きみはレモングラス「そんな不機嫌にならないでよね!綺麗なカトラリーを探しにきたんだもの」
「チッ……潮くせぇし、折角の今日のデザートが台無しだ」
「爽やかで生臭い街には、苦くてすっきりなレモンの香りがピッタリだよ!レンくんもかけてみる?カノンとお揃いだよ」
「いらねェし!」
少年は手に持った香水瓶を左右に揺らす。小さいガラス瓶は街灯を受けてその美しい彫りを輝かせた。青年と少年は歩く。不思議な会話だが、忙しそうな街の人たちは気にする素振りも見せずにすれ違っていた。
「そうそう、そのカトラリー、なんだかすっごく綺麗らしいよ」
「綺麗なものを探しにきてるんだからそりゃそうだろ」
「海から出てきたとは思えないほど、白くてツヤツヤで……やわらかい、んだって」
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