放課後アフタートーク 悪戯心にも満たない出来心だった。のんびりとただ三人で同じ空間にいるだけ時間に、僕は言葉を落とす。
「アマミネくんって天才なんだよね?」
改めて口にすると、なんだかすごい問いかけだと思う。そんな質問にアマミネくんは平然と答えた。
「ですね」
アマミネくんのこういうところ、すごいよなぁっていつも思う。アマミネくんが自信満々に返した言葉は、僕の望んだものだった。
「じゃあ、聞いたら何でも教えてくれる?」
「そうですね。俺が今わからないことでも調べればわかりますし、大抵のことは教えられますよ」
情報収集は得意なんです。そう誇らしげに胸を張るアマミネくんに笑いかける。
「じゃあ、教えてほしいことがあるんだ」
「はい、なんですか?」
たんなる出来心だった。ある種のコミュニケーションと言っていい。
「……アマミネくんの好きな人、教えてよ」
写真とかあったら見せて。そう告げればアマミネくんはたっぷり数秒フリーズしたあと、平静を装った慌て方を見せる。
「……知らない、です。……というか、いないから! ないです。そういうの」
アマミネくんのクールに振る舞おうとするところは好きだし、それなのに耳が少し赤くなっているのが本当にかわいい。するとマユミくんが息を吸い込んだから、彼も参戦する気なのだとわかる。どちらへの助け船が出るんだろう。
「答えのないものを聞いても仕方ないだろう。秀、次は俺の質問に答えてくれ」
「イヤです」
「好みのタイプはなんだ?」
「イヤですってば!」
マユミくんが乗っかってくれたから僕は思わず笑ってしまう。秀くんにはちょっと悪いけど、こういうじゃれつきかたができる空間っていうのは少しくすぐったいけど心地いい。
もっと、仲良くなりたいな。そんなことを考えている間にも会話は進んでいる。アマミネくんが消え入りそうな声で「胸派です……」と呟いたものだから、そろそろ助けてあげようと思う。
「じゃあさ、マユミくんはどっち派なの?」
「尻派だ」
即答じゃん。マユミくんがにやりと笑う。あ、これ、次は僕が標的だ。