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    me06hitorigoto

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    me06hitorigoto

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    三馬鹿不思議体験第二話。🌸の口調がいまいち掴みきれてないし、リョを苦労人にしてしまった。ごめん。
    ミの挙動がおかしくなってまいりました。こっからブーストあげていきます(ニコッ…)

    状況を整理してみる。先ず悪いニュース、登ってきた山道が跡形もなくなっていた。入り口であろう場所は周辺と同様木々が生い茂り、足を踏み入れるのには躊躇するほどの傾斜へと変貌を遂げている。
    また、宮城が見たという人型の異形を桜木も三井も目にすることとなった。遠目から見ても分かるおぞましさ。あの瞬間咄嗟に二人を引き留め息を潜める判断をした宮城は英断だったと思う。桜木は人の形をとりながら爛れた皮膚、焦げた肉体、所々抉れて見える骨、これらを認識した時、喉から込み上げるものをぐっと堪えるのに必死だった。悪い夢を見ている心地だった。こんなものがこの村には徘徊しているのだ。
    "あれ"は何かを探しているようにも見えた。何か、それはきっとこの場に足を踏み入れた自分たちだろう。捕まってはならない。根拠とか理由とか、そんなものを差し置いて、本能的に警告音が鳴り響いている。
    我々は追われる側の立場に立っている。これも、悪いニュース。
    流石に危機感を覚え、外部と連絡を取ろうともした。男子高校生数人で対処できる問題ではない。しかし案の定と言うか、やはりこんな山奥では電波は入らないらしい。孤立無援。悪いニュース三つ目。

    「悪いニュースしかなくね?」
    「世の中、物はいいようだぞ。ポジティブに行こう、ポジティブ」
    「逆立ちしたって俺らが危機的状況にいることは変わらねーんだよ。あの怪物と仲良しこよしできるとでも?」
    取り敢えず目撃した怪物とは反対方向の家屋に逃げ込み、作戦会議を行う。が、首が締まるような現実が突きつけられるだけで、打開策が全く見つからない。
    アレが、シャクシャク様なのかなぁと宮城がぼやいた。
    「ええ、シャクシャク様って村の人にとって有り難ぁい神サマなんだろう?あんな気色の悪い姿拝まないぞフツー」
    「いやぁあの本見る感じ一歩間違えれば祟り神だろ。そもそも日本においてその土地に根付いた神って癇癪持ちみたいなとこあるみたいだぜ。気に入らねえとすぐ祟ってくる」
    「ヤダぁ地雷系かよ…関わりたくねぇ……」
    「だからこそ御機嫌取りで、捧げ物してたんだろ」
    捧げ物ねぇ、食いもんとかお酒とかよくお供えしてあるもんな。桜木がラーメンくいたいなとぼやいた。ご飯の話をするとすぐお腹が空くお年頃である。
    この村の、捧げ物。奉納の儀式。厳重に囲って用意。決して逃してはならぬ。七つにて神にお返しする…。
    「捧げ物、七つまでは、神の子……」
    三井が呟いた。宮城はギョッとし、マジで…?と更に顔色を悪くする。
    この村の陰湿な空気は感じとっていた。閉鎖的共同体は良くも悪くもその土地特有の因習が存在する。外の世界の常識なんぞ全く通用しない。彼らの暮らしには、彼らの絶対的ルールが存在する。灼子村も、そうやって"教え"を守り生きてきたのだろう。
    だからって、それにしたって、限度ってものがある。家屋が残ってることを鑑みると、精々十年二十年前までは人々はここで暮らしていた。現代日本において、それは、あんまりではないか。ありえない。
    それでも、捧げ物って、もしかして。

    材料が少なすぎる、と三井は立ち上がった。明らかにおかしいこの村において、脱出の糸口が見つからないのは死活問題だ。恐らく、一歩でも間違えると、その先には正真正銘死が待ち構えている。ここはきっと、多くの命が犠牲になっている。
    まだ目を通していない書物があったはず。まだ何かしらのヒントはあるはず。
    「幸い、あの化け物は俺らにまだ気付いてない。入ってこれたんだ、出るための穴はどっかしらに絶対あんだろ。怖がってる暇はねーぞ、ほら立った立った」
    普段と変わらない調子で声をかけてくる三井に、桜木の表情が和らいだ。こんなんでも最長学年である。落ち着いている人材が側にいるというのは、想像以上に心強い。悔しいことに、こんなんでも。

    切り替えて、先ほどの家屋に向かうこととする。あの異形の動きはかなりゆっくりだった。かなり損傷した肉体ではそう素早いことはなさそうだと算段をつける。まだ周辺は安全だろう。三井を先頭に、そっと入り口から顔を出す。行けそうだ、と二人に声をかけ、外に一歩踏み出した。

