恋する悪魔『それ』に気がついてからのオレは、とにかく醜い。
やめよう、やめよう、って思ってるのにやめられなくて、ズルズル続けて、夜、布団の中で自己嫌悪と惨めさで死にたくなる。
でも、きっと、明日も明後日も続けちゃうんだ。ああ、気がつかなきゃよかった。
「タケルっち~!」
スマホを片手にタケルっちに近づくと、タケルっちは笑顔を見せてくれる。四季さん、って柔らかくて低い声で呼んでくれる。ソファに詰めて座ってくれる。オレはその隣に座る。最初は話しかけても仏頂面だったタケルっち。目に見える変化が、とっても嬉しくてとっても苦しい。
「見て見て!メガイケなネコっちの写メっすよ~」
そう言ってスマホをタケルっちの方に向ける。位置は、タケルっちから少しだけ離して。そうすると、タケルっちは無防備に顔をこっちに寄せてくるから、オレとタケルっちの距離が近くなる。それが狙い。
「……かわいいな」
「でしょー!」
息がかかりそうな至近距離にドキドキする。でも、動揺は出せない。バレてはいけない。「最近2人は仲がいいね」ってハヤトっちが笑ってた。仲のいい友達。そのくらいの距離感を守らなきゃいけない。
タケルっちの真っ青でキレイな目はオレのスマホに夢中。それだけで俺は嬉しい。その目で見ないでほしいから。漣っちのことを。
ちら、と離れたところに座ってる漣っちのほうを見る。ほら、やっぱりこっち見てる。ため息が出そう。これが、最近オレが気づいちゃったこと。
『漣っちは、いつもタケルっちを見てる』
気づいちゃった日は泣きそうだった。てか、その日の夜に家のお風呂で少し泣いた。
多分、オレしか気づいてない。きっと漣っち本人も気づいてない。オレだけが気づいた。ずっと、大好きな漣っちを見てたオレだけが。オレだけしか知らない、漣っちの癖。
だから、それからオレの行動は少し変わった。オレはわざとタケルっちの横に座る。わざとタケルっちの前を横切る。わざとタケルっちに話しかけて、タケルっちに近づく。
全部、全部、漣っちに見つけてほしくて。
なんだか、タケルっちを利用してるみたいでやだ。そのためにタケルっちと友達になったみたいでやだ。俺は、こんなことなくってもタケルっちと仲良くなりたいのに、それなのにタケルっちと話してる時についつい漣っちのほうを見てしまう。
漣っちと目は合わない。当然だ。漣っちはタケルっちを見てるから。
「どこにいたんだ?」
タケルっちの声に我に返る。路地裏の場所を教える間、泣いちゃいたかった。
ごめん、タケルっち。ごめんなさい。オレ、タケルっちのことも好きなの。本当だよ。タケルっちは大事な友達。好きだよ。でもね、それでもオレは漣っちが大好きなの。
ああ、やめられない。