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    付き合ってないアシュグレが五年後の世界に飛ばされてry。これ(https://poipiku.com/730267/6736008.html)の続き。まだまだ途中。

    #アシュグレ
    ashGray

    未来 がちゃり。
     ドアが開く音を聞いて、グレイはソファの上で身を固くした。向かいに座るアッシュも臨戦態勢に入ったのが伝わってくる。
     のんびりと顔を上げたのは謎の男だけで、ちらりと時計を見上げてからドアに視線を向けて表情を緩めた。
     男が救急箱の蓋を閉めるのとタイミングを同じくして、一人の男が姿を現す。
     その顔を見て、グレイは小さく息を呑んだ。なんとなく覚悟をしていたとはいえ、こうして目の当たりにするとやはり驚いてしまう。
     短い灰色の髪。制服は見慣れたデザインと色で、胸元のバッジの星の数だけ違う。夕焼け色の瞳は鋭く、その視線が向けられる前にグレイはさっと顔を伏せた。
    「アッシュ、おかえりなさい」
    「おう。……おい、なんだ、そいつらは」
     穏やかな声に軽く返事をした男は、ソファの上で縮こまるグレイと、挑むように険しい視線を向けたアッシュを見て、怪訝そうに眉を上げる。見なくてもわかる。姿かたちが似ている二人の男たちが、火花が散るくらいに睨み合っているのが。
     ひい、と内心で悲鳴を上げるグレイの横で、グレイと同じ顔をした男がこてりと首を傾げる。
    「さっき……三十分くらい前、かな? 庭ですごい音がして、見に行ったら、いた」
     簡潔すぎる答えに、男は呆れ顔をした。
    「いた、じゃねえよ」
    「でも、実際そうだったし……」
    「危険は」
    「たぶん、大丈夫。身体検査はしたし、そもそもこの見た目だし」
    「そうかよ」
     この見た目。
     そう、今、グレイとアッシュの目の前にいるのは、二人にそっくりな男たちだったのだ。
     そっくり、と言っても、服装は違うし、年齢も違う。目算だが、五歳くらい上だろうか。三十代前半といったところか。正直、アッシュは年相応に変化があるように見えるが、自分の方はあまり違いがわからない。少し髪が伸びている程度だろうか。顔つきも体つきも、あまり変わっていない。がっかりするくらいに。
     今だってあまり年相応に見られないというのに、数年経っても同じなのか、と、現実逃避のように凹むグレイの横で、同じ顔をした男が、えぇと、と間延びした声を上げる。
    「自己紹介でもする?」
     向かい合う形で置かれた一人用のソファにどかっと腰を下ろしたあちら側のアッシュは、足を組んで眉を顰めた。
    「必要か?」
    「いちおう、した方がスムーズかなって」
    「いらねえよ。見りゃわかる」
    「だろうな」
     吐き捨てたのはこちらのアッシュで、同意をしたのはあちらのアッシュだ。ああ、なんてややこしい。
     明らかにいらいらしているこちらのアッシュにも怯まず、あちらのグレイはのんびり首を傾げる。
    「でも、なんて呼べばいいかとか……」
    「どうでもいいだろ、そんなの。あっちとこっちでいい」
    「あっちのアッシュとこっちのアッシュ……まあ、それでもいいか」
     気が抜けるくらいに呑気なやり取りなのに、まったく安心できない。どうしてこの二人がこんなにのどかな会話をしているのか、という疑問の方が勝ってしまう。
     そもそも、だ。なぜ、グレイのものらしき家に、アッシュが当然のように帰ってきたのか。おかえりなさい、なんて、挨拶が交わされたのか。
     聞くのが怖い。けれど、聞かないといけない気がする。
    「あ、あの……」
     思いきって口を開いたグレイに、あちらのアッシュが顔を向ける。
    「あ?」
    「ひう……あ、あの、えっと……」
    「……お前ら、一緒に住んでるとか言わねえよな」
     あちらのアッシュの威圧感に怯んで口ごもるグレイの代わりに、こちらのアッシュが代弁をしてくれた。こちらのアッシュも同じ疑問を抱いていたのだろう。
