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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    タケルと漣の夜会話(2018/09/15)

    ##大河タケル
    ##牙崎漣
    ##カプなし

    夜は子供たちのためにきっと漣がタケルの家に来たのは、星の見えない夜だったから。
    ここのところ、涼しくなってきて雨が多い。その雫をよけるようにすいすいと、いろいろな屋根の下をうろつく猫のようなこの生き物を、タケルは少しのため息と共に受け入れた。
    漣は相変わらず文句が多い。先日言った温泉がどうもお気に召したらしく、タケルの家の風呂を狭いと言っていた。
    着替えを貸せば小さいと文句を言われる。だったらオマエが着替えを持ってこい。タケルはそう思う。

    電気を消してしばらく、タケルが思いついたように口を開いた。
    「オマエでも、約束とかするんだな」
    「は?」
    心当たりがないと言った様子の漣に、タケルはリンゴの赤さを教えるように口を開く。
    「温泉で。ほら、来年の話、してただろ」
    オマエも未来の話、するんだな。そう呟けば、漣はすこし考えるように沈黙したあとに、あれ約束かぁ?と独りごちる。
    そうして、また少しの静寂。でも、二人とも眠ってなんかいなかった。お互いにそれを空気で感じていた。
    「なぁ」
    「あ?」
    やっぱり起きてた。それは口には出さず、タケルは言う。
    「俺とも何か、約束しようぜ」
    それはタケルにとって愉快な思いつきだった。口に出すとき、少し笑ってしまうくらい。
    そして、それは漣にとっても面白いことだったようで、珍しく上機嫌に笑って呟いた。
    「あほらし」
    「ダメか?」
    懇願のような、だだっこのような、声。それでも語尾は隠しきれない笑いで揺れていた。
    うすぼやりとした月明かりと街灯に揺らされたシーツの海で子供が二人、内緒話。
    さざなみのような、呼吸に満たされた静寂。
    「……いつか」
    「いつか」
    「オレ様が勝つ。チビの泣きっ面、拝んでやるよ」
    ずいぶんと、ぼんやりとした約束だった。それでも、タケルはなにか、勲章をもらったみたいに嬉しかった。
    「一生つきあってやるよ」
    そう返せば当たり前だバァーカ、と返ってくる。漣は言葉の重みを知ってか知らずか簡単に返す。
    「おやすみ」
    「おー」
    タケルにとって、愉快な夜だった。きっと、漣にとっても。
    彼らはまだ若くて、永遠の長さを知らない。本当の意味で、一生という言葉を使う。

    「……ん?一生ってなんだよ!一生オレ様が勝てねぇって言いてぇのか!?」
    おやすみの挨拶からしばらくして、布団の中で暴れる影が一つ。
    「ふふ」
    こらえきれずに笑いを漏らしたもう一人の寝ない子。
    言葉を交わさぬまま、笑い声と枕が少しだけ飛び交ったあと、二人は黙って眠る。
    とある、夜の会話。とある、子供達の内緒話。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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