一〇月三一日の正午過ぎ、快晴ではあるが風の冷たい日だった。
稲刈りを終えて土が剥き出しになった田んぼを見下ろし、真人はずきずきと痛む頭を押さえ、盛大にため息をついて途方に暮れていた。
本当なら今ごろ後輩の吉野を引き連れてデートをしているだろう与と三輪をからかいに行き、渋谷のハロウィンイベントで大騒ぎしていた筈だった。何が楽しくてこんなド田舎の真ん中でゲロ吐きながら踞ってるんだろう……と萎れる真人の心中に保護者でありゼミ教授の漏瑚が「調子に乗って飲みすぎたお前が悪い」と正論を言ってくるのでますます具合が悪くなった気がする。あまりに理不尽だがツッコミはいない。
誰かに迎えに来てもらおうにもスマホは電池切れなのか真っ暗な画面のまま動かず、ならば駅かバス停を探して知ってる場所まで帰ろうにも、田んぼと古い家がまばらにしか見当たらず、だめ押しにどこかにカバンごと財布を落としたようで、現在の真人の装備は吐瀉物まみれのジャケットとTシャツ、ジーンズに動かないスマホという明らかに詰みの状態だ。
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