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    雪華うさぎ

    @snowrabbit_re

    電波人間のRPGの小説や絵をあげていく草食動物
    オリ電もあげておりますので、苦手な方ご注意ください

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    雪華うさぎ

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    私がかねてより書いていた二次創作長編小説、『電波人間のRPGX』リメイク版第1話の試し読みです。
    第1話自体は既に完成していますが、pixivでの本連載はまだ先になりそうです。ということで、ちょい見せとなります。

    電波人間のRPGX 第1話 謎の雛鳥《試読版》 ――ひとたび見れば印象に残るアンテナ塔が建つ小さな町、デンパタウン。この町は、世界を二度も救った伝説の勇者が住む町だと、その名が知れ渡っている。

     平和なある日、デンパタウンの畑に、一つの卵が落ちてきた。
     辺境にあるその町で起こった、そんな不思議な出来事は、やがて世界を巻き込む大きな事件に発展する――

     ◇

     デンパタウンを、朝日の光が照らす朝。

     食パンを模した外観の店に、一人の客が足を運ぶ。

    「おはようございます!」
    「あら、おはよう」

     カウンターに立つ地底人の女店主と挨拶を交わした、小柄な電波人間の女性。
     彼女の名は『あかり』。このデンパタウンに住む勇者『ふゆき』の妻だ。

     あかりは昔、〈闇のオーブ〉という伝説の宝珠を託されていた。闇の力を増幅させる力を持つそれを守っていたのが原因で、邪悪な者に拐われることがあった。
     そうして幾度も危機に陥ったあかりを助けたのが、幼馴染のふゆきだった。
     勇敢で優しい彼とあかりは結婚し、その間に息子『テル』と娘『ルナ』を授かった。現在は家族四人で、静かに、だけど幸せに暮らしている。

    「聞いた? 復活したジャシンを、電波人間が倒したらしいの」
    「え? そうなんですか?」
    「そうなのよ! 何でもあなたの旦那と同じ勇者で、前に復活した魔女も倒したんですって。凄いわよねえ」

     女店主の噂話を聞いていたあかりの脳裏には、見知った顔が思い浮かぶ。以前、用事があって登った火山で出会った、電波人間の少年の顔が。

    「……私、その人と知り合いかもしれません」
    「あら、そうなの? 旦那と会わせたら、仲良くなるんじゃない!?」
    「ふふ、きっと仲良くなりますね! でも私、彼の連絡先を知らないんです。知っているのは顔と名前だけで……またどこかで会えるかしら」
    「会えるわよ。縁っていうのは不思議なものだもの!」

     明るく笑う女店主に元気づけられて、あかりの顔が綻ぶ。
     それから互いの家族自慢もしつつ、あかりはキズぐすりを買って店を後にした。

     かなりの時間の間話し込んでいたのか、先ほどまで人気がなかったデンパタウンでは、電波人間や地底人が活動を始めていた。
     地底人の庭師と数人の電波人間が、青い屋根の一軒家――あかりたち一家が住む家に隣接する畑に向かっている。
     あかりは庭師――『ソテツ』たちに駆け寄った。

    「おはようございます! 今日もお願いします」
    「おお、おはよう。旦那に今度新しく買う種が何か、聞いておいてくれ」
    「いいですよ。わかり次第お伝えします」
    「ありがとうな」
    「……ん?」

     ソテツとあかりが話していた傍らで、一人の電波人間が声をあげる。
     「どうしたの?」と首を傾げるあかりに、電波人間は畑の一角を指さした。その先には、陽光に反射して煌めく何かが、土に埋もれていた。

    「あれは……」

     あかりは畑に植えられた花や作物を避けながら進み、煌めくものの正体を確認する。
     それは、何かの卵のようだった。殻は青白い宝石のように輝いており、手に持つと生命の温もりが感じられる。

    「これは……卵、かしら……」
    「あかり?」

     あかりの名を呼ぶ声が聞こえ、一同は声がした方を見た。
     声の主である白い兎耳の電波人間――ふゆきは、一軒家の玄関先から、何事かと畑にやって来る。

    「どうしたんですかあ?」
    「あなた、これ、畑に落ちていたの」
    「これは……見たことのない卵ですねえ。魔物のものですかねえ……もしそうなら、近くに巣があるかもしれませんよう……」

     ふゆきが思考を巡らせていたその時、あかりが抱える卵に、小さな亀裂が入った。

    「え?」

     卵が、孵化を始めたのだ。
     パキ、パキ、と乾いた音をたてて、亀裂はどんどん大きくなっていく。
     あまりに唐突な出来事にどうすることもできず、呆然とそれを見守る電波人間たちに囲まれて、新たな命が誕生する。

    「ピイ!」

     殻を破って出てきたのは、白と青の羽毛に身を包んだ、四対の翼の雛鳥だった。

    「――ピ!」

     突然の孵化に驚いていた電波人間たちに呼びかけるように、雛鳥は鳴き声をあげた。
     それでも動かない電波人間たち。妖精が通ったかのような沈黙の中、先に言葉を発したのはあかりだった。