     見えない火花を散らしている二人をはらはら見守るグレイの隣で、あちらのグレイがきょとんと瞬く。
    「え? うん。一緒に住んでる、けど……?」
    「えぇっ!?」
    「なんでだよ!?」
     当然のように頷かれて、こちらの二人が揃って声を上げた。わかってはいたけれど、こうも簡単に肯定されるとは。
     狼狽する二人を交互に見て、ちらりとあちらのアッシュを視線を交わしたあちらのグレイは、うーん、と小さく考え込む仕草をする。
    「なんで、って、言われても……」
     何気なく髪をかき上げた左手に、光るものが見えた。
     嫌な予感がする。それも、とびきり大きな。
     待って、と言う前に、あちらのグレイが口を開いた。
    「……結婚、したから?」
    「はぁ!?!?」
    「け、けっ……!?!?」
    「なんで疑問形なんだお前」
     のんびり首を傾げながら爆弾を落としたあちらのグレイ。
     同時に素っ頓狂な声を上げたこちらのアッシュとグレイ。
     呆れ顔でつっこみを入れたあちらのアッシュ。
     絶句するこちらのアッシュと、口をはくはく動かすことしかできないこちらのグレイの前で、あちらのグレイはその反応が意外だという風に不思議そうな顔をしている。
    「ああ……そういえば、それ、僕がルーキーの頃のヒーロースーツだよね。まだ研修チームにいた頃、かな? 少なくとも三年前か、へたしたら五年前……それなら、うん、そうだね……混乱、するよね」
     ぶつぶつと何かを呟き、一人で勝手に納得したらしいあちらのグレイに、こちら側はまったくついていけない。ちゃんと説明をしてほしい、という気持ちが半分、もうこれ以上何も聞きたくない、という気持ちが半分。正直、このまま気を失ってしまいたいところだけれど、ジェットが交代してくれそうな気配もない。ジェットの方がショックで気絶してしまったのか、と思うくらいに静かだ。羨ましい。
     未だに衝撃から立ち直れていない二人を、あちらのアッシュはいかにも億劫そうに睨む。
    「チッ、めんどくせえな」
    「アッシュ、そんなこと言わないで、ちゃんと説明しないと」
     舌打ちにびくつく自分と違って、あちらのグレイはずっと落ち着き払っている。少しいらっとするくらいにのんびりだ。こちらとしては、もう少し緊張感を持ってほしい。
     ともあれ、説明をするつもりはあるようだ。
     言葉を待っていると、あちらのアッシュを宥めていたあちらのグレイがこちらを向いた。
    「えぇと、そっちの僕」
    「は、はい!?」
    「今、何歳ですか?」
    「え? えっと、あの……二十六歳、です」
    「そっか。じゃあまだ研修チーム一年目だね」
     言って、あちらのグレイは少し困ったような笑みを浮かべる。
    「きっと、今の君たちには信じられないだろうけど……僕とアッシュは付き合っていて、去年結婚したんだ」
     気づかわしげにしながらもはっきりと言いきるあちらのグレイに対して、こちら側はもう言葉も出ない。
     同じ言語を話しているはずなのに、まったく理解ができない。いや、理解することを脳が、心が、拒否している。
     この世界では、付き合う、結婚する、という言葉に他の意味があるのかもしれない。そうに決まっている。
     そう思い込みたくても、二人の左手の薬指に光る同じデザインの指輪と、自然なそぶりでこの家に帰ってきたアッシュと、出迎えたグレイの姿が、一緒に暮らしていることの証左になっていた。二人の雰囲気も、やり取りも、甘さはなくても親しさが見える。
     信じたくない、と耳をふさいで目を瞑ったところで、逃げ場がない。
    「あれ、でも、この子たちって、本当に過去の僕たちなのかな……? パラレルワールドの僕たちって可能性もあるかも……そうしたら、同じ未来が待ってるとは限らない……?」
    「おい、脱線すんな」
     混乱するグレイをよそに、向こうのグレイは一人でぶつぶつと何かを考え込み出して、あちらのアッシュが呆れたように声をかけると、はっとなって顔を上げる。
    「あ、うん」
    「それに、どの世界でもどうせこうなるだろ。俺とお前なら」
    「……うん、そうだね」
