約束 伝説の魔獣である我は、過去にひとりだけ人間を背に載せたことがある。
彼奴は変わった男で、フェンリルである我を犬扱いした。
『お前フェンリルだったのか〜。なあ、俺を遠くまで連れてってくれない? そうだな、海がいい』
そう言うと彼奴は我の背に無理矢理よじ登ってきた。『美味い魚料理作ってやるから』などと我を誘惑し、仕方なく男を背に乗せて旅をした。
へらへら笑い、我を恐れぬ変わり者の人間。
人間は弱い。我の手にかかれば、人の国など一晩あれば滅ぼせる。
それでもその男のそばに居たのは、彼奴の作る飯が美味かったから。
しかし、男の体は病に犯されていた。
『俺から連れてけって言ったのに、ごめんな』
『もし、俺が生まれ変わった時にお前がまだ生きてたら、その時は一緒に海行こうな』
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