    「ねえ、あなた、この子は家で預かれないかしら?」
    「う~ん、そうですねえ。この子はボクたちの家で預かりましょう。その間にボクの方で、この鳥が何なのか調べますう」
    「ええ。よろしくね、えっと……」

     あかりが手のひらの上で羽繕いをする雛鳥に声をかけると、雛鳥は嬉しそうに鳴いて擦り寄ってきた。
     あかりのことを親だと思っているのだろうか、それとも人懐っこいだけなのか、いずれにせよ彼女の母性本能がくすぐられた。

    「かわいい~!」

     そうはにかんだあかりが雛鳥を抱きしめるのを、ふゆきは微笑ましそうに見つめていた。

     ◇

     落ち着いた電波人間たちはソテツと共に畑仕事に戻り、ふゆきとあかりは雛鳥を連れて家に帰って来た。

    「ただいまですう」
    「ただいま」
    「ピイ」

     あかりの腕の中で、雛鳥は物珍しそうに家の中を見回している。
     雛鳥が自由に動けるよう、あかりは雛鳥をテーブルの上にそっと下ろした。

    「ボクは子供たちを起こしてきますねえ」
    「わかったわ」

     ふゆきが階段を上っていき、リビングにはあかりと雛鳥が残る。
     ふゆきが子供たちを起こす間に、朝食の下準備をしようとしたあかりは、テーブルにちょこんと座る雛鳥の目の高さに合わせて屈んだ。

    「ねえ、これから朝ご飯を作るけど、あなたは何を食べられるかしら」
    「ピ」
    「う~ん、あなたの言葉がわかればいいのに、なんて、ね」

     あかりが困ったように笑った時、ふゆきが子供たちを連れて下りて来た。

    「あかり、子供たち起きましたよう」
    「あら、早いわね。おはよう、子供たち」
    「おはよう、お母さん……」
    「ふぁ……おはよぉ~……」

     眠たげに目を擦る子供たち――テルとルナは、自分たちの席に着こうとした時に、雛鳥の存在に気がついた。すると一気に目が覚めたようで、テルは不思議そうに、ルナは興味津々に雛鳥を見つめる。

    「わあー! かわいい!! お母さん、ルナこの子飼いたい!」
    「ふふ、これからしばらく、この子をお世話するのよ」
    「ほんとう!? やったー!」

     椅子の上ではしゃぐルナとは反対に、テルは冷静に雛鳥を観察している。

    「お母さん、この子はどこから来たの?」
    「それがね、まだわからないの。気がついた時には畑に卵が落ちていたから、これから何の鳥かお父さんが調べてくれるわ」
    「そうなんだ。早く親鳥さんと会えるといいね……この宝石みたいなのがヒントになるかな」
    「宝石?」
    「これだよ」

     テルに言われて、ふゆきとあかり、ルナが雛鳥をもう一度見てみる。少年の言う通り、雛鳥の胴体、その羽毛から青い水晶が顔を覗かせていた。
     テルがそれを軽くつつくと、雛鳥は飛び跳ねて後ろに下がる。

    「ピッ」
    「あっ、ごめん。驚かせたかな」

     テルが雛鳥を手で包んで、優しく撫でると、雛鳥はご機嫌そうに鳴き声をあげた。
     その微笑ましい光景を見守っていたふゆきだが、ふと、雛鳥から不思議な力を感じ取る。

    (……?)

     どこかで感じ取ったことがある力に、ふゆきは違和感を覚えた。その違和感は、自身が歩んできた旅路での一つの記憶に結びつく。

    (これはまさか……精霊の……?)

     その直感からの思考で、ふゆきは、この雛鳥の正体を知る大きなきっかけを得た。

     ――一家がテーブルを囲む中、ふとルナが口を開く。

    「ねえ、この子のお名前は?」
    「ああ、名前がないと不便ですねえ。どうしましょうかあ」
    「名前……あ」

     あかりが何かを思いついたように声をあげ、ふゆきと子供たちはあかりに目を向ける。

    「この子の名前……『あおい』、はどうかしら? 青い鳥だし、触るとちょっとひんやりしてるもの」

     あかりの提案に、ふゆきたちは互いに目を見合わせたあと、

    「いい(ですねえ)(ね)!」

     と頷いた。雛鳥も、自分だけの名を貰ったのが嬉しいのか、ご機嫌そうに鳴いている。
     あかりはほっと息をついて、雛鳥に話しかけた。

    「それじゃあ、あなたは今日からあおい、ね!」

     雛鳥――あおいは「ピイ」と鳴き、あかりの胸に飛び込んだ。
     あおいがあかりによく懐いているのを見て、ふゆきが、

    「懐いていますねえ、あおい」

     と微笑むと、あかりもまた微笑んで「ええ」と返事をし、あおいを愛おしそうに抱きしめた。

    「家族が一人増えたのが、とっても嬉しいわ」

     ◇

     新たな家族――あおいを迎えての食卓で朝食を食べ終えたふゆきたちは、流し台で食器を水に浸してから外に出る。

    「それじゃああなた、行ってらっしゃい」
    「行ってらっしゃい!」
    「行ってきますう」
    「ピ」

     あかりと子供たちに見送られ、ふゆきはあおいをしっかりと抱きかかえて電波ジャンプした。

    《試読版はここまでとなります》
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