     当然のように言われた言葉に、はにかみながら頷くあちらのグレイ。一見すると、ただの仲睦まじいカップルみたいに見える。それが、有り体に言うならばおぞましいし、気持ちが悪い。
     だって、アッシュとグレイなのに。こんな穏やかな間柄には、過去にも未来にも、絶対になりえないのに。
     右手で左の肘をぎゅっと掴んで、体の震えを抑え込む。冷静に、落ち着いて。この歪な世界から逃げ出す方法を、見つけなければ。
     そういえば、こちらのアッシュは大丈夫だろうか。爆弾発言の連続でグレイと同じように混乱していたようだけれど、そろそろ立ち直ってほしい。
     そっと顔を上げて伺い見ると、アッシュの目はあちらの二人に向けられていて、その顔は今までにないくらいに険しく凶悪だった。まるで親の仇でも見るような、憎むような顔。
     一瞬戸惑ったものの、無理もないか、とも思う。唯我独尊を絵に描いたような男が、自分とは正反対の性格をしたグレイと恋人になっている、なんて光景を見せられれば、怒り狂ってもおかしくはない。グレイと同じくらい、拒否反応が出ているだろう。
    「おい、勝手にそっちだけで納得してんじゃねえよ」
     苛立ち混じりの、それでもどうにか感情を抑えているらしい声をぶつけられて、あちらのアッシュがぴくりと眉を上げる。
     そっくり同じに夕焼け色な瞳が、ばちっと交差した。
    「あ?」
    「あぁ?」
    「ひっ!?」
    「もう、自分相手にすごまないでよ……それも、五歳も年下の子に」
     もうほとんどチンピラのやり取りだ。ただでさえ未だに聞くだけで体が震える声が、ステレオで聞こえてくる。地獄だ。どうせステレオならジェイの穏やかな声やビリーの元気いっぱいの明るい声がいい。それならずっと聞いていられるのに。
     首を竦めて震えるだけの自分と違って、あちらのグレイは慣れた様子だ。呆れてすらいる。主にあちらのアッシュに。
     だが、その言葉に反応したのはこちらのアッシュで、あちらの自分と睨み合っていた目をぎろっとあちらのグレイに向けて、獰猛な獣のような顔をする。
    「ガキ扱いするんじゃねえよ!」
    「は、ガキじゃねえか」
     噛みつくように怒鳴ったこちらのアッシュを、あちらのアッシュが鼻で笑う。まだ信じきれていないけれど、自分を相手によくもまああんなに馬鹿にしきった言い方ができるものだ、と、妙なところで感心してしまう。
     自分相手に敵意丸出しなのはこちらのアッシュも同じで、こめかみに青筋を立てて数年後の自分を睨む顔はとてもじゃないがヒーローとは思えないほどに凶悪だ。
    「ンだと!?」
    「あぁ!?」
    「二人とも」
     とうとう立ち上がって、今にも胸倉を掴みそうな勢いの二人に割って入ったのは、あちらのグレイだった。
     二対の鋭い視線を向けられたグレイは、座ったまま、つまり、見下ろされている体勢なのに、一切怯まずその視線を受け止めている。切れ長の瞳を僅かに細めて、じっとまっすぐ二人を見る。
     その顔はどこか、子どもたちを叱る時の父と似ていた。
    「やめて。今ここで僕たち同士で言い争っても何も解決しないだろ」
    「……」
    「チッ」
     眉を顰めたあちらの自分の言葉に、あちらのアッシュは黙って眉を上げて、こちらのアッシュは小さく舌を打ちながらも口を閉じた。二人が腰を下ろすのを見て、あちらのグレイは小さく苦笑する。仕方ないな、と、弟妹の悪戯を見た時のように。
     大声でも荒げた声でもないのに、そのきっぱりとした物言いはどこか威圧感があって、同じなはずなのにどこか違う自分相手に、グレイは確かに気圧されてしまった。
     グレイだって、バディや弟妹が何か悪いことをした時は似たような声色で叱ることはあるけれど、ここまで毅然としていられるだろうか。それとも、もっと成長すればこうなれるのだろうか。
     そんな未来は少しも想像できなくて、やっぱりこの男は自分とは別の人間なのではないか、と、そう思わずにはいられない。
     おろおろするしかできなかった自分が不甲斐ないのもあって、ふい、と目を逸らしてしまう。
     渋々黙った二人のアッシュと、俯く自分に向かって、あちらのグレイが小さく息を吐く。
