物心ついた頃にはオレの記憶があった。どうやらヒトになったらしい。オレの最期がどんなだったのかは思い出せないが、今生きているということは終末を迎えることはできなかったのだろう。
まだ思うように動かせない体で、現状把握のための情報を集める。どうやら同じ家にいるこの男女が今の身体の両親らしい。オレがファーさんの手ではなく女の腹から生まれたなんて信じがたい現実だ。外の世界を映している箱(テレビというらしい)の助けを得て世界を識る。どうやら空の世界でもなく全く見知らぬ世界らしい。違う世界線に渡るのは初めてではないが、ここまで違うのは初めてだった。空の民も星の民も星晶獣も、魔法も魔物もない。ヒトの脆弱さはわかっているので魔物の心配がないのは安心要素かもしれない。この世界でまたファーさんを見つけるまでは死ぬわけにはいかないから。どうやらこの世界にはヒューマンしかいないらしい。
1946