状況を整理してみる。先ず悪いニュース、登ってきた山道が跡形もなくなっていた。入り口であろう場所は周辺と同様木々が生い茂り、足を踏み入れるのには躊躇するほどの傾斜へと変貌を遂げている。
また、宮城が見たという人型の異形を桜木も三井も目にすることとなった。遠目から見ても分かるおぞましさ。あの瞬間咄嗟に二人を引き留め息を潜める判断をした宮城は英断だったと思う。桜木は人の形をとりながら爛れた皮膚、焦げた肉体、所々抉れて見える骨、これらを認識した時、喉から込み上げるものをぐっと堪えるのに必死だった。悪い夢を見ている心地だった。こんなものがこの村には徘徊しているのだ。
"あれ"は何かを探しているようにも見えた。何か、それはきっとこの場に足を踏み入れた自分たちだろう。捕まってはならない。根拠とか理由とか、そんなものを差し置いて、本能的に警告音が鳴り響いている。
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