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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    北冬。リクエスト品(2018/12/07)

    ##北冬

    傘を変えた日 傘を変えた。
     今までお世話になっていた、シックな宵闇色の傘はその大きさが気に入っていた。エンジェルちゃんをいれても、なおスペースが余る大きな傘。エンジェルちゃんを濡らすわけにはいかないからね。でもここしばらく、長年の相棒には傘立てでおやすみしてもらっている。
     代わりに、折りたたみ傘を買った。今までの傘とは逆に、小ささで選んだ傘。色は、光の加減で紫に見える黒。色はなんでもよかったけど、この色は気に入っている。
     まぁ、この傘は御守りみたいなものなのだけれど。
    「冬馬、いれて」
    「なんだよ、最近傘忘れすぎじゃねぇか?」
     冬馬が傘を開いたら、鞄の中の傘を忘れたふりをしてその中に入る。冬馬はいつも呆れた声で俺を咎めるけど、口調は柔らかいし拒まれたことはない。
     ありがと、と言って肩を抱き寄せる。冬馬の傘は小さくないけど、二人がすっぽり入れるほど大きくもない。だから、これは俺たちが濡れないように、って口実。
     折りたたみ傘を持ってるのは、冬馬が傘を忘れた時のため。でも、一度だけ冬馬が傘を忘れたとき、俺は傘を持ってないだろう、と思い込んだ冬馬に手を引かれて、駐車場から事務所までの短い距離を走ったことがある。そうして、濡れながら走るのも悪くなかった。
     折りたたみ傘、いらないかもしれないね。そんなことを思いながら、同じ傘の中で反響する冬馬の声を聞いている。こうして響く声は、世界で一番美しいらしい。傘の中、エンジェルちゃんの耳元に、よく囁いたこの言葉は、何故か冬馬には言う気が起きなかった。
     翔太が笑いながら、自分の傘を畳んでこちらの傘に入ってくる。三人なんて、絶対入らない。それでも俺はそれを笑って受け入れるし、冬馬は俺たちに挟まれて精一杯体を小さくする。冬馬は翔太に、お前は傘を持ってるだろうが、と悲鳴のような声をあげるけど、追い出したりはしない。
     きっと、翔太には鞄の中の折りたたみ傘の存在はバレていて、それでも翔太は何も言わず、たまにこうして俺たちの傘の中に入ってきては笑う。
     右肩が濡れる。それも悪くない。左肩を濡らした翔太と、真ん中に挟まれて笑う冬馬を見て、思う。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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