第8回 身長 ラーヒュン1dr1wr「もうすぐだ」
ヒュンケルの案内で、ラーハルトは地底魔城の跡地へ向かっている。正確にはそのほど近くにあるという洞穴へだ。
火口の近くは草木の一本もなく、岩ばかりが薄い月明かりに照らされている。
「こんな所に本当に居るのか? 妖精が?」
「どうだろう。かなり昔のことだからな」
幼い日のヒュンケルはある夜、城を抜け出したのだそうだ。どうしても星というものが見たかったらしい。
「暗い空で無数にキラキラしていてな。夢中になった。するとそこへ妖精が現れたのだ。そいつもキラキラ光っていたから、オレはてっきり星のひとつが降りてきたのだと思った。それは先導するように低く飛び、洞穴へ入っていった。追いかけたら向こう側には別の世界が広がっていて、森だった。似たような光がたくさん居て、あれやこれやと話しかけられたのだが、オレは途中で泣いたのだろう。王と会うことになった。王は『イタズラ好きが君を連れてきてしまったから侘びに何でもひとつだけ叶えてやる』と言った。オレは父さんに会いたいと願った」
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