六等星の夜星の降る夜。老人の遺言通り子供たちは彼と彼の妻の遺灰から作った石を、手のひらほどの大きさに作られた、木彫りの鳥に入れて、澄んだ湖の中に沈めた。いずれ棺は朽ちて、中の二人は静かな水の底、二度と離れることなく眠り続けるだろう。
永の別れとは思えぬほど故人の願いを叶えられた安堵感もあってか、空気は和やかだ。
月の無い夜。黒、紺、紫、青。複雑な色合いの空に、普段なら強い光にかき消される小さな星までもが精一杯の輝きを見せている。
静かな湖面いっぱいに映る夜空にまだ幼い子どもたちがはしゃぐ声さえも聞こえる。
暖かな夜。かって、孤独な少年兵と見上げた星空は遠い。
「もう行くの?シャドー」
おさない少女の声に振り返る。
「彼」の孫娘だ。祖母譲りの柔らかい宝石の色をした髪は、星の光を弾き、夜目にも鮮やかに舞う。
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