山下春のパン祭 確かに発端はおじさんだよ。
プロデューサーちゃんに何気なく、シールを集めてるって言ったのはおじさん。
なんでかって、るいやはざまさんや、最近はいろんな人がくるから、もう少しお皿が欲しいの、って言ったのもおじさん。
だけど、こんなことになるなんて、いや、こんなことをしてくれるなんて思わないじゃない。
嬉しいんだよ。嬉しいけど、照れちゃうと言うかなんというか。恐縮って言葉が一番近いのかな。
事務所の一角。立てかけられた小さなホワイトボード。そこにマグネットで留められたクリアファイル。そしてボードに書かれた文字。
『パン祭りのシール、集めています』
視線をやれば、そこにはクリアファイルをビッチリと埋めるシール達。ああ、ヤマシタ春のパン祭り。
若い子たちがコンビニで買った菓子パンからシールを剥がしてペタペタと貼っていく。かしわぎやあくのが家でたくさん食べると言いながら食パンについていたシールを嬉しそうに貼っていく。たまにはパンもいいッスね、と笑いながらシールをきざきやたいがに手渡すえんじょうじ。そのシールをクリアファイルに貼っていく二人。不思議そうなきざきと、楽しそうなたいが。
誰も彼も、嬉しそうに、まぁ。
「山下さん、いっぱい集まりましたよ!」
そう言って、シールを差し出しながら得意げに笑うプロデューサーちゃん。言いたいことはいっぱいあるけど、とりあえずこれだけ。
「……お礼に、今度ご飯食べに来てよ」
お皿なら、きっといっぱいあるからさ。