Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    michiru_wr110

    @michiru_wr110

    男女CP中心 brmy/anzr/stmy/mhyk etc...

    ☆quiet follow Yell with Emoji ⚔ 🌙 🍳 👏
    POIPOI 50

    michiru_wr110

    ☆quiet follow

    brmy
    由衣都
    衣都の背中に魅せられた城瀬さんについて

    やましさを持つ人間が、こうも容易く背後を取られるような行動をするものだろうか。

    #由衣都
    #brmy男女CP

    触れたい背中・城瀬さんと背中(ゆづいと) 仕込みを終えてから片づけを済ませ、残りの発注業務まで終わらせようと事務所へ続くドアを開けた平日の夜。
    「弥代……さん」
     ラップトップを開いたままの弥代さんの後ろ姿。いつもなら振り返り、お疲れさまですと声をかける彼女の背中が、少し丸くなっていた。
     息を潜めて近づいてみる。文書ファイルを開いたままの画面。頬杖をつき、うつらうつらと舟を漕いでいる。
    (次の企画、そういえば苦戦してるって言ってたからな)
     本来ならば無理にでも起こして、寮まで送り届けるのが筋というものだろう。けれど、逢さんへの提出締め切りは確か明後日。現時点でそれを実行してしまったら最後、明日の弥代さんは問答無用で事務所に立てこもり、徹夜にだってなりかねない。
    (今のうちに仮眠を取ってもらって、俺がいるうちに起こそう)
     ベストとは言い難いけれど、今の状況での最適解はきっと、それしかない。どのみち麗が来るまでには、まだまだ猶予がある時分だ。

     結論を出してすぐに、自席から時折使う薄手のブランケットを取り出す。それから再び弥代さんに近づいて、肩にブランケットを掛けようとした……けれど。

    (なんて、無防備なんだろう)

     思わず手を止めて。不躾と自覚しながらも、弥代さんの後姿を凝視する。
     静かな呼吸音。上下する肩。短いパーマボブからうなじが晒されて、丸まった首元から背中にかけて僅かに背骨が浮き上がる。
     こうしてみると、ごく普通の女性ではないか。
     当初逢さんが、弥代さんを警戒するそぶりを見せていたことを思い出す。その後認識は改めたようだけれど、それにしたって。
     仮に彼女が悪意を持っていたとして、やましさを持つ人間が、こうも容易く背後を取られるような行動を取るものだろうか。懸命に目の前の仕事に打ち込みながらも視野を広げ、ごく自然に先回りした行動を取る弥代さんは、今ではアポリアに欠かせない、大切な仲間の一人だ。

     仲間である彼女が密やかに見せる、無防備な背中。背後に立てばきっと、すっぽりと隠れてしまう彼女の姿。

    「……駄目ですよ」

     口をついた言葉に、やがてひどく狼狽える。
     ああ。これこそがきっと、俺の本心なのだ。
     心の奥底で弥代さんに語りかける。そんな風に、容易く眠る姿をさらけ出してはいけない。見てしまったら最後、心ごと奪われてしまうから。今の俺のように。

     気がついた本心を覆い隠すように、改めてブランケットを掛ける。
     ほっそりとしたうなじも、丸まった背中に浮きあがる背骨も。何もかも見えなくなった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
    3347

    related works

    recommended works

    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
    2668