、回数を追うごとに重たくなってくる。
    (オーソドックスなのは煮物かおでんだろうか)
     九…………。
     視界の端にトレーナー、もとい新開さんの姿を認める。余計なことを考えてしまうのは、目の前にのしかかる負荷からの逃避なのだろうか。
    (けれど、この時期ならもっと、さっぱりしたものが食べたい。となると)
     …………十。
    (さっぱり…………大根サラダ?)


    「よし、休憩」
    「ふう……」
     取り敢えずの結論が出たと同時にカウントが終わり、十キロのバーベルを所定の位置に戻す。仰向けの体勢のまま私は、天井の壁の無機質な模様の一点をぼんやりとみつめていた。
     当初は五キロほどで息も絶え絶えだった私が、今は倍の重量をそれらしく動かせる程度には進歩している。とはいえまだまだ初心者の域を出ない重量に違いはないし、まだまだトレーナーもとい新開さんのサポートは必須だけれど。いつものジム内、ほぼ貸し切り状態で行われるトレーニングは定期的に続けている甲斐あって、微々たる成長とともに「ある」寄りの体力に近づきつつある。
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