    「とにかく、暫定だけど、ここは君たちにとっては五年後の世界。そんな世界に飛ばされた原因に、心当たりはあるかな?」
     問われて、そろそろと顔を上げる。アッシュが答えるかと待ってみたが、先ほどのやり取りで勢いを削がれたのか、不機嫌そうに足を組んで黙ったままだ。仕方がないので、グレイは考え考え口を開いた。
    「えっと……イクリプスの攻撃を受けたところまでしか、覚えてなくて……」
    「イクリプスか。そういう能力を持っているタイプ……」
    「ああ、いたな、そんなの」
    「ちゃんと回収できたの、三年くらい前だったっけ……じゃあ、まだ現役だね」
    「あ、あの……」
     また自分たちだけの話を始めそうなあちら側の二人に、グレイは慌てて声をかける。もうこの二人のやり取りを見るだけで精神を消耗しそうだ。
     三人分の視線が向けられて、今すぐ逃げ出したい気持ちになりながらも、必死に言葉を紡ぐ。
    「……や、やっぱり、ここは、パラレルワールド、なんじゃ……」
    「え?」
    「……どうしてそう思う」
    「だ、だって……」
     驚いて目を丸くするあちらのグレイと、何かを探るような目を向けながらも、意外にも静かに問い返すあちらのアッシュ。顔の作りが威圧感があるからどうしても怯んでしまうけれど、いつでもグレイに当たりが強いこちらのアッシュに対するよりは、少しだけ、ほんの少しだけ話しやすい、かもしれない。
     それでも、流石に言いづらい。本人が目の前にいるのだ。いや、きっと彼だって同じ気持ちだから、臆する必要はないのだろうけれど。
     意を決して、口を開く。
    「アッ……シュ、と、付き合う、なんて……」
    「信じられない?」
    「……はい」
     もごもごと言うグレイに、あちらのグレイが補足してくれる。
    「も、もしかして、アッシュにいじめられてない、世界なのかな、って……」
     そんな世界があるのかわからないけれど、それ以外に納得のいく答えが見つからない。
     ほとんど縋るようにして自分の考えを述べたグレイに、あちらのグレイが少し困ったような顔をする。
    「……ううん、違うよ」
     ゆるりと首を振り、あちらのグレイは向かいに座る自分側のアッシュを見て、グレイに視線を戻した。
    「僕は、アカデミー時代、アッシュにいじめられてた」
     す、と上がった手が、前髪をかき上げて額を晒す。そこには、グレイの額にあるのとそっくり同じの傷痕があった。
    「この傷を見せれば、何よりの証拠になるかな?」
     言って、困ったように眉を下げて微笑む自分と同じ顔の男に、グレイの混乱はさらに極まる。
    「っ、じゃ、じゃあ、なんで……!?」
    「……まあ、色々あったんだ。あんまり詳しく言うと、よくないかもしれないから、多くは教えてあげられ
    ないけど」
    「……しんじ、られない」
     うそだ、どうして、と、理解を拒絶するグレイに、あちらのグレイは苦笑するばかり。その余裕がまたこちらの気持ちをざわつかせて、グレイは一向に落ち着けない。
     埒のあかないやり取りをするグレイたちを黙って見ていたあちらのアッシュが、突然立ち上がる。
    「わっ……」
     ぐい、と腕を掴まれて引き上げられたあちらのグレイが、戸惑いの声を上げてあちらのアッシュを見つめる。
    「アッシュ、なにするの?」
     至近距離に迫るアッシュの顔に、驚きながらも嫌がる素振りも怖がる素振りも見せないあちらのグレイ。こっちは、同じ顔をした二人が物理的に距離を縮めるのを見るだけで背筋が凍っているというのに。
     流石に怪訝そうな顔で警戒を始めたこちらのアッシュと、驚きを通り越して怯えるグレイに構わず、あちらのアッシュの手が、腕の中にいるグレイの頬に触れる。
    「どうしても信じられねえなら、見せるしかねえだろ」
    「え、ちょっとまっ……んっ」
     展開についていけないグレイは、そのまま流れるように始まったキスからも、目を逸らせなかった。
    「ん、んっ……だ、めっ、んん……っ」
     目の前で繰り広げられている光景が、信じられなかった。
     アッシュと同じ顔をした男に、自分と同じ顔をした男が、キスをされている。情熱的に。
