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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    タケ漣(2019/02/15)

    ##タケ漣

    月には花が咲いていたって 名前も知らないそれを、ただ気に入っていた。
     それが『青』という色だということも、それが『地球』という星だということも、全部全部後から知った。
     名も知らぬ存在をただ見つめていた。伸ばす手もないまま、美しいという感情も知らぬままに。
     それが幸せなのか不幸なのかもわからないままに。


     昔の夢をよく見ていた。幼い頃からずっと。
     ずっと旅をしていたが、そのどの景色とも違った風景は、きっとこうして生まれる前の景色だろう。こんなに風景がくっきりとイメージなんて出来るほど年を重ねていなかった時から、その景色は頭の中にあった。
     思い込みだと無視をするにはあまりにもありありと浮かぶ情景。これは、夢想ではなく記憶だろう。一度だって疑ったことはなかった。
     前世。
     親父が言っていた。オレ様がまだ小さい頃。
     オレ様が自分以外の花を初めて見た時、ようやく話し相手が見つかったと思った時。
     それでも言葉が通じなくて少しだけ不満だった時、親父が何をしているのかと聞いてきた。
    『オレ様は花だから、こいつらと話してやろーと思っただけだ』
    『ふぅん。いつから?いつからオマエは花なんだ?』
    『昔から』
     そう言った俺に親父が言った。
    『それは、あれか。前世ってやつだな』
     そして、教えてくれた。
    『オマエ、今は人間だぞ』
     そう言われるまで、オレ様は自分が花だと疑ったことはなかった。葉も、花もない、この体で。

     この記憶はいったい、いつ頃のものだろう。確かめる術はないと思っていたが、ついこの間のバラエティ番組のクイズで知った。月面着陸、1969年。
     ふわり、と、地球の1/6ほどの重力で降り立った生き物は、月に咲いていた最後の花を踏みつぶして、地面に母国の旗を突き立てた。そのときに踏みつぶされた最後の花、それがオレ様だった。
     取り立てて、怒りは感じなかった。ああ、終わるのか。そう思った。悲しみとも、安寧とも違う気持ち。あの感情は、ここに生まれてから感じたことがない。ただ、生に固執していなかった。理由もなく、ただ咲いていた。
     意識がふわ、と上に引っ張られるような感じがした時から、意識というものを持った瞬間から、月には誰もいなかった。そこが月だとも知らず、ただ広がる薄暗い砂の世界をただ見ていた。
     種から生まれたのかも、根から分かたれたのかもわからない。ただ、たった一人でオレ様は咲いていた。それが当たり前で、寂しいと思ったコトなんてなくて、ただぼんやり、過ぎゆく時間の合間に現れる青い星を見て過ごしてきた。数えられないほど途方もない回数、その星を迎え入れて、見送った。


    「漣っちは一人が寂しくないんすか?」
     事務所の喧噪から逃れ、屋上で風を受けているときに、追いかけてきた四季に聞かれたことがある。オレ様は人間になってから、孤独を感じたことがない。
     だってここには生き物がたくさんいて、何もかもに色がある。風が頬を撫でて、星が指先を照らす。その指先を伸ばせば、触れられるモノがいくらだってある。熱も、音も、匂いも、味も、そして自分以外の存在も。
     オレ様は本当の孤独を知っている。音のない空間で、ただ、時折見える青い星だけを見つめている時間。あれこそがきっと孤独だった。美しい青に伸ばす手を持たず、あの、あの星を見たときの気持ちを分かち合う相手もいない。あの時間こそが、きっと。
     あの青に触れてみたいと思ったことも、この気持ちをわかってほしいと思ったこともない。ただ、孤独というのはああいうことなんじゃないかって思う。
     人間は、忙しい。
     いいことなのか、悪いことなのかは、わからない。でも、月には何もなかったし、何もすることがなかったから、飽きるまでは人間をするのも悪くない。そう思う。
     実際、人間は悪くないのだ。ラーメンはおいしいし、猫は柔らかい。たい焼きは甘いし、アイドルは気分がいい。周りにいる変なのも、つまらなくはない。
     ただ、ここにいると、あの青が見えない。
     青い星の正体を知ったときは少しだけ驚いた。ぼんやりと眺めていた青い星。そこに自分が立っているというのは不思議な気分だった。だけど、納得もした。きっとあれは、空と海の色だった。
     だけど、海を見ても空を見ても、あの青い星を見た時みたいな、茎がぎゅっ、となる感覚はなかった。人間になって、茎がなくなったからだろうか。それは、違う気がした。きっと、この青には何かが足りないんだ。


     正体不明の青。人間であるうちは見られることはないのだろうと、諦めていた。
     でも、巡り会ってしまった。
     舞台袖から見える、チビの後ろ姿。その奥に揺れるサインライト。真っ青で、空とも海とも違う。あの日々に月から見ていた、地球のような。
     音も震動も、何も感じることも出来ないほどの、既視感。喜びに体が震えた。真っ青な景色、青い髪、青い瞳。
     歌い終えたアイツが戻ってくる。触れたい、そう思った。青を見て、始めてそう願った。
     触れたい。
     押さえきれない衝動が、意地を砕いて背中を突き飛ばした。触れたい。気持ちが抑えられない。今はあの日々とは違う。今の自分には、伸ばすことの出来る腕がある。

     伸ばした指先が、チビの髪に触れる。チビが笑って、その青い瞳が瞼に隠れた。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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