    途端、ぐっと三井の身体の軸がぶれる。
    一体なんだ?三人して足元を見遣った。
    その視線の先には。
    下半身の肉が抉れ、ほとんど骨だけの状態の化け物が、這いつくばった体勢のまま黒焦げの腕で三井の足首をがっしり掴んでいた。

    ぐずぐずに溶けた顔面は、男か女かすら判別できない。眼球が異様に飛び出ており、鼻は削げ落ち、口を覆う肉がないためスカスカの燻んだ歯が剥き出しになっている。人の顔としての形状を留めていない。
    しかし、確かにその瞬間、化け物は笑った気がした。

    声なき悲鳴が宮城の口からあがり、咄嗟にその腕を強く踏みつける。途端、三井の足は解放され、それを見届けた瞬間三人はダッシュした。それはもう全力で、現役運動部の本気を発揮する。

    「なァ〜〜〜にがまだ俺らに気付いてないだよフラグ回収早すぎんだろッッ」
    「もう少し周囲への警戒・配慮ってもんを持たなきゃダメじゃねーーーーかミッチー!!!!」
    「るせぇ今のは不可抗力だろ!俺悪くない!俺悪くない!!!」
    大騒ぎである。騒いでいないとやってられない。流石に今のは怖すぎた。リアルで体験してみようドッキリホラー⭐︎なんて望んでいないんだこっちは。後ろなんて振り向いてる余裕がないまま駆け続け、辛うじて扉が残っている建物に逃げ込む。剥がれかけている床材を引っ剥がし、斜めに引っ掛けて戸が開かないように固定した。チームワークが光るスピード感だった。
    部活中もここまで出したことのない速度で走ってきた男たちは流石に息を切らして床に転がる。走ったことによるものだけではない動悸がなかなか止まらない。誰よりも呼吸を乱した三井がゼーハーゼーハ死にそうにながら、搾り出すように言葉を発した。
    「アイツ一体じゃねーのかよ……」
    宮城と桜木もつられてうおおお、と唸った。


    シャクシャク様は一つではない可能性が浮上した。一体、二体とみかけたのだから、もしかしたら百体いるかも、と思った方がよいのかもしれない。かの虫と同様に。最悪である。
    「ぶっちゃけあの化け物に関してはどうにかなると思ってた。ぬるゲーが一気にクソゲーと化したな」
    「迂闊に外歩けなくなっちまったじゃないか」
    一先ず警戒心が米粒程しかない三井が先陣切っての探索は禁止となった。当人は納得がいかず愚痴愚痴文句を垂れていたが、多数決で決定した。マ、実例を早々に作ってしまっているので当然である。
    しかしここに閉じこもっていても話は進展しない。せめてもう一人いれば二人組に分かれ行動し探索効率が上がるのだが、嘆いたって仕様がない。現状で如何にかしていく他ないのだ。
    結論、外回り担当として白羽の矢が立ったのは宮城だった。三井は言わずもがな、桜木も割と一人じゃ何をしでかすか分からない。この二人をバラバラにさせる訳にはいかなかった。
    正直なところ、あの生き物に遭遇するリスクが高い分、避けたい役割である。しかしこの面子において比較的一人でもなんとか上手いこと立ち回れそうなのは自分しかないと理解せざるを得なかった。つくづく損な性分である。または周りが使えないとも言うが。

    行きたくねー、行きたくねー、と鳴き声を発しながら宮城は旅立った。居残り組は、アイツなら大丈夫だろと無責任に送り出す。本当に、誰のせいで彼が震えながら一人行動をしなければいけないのか考えてほしい。だが彼らがそのことを認識し反省するのは、今の状況と同じくらい厳しい話である。切ない。
    俺らはとりあえずここを調べるかー、と何ともゆるゆるな雰囲気で二人は動き出した。この村の建物としては珍しく、屋根裏部屋らしきものもあるようだ。
    全体の構造としてそこまで大きな造りではなく、小さな土間と、一段上がって囲炉裏がぽつんとある板張りの間が十二畳ほどの規模で広がっているのみであった。入り口から見て一番奥まった所に木造の梯子があり、その登った先にこれまた小規模な屋根裏部屋が続いている。
    桜木がその梯子に足をかけた途端、長い月日で腐ってたようでものの見事に真っ二つに割れたことを受け、三井を肩車した状態で部屋を覗き込んだ。幸い天井は低かった為、180㎝越え男同士の肩車で手が届く高さとなっている。窓のない空間は埃が酷く積もっており、盛大に咳き込みつつ、また暗闇に目を凝らしながら、三井は一冊の手記を見つけ出した。投げ出されたかのように乱雑に置かれていた手記は、カバーの一部が焦げて煤けてしまっている。
    「おっ。良いもん、みっけた」
    「なぬ!ならば人の頭上で遠慮なくゲホゲホしてた件は多めに見てやろう。支えるの大変でいつ振り落とそうか考えてたんだぞ」
    「悪かったって、生理現象には抗えねえんだよ。恐ろしいこと言ってくれるな」
    紙一重で穏便に事が済んだ三井は、即座に下ろしてもらい表紙の埃を手で払った。これから、見知らぬ村人による貴重な情報が入手できるかもしれない。しょーもなかったら千切り捨ててやろーぜ、と紙を捲った。




