ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第8話「綻び」 マレフィセントが後悔に胸を苛まれている頃、何も知らないローズはいつもどおりの森の生活を楽しんでいた。
もうすぐ十六歳の誕生日、というある日、彼女は森の中で一人の青年と出会った。青年は見目麗しく、礼儀正しく、美しい衣装をまとっていた。
彼は、「すみません、道に迷ってしまって。城へはどちらに行けばいいですか?」と尋ねた。たったそれだけの会話なのに、ローズの胸は何故かドキドキし、顔がほてるのを感じた。なんだろう、この不思議な感じは。この人ともっと話していたい、側にいたい、と感じる……。
どうやら青年も同じ気持ちだったらしく、用事を済ませたら必ずまた寄るから、と言いおいて去っていったのだった。
それから数日の間、ローズは毎朝のように目覚めるとすぐに、彼がまたやってこないかと考えてあの場所へとでかけ、日暮れにはがっかりして家に戻るのだった。
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