2「タロウくん、こんにちは」
タロウ、と呼ばれた人間は声をかけられて笑顔で振り返った。
顧問弁護士の出立は、スーツに白髪で異様に目立つが、このタロウの見た目は対照的に平々凡々だ。髪は少しだけ緑かかっているように見えるが、どう見ても黒髪。髪型は短髪でどこにでもいそうな青年の髪型。頬にはそばかすがあるが、特別目が大きいわけでも歯が白いわけでもなく。着ている洋服も一般的で街中で特別浮くことはない。白いワンポイントTシャツは少しだけオーバーサイズのシルエットだが、スキニージーンズでメリハリのあるものだ。驚くのは年齢だろうか、この男は一応27歳、どう見ても大学生のような出立の社会人だ。
「北先生、こんにちは。お世話になっております」
4403