     後頭部に添えられた右手と、腰を抱く左手。
     くぐもった甘い声と、淫らな水音。
     これが夢なら、間違いなく悪夢だ。
     真っ青になったグレイが、口を押さえてふらついたその時だった。
    「いい加減にしやがれ!!」
    「っ……!?」
     部屋が揺れるほどの怒声が響いて、ほとんど意識を飛ばしかけていたグレイは大きく体を震わせた。
     反射的に向けた視線の先には、怒りに顔を赤くして荒く肩で息をするあちらのアッシュがいた。いかにも高級そうなソファを蹴倒して、今にも飛びかかりそうな体勢で二人を睨むその姿は、かつてないほどに怒りを湛えていて、普段だったらとっくにジェットに交代しているくらいに恐ろしいのに、なぜか、頼もしくすらある。
     口づけを解き、しかしアッシュの腕の中にいたあちらのグレイが、少し上気した顔を気まずげに歪めて、アッシュの胸元に手を置いてぐいと押す。
    「……アッシュ、今のは僕たちが悪いよ」
    「あ? いつまでたってもうだうだ信じねえこいつらが悪いだろ」
     押しのけに逆らわず離れたあちらのアッシュが不満げに言うのに、あちらのグレイが咎めるような目を向けた。
    「でも僕たちだって、五年前の関係を思えば、とてもじゃないけど信じられない気持ちはわかるでしょう?」
    「知らねえな」
    「もう……」
     窘めるグレイと、知らん顔をするアッシュ。そんなやり取りは、つい今しがた行われた生々しいキスシーンのせいで、余計に親しげに見えて、グレイはソファに座り込んだまま、意識を手放さないようにするのが精いっぱいだった。
     確かに、信じさせるのには有効だっただろう。アッシュとグレイの関係性において、誰かを騙すためにあんなキスをするなんて、それこそありえない。
     だが、動きようのない証拠を突きつけられたところで、それを受け入れられるかどうかは別の話だ。
     目眩と吐き気で、目の前が滲む。
    「クソ!」
    「ひゃっ!?」
     心臓の辺りを押さえてどうにか息を整えていたグレイは、突如響いた怒声と騒音にびくりと飛び跳ねた。
     見上げると、いらだちと、混乱と、そして、どこか苦しげな表情を浮かべたアッシュが、ソファの間に置かれたローテーブルを蹴とばしたところだった。
     全身から怒気が沸き上がるのが目に見えるほどの激情に、体が竦む。さほど驚かずにアッシュを見るあちらの二人を睨み、次いで、涙を浮かべて震えるグレイを見たアッシュが、ぐしゃりと顔を歪めた。
    「意味わかんねえんだよ、テメェら!」
     叫ぶように怒鳴ったアッシュは、その場を飛び出した。



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    さわら

    DOODLE続くかもしれないし続かないかもしれないアシュグレ。
    グに気持ち悪い!って拒絶されてほしい~~
     はじめに、耳を疑った。
     次に目を疑った。
     最後に夢かと疑った。
     しかし、疑おうとも否定をしようとも、胸にせり上がってくるものが現実だと訴えている。
     頭の中では耳鳴りのようにぐわんぐわんと煩く響く音が鳴って、視界が右も左も上も下もわからないほどにぐにゃぐにゃと捻れて。
     自分が果たして立っているのか、それとも座っているのか曖昧になっても、男の声だけははっきりと聞こえた。
     グレイ・リヴァースをそんな状態にした男の声。
     アッシュ・オルブライトの声。
     今でも怒鳴られれば竦み上がってしまう、芯に深く突き刺さって抜けない棘のような、声。それが、今は――。
    「グレイ」
    「……っ」
     やめて、と耳をふさいで叫びたくなった。実際には声にもならない。
     いつもは人を嘲笑するように『ギーク』と呼ぶくせに。
     なんで。
     どうして。
     そう声にしようとしても、音にならない。はくはくと口を開閉させるばかりにしか。
     一歩近づくアッシュに反応するように、緊張に強張った身体が反射的に後退る。アッシュが近づいたぶんだけ自身の身体も動いて、それを繰り返して。とうとう背中がベランダへと続く窓ガラスへと当た 1513