    六月十五日
    儀式まであと残すところ一ヶ月となった。十年ぶりの、村一番の大事である。この度、贄の世話の役目を仰せつかった。この儀式に携わるのは初めてのことだ。前回においては、まだ成人を迎えていなかったため一切を教えてもらうことはできなかった。漸く、シャクシャク様のお役に立てる。このことが何よりも嬉しい。贄へ御食事を運ぶのが私の任務である。お前は決して贄と会話してはならないと、母から強く諭された。「教育」はお前の仕事ではない、与えられた役割のみ全うしなさい。それがしきたりであると。分かっている。教えは、絶対である。

    六月二十五日
    初めて贄をこの目で見た。村の奥の洞穴に格子状の牢が嵌め込まれ、そこにかの子どもは居た。こんな場所があることを知らなかった。蝋の火しか灯りがなく、随分と薄暗いところではあったが、子は随分とこざっぱりした風貌をしていた。シャクシャク様への捧げ物として、丁重に扱われてきたらしい。しかしその目は何を映しているのか、常に虚空を見つめ不気味な出立ちであった。神へと捧げられる子は、如何にもこちらの理解に及ばない、何とも言えぬ空気を纏っているのだな。村の婆が、あともう少しで神の元へ御還りになれますよ、と微笑み声をかけても、子は何も言わず握り飯に手をつけただけであった。儀式まで、あと20日。気持ちの昂ぶりを感じる。

    六月二十七日
    儀式の仔細を教えていただいた。洞窟の脇の山道を抜けた先にら村を一望にできる平地が広がっているーーーーどうやら、そこがここ辺りで一番天に近い場所であるらしい。贄はこの村の池のほとりの樹皮から紡いだ布で包まれ、この場所で火の中へと奉納される。村の大人全員が楽器を奏で、舞を踊り、一晩かけてこの盛大な儀式は執り行われる。こうして向こう10年、シャクシャク様のご加護により私たちは平穏に暮らしていけるのだ。ありがたや、ありがたや……

    七月八日
    あと一週間。あいも変わらず子は何を考えているのか分からない。もう直ぐシャクシャク様の元へと還る事ができるのに、喜びの一つもないのだろうか。あの焦点の合わぬ目、気味が悪い。

    七月十三日
    贄の姿が消えた。
    一体何事か。まさか、逃げたとでも?
    許せぬ、許せぬ、許せぬ!!

    七月十四日
    池の奥、岩の隙間に隠れていた贄を見つけた。
    私を見た瞬間逃げ出そうとしたので、その脚を引っ捕まえた。激しく暴れ、此方をキツく睨んでくる。その目が気に食わぬ。この手で、両の瞳を抉り出してやった。
    なおも逃げようとするもんだから、池に顔を沈め続けた。水が、贄の血で赤く滲んでいく。たったの数分で、贄は大人しくなった。手を離すと身体はずるりと滑り、池の底へと沈んでいった。

    罰当たりな餓鬼め。


    七月十六日
    長老の身体から火が上がった。耳を塞ぎたくなるような声を上げながら、長老は燃えていく。皮膚が溶け、肉が焦げる匂いが立ち込める。その火は隣にいた妻へと移り、悲鳴が二重となる。村人が次々と燃えていく。地獄のような光景を前に私は逃げ出した。屋根裏で震えながら、今、記録を残している。

    恐ろしい恐ろしい恐ろしい!
    これはシャクシャク様の怒りだ。贄を捧げることの出来なかった、我々に対する罰である。
    何か助かる手はないか、考えろ考えろ考えろ考えろ、







      あ


              つ


         い




















    次のページをめくった瞬間、屋根裏からゴトッと何かが落ちる音がした。二人して、天井を見上げる。桜木は呆然として動かない。徐に立ち上がった三井は、梯子に慎重に足をかけ、屋根裏を覗き込む。

    そこには、人型の黒いしみが広がっていた。

    「なるほど、ここで死んだのか」
    なんてことない顔で三井が呟く。
    何よりも、この状況で躊躇いもなく屋根裏を見にいくミッチーが一番怖い、と桜木は震えた。
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