Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ❤ 🌟 🎀 🍎
    POIPOI 420

    85_yako_p

    ☆quiet follow

    雰囲気概念の想雨。100本チャレンジ、その24(22/5/7)

    ##想雨
    ##100本チャレンジ

    雨男「なにこれー?」
     記憶の中にある小学校。その教室にそっくりな空間に僕はいた。教室には椅子と、机と、僕。後ろの壁や目の前の黒板には、僕の詠んだ川柳が所狭しと飾られている。黒板の真ん中に、誇らしげに賞状が飾られていた。
     窓からは草原が見える。そして、頭上には飲み込まれそうなほど鮮やかな青空が広がっていた。そう、空が見える。
     教室に天井はなかった。蓋のない箱のなかに僕はいた。扉の先の気配は華やかに萌えていて、きっとこの箱は草原の中にぽつりと置かれているんだろう。
     どこに行くつもりもないのに僕は扉に手をかける。が、開かない。振り向いて開け放たれた窓を見ると、そこには雨が吹き込んでいた。僕の頭上は快晴なのに、外はひどい雨だ。引き寄せられるように窓から乗り出して外を見れば、覗いた窓の下には見知った人影が座り込んでいた。
    「……雨彦さんー?」
     飄々とした、狐の顔。
    「よぉ、北村」
     ずぶ濡れの雨彦さんはなんだか可哀想だ。髪がぺたんこになって、項垂れた前髪のせいでいつもより若く見える。
    「ずいぶん濡れてるねー」
    「ああ、仕方ないさ」
     諦めたような声が雨音に溶ける。
    「……こっち、入りなよー」
    「そいつはできない」
    「なんでー? 足の長さなら足りてるでしょ-?」
     簡単に入ってこれるくせに、雨彦さんは困ったように笑った。
    「俺が入ったらそっちも雨になっちまう。北村の川柳が濡れるだろ?」
     壁一面の、僕が生み出したもの。
    「お前さんを台無しにしちまうからな。そっちには行けないんだ。行っちゃ、ならない」
    「……ふーん、そうなんだー」
     なんだか腹が立った。視線を外した雨彦さんの頭上から、僕は窓を乗り越えて外に出る。
    「……何やってるんだ、濡れるだろう」
     慌ててなんていないくせに、受け入れられないような声を出す男の横に座る。全部ぐちゃぐちゃに濡れちゃったけどどうでもいい。
    「僕がこっちで濡れる分にはいいでしょー? 僕はダメにしたくないものくらい、自分で守れるよー」
     窓越しの教室には日差しが降り注いで、勲章をきらきらと照らしている。
    「だからさー……そばにいても、いいよねー?」
     問いかけたけど、味気ない返事なら聞くつもりはなかった。雨彦さんは一言、「好きにしてくれ」と呟いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺💘💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works