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    帽子屋(とある星の語り部)

    うちよそは、穏やか雰囲気で。
    うちの空は、ほんのりビターな雰囲気で。

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    POIPOI 26

    本編は柴郡の話。
    幼年期:雀時代
    過去編が…ながいデス

    Ⅰ:暴風域の星の子最初の記憶は激しい風の音。
    体に響く『ゴウゴウ』という音を、まるで嘆き哀しむ叫び声に似ていると思ったのは何時の頃からだっただろう。

    次に覚えているのは、ソレに差し出された蝋燭の火。現れたソレと同じ姿をした星の子が仮面の下の目を見開き、ソレを突き飛ばして逃げ去る後ろ姿。突き飛ばされた衝撃で落ちたホームと呼ばれる場所の池の中。ソレは、水鏡に写る姿を見つめ不思議に思ったのを覚えている。

    すぐ傍で他の星の子が、自らの赤い蝋燭を相手に近づけ互いを認識し白いキャンドルを交わす。差し出した手を掴み共に飛び立つ姿が美しく輝いて見え、ソレは羨望を覚えた。

    だが。ソレが蝋燭を差し出すと、ある者は叫び、ある者は振り返りもせず逃げ、ある者は侮蔑の目をむけ、ある者はソレを罵り、ある者は石を投げた。

    頭に受けた石の衝撃を最後に、自ら蝋燭を向けることを辞め、求められる炎の揺らぎを避け、1人になった時。ようやくソレの中の表現できない様々な感情に気付いた。感情を表現する言葉や単語を知らなかったソレは、誰に教えられた訳でも無く、他の星の子の様子を観察し、各地に点在する神殿や遺跡から文字や言葉を覚えていった。そして、ソレは知った。

    なぜソレを皆が避けるのか。他の星の子にはできる『フレンド』がソレには『できない』のはなぜか。

    あまりに無情とも言えるその理由に、今なら声を張りあげ言い出した者に掴みかかって抗議しただろう。しかし、当時のソレは『怒りの感情の表現方法』を知らず、己の中で理解できなかった原因を知れたことを憐れにも喜んでいた。

    忌み嫌われる理由は、ただひとつ。
    《暴風域生まれの星の子》だから。

    変えようも無い理不尽な事実が、忌み嫌われる理由だった。

    偶然にも知ったのは、雨林の神殿で見つけた誰かの手記。書かれていた星の子の成り立ち。

    【この世界に生まれる星の子は、かつて天より降り立ち繁栄を極めたが《なんらかの理由》で衰退し滅んだ精霊を再び天に還す為、滅びを嘆く大精霊の祈りのもとメガバードによって《新たに生み出された生命体》。
    星の子とは、姿形も無い魂のみの存在。しかし世界に降り立つ際、大精霊の加護が残る大地を通る事で魂の器を得る。過去に生きた精霊の記憶を見ることで『感情』を知り転生することで『自我』を持ち、初めて意思を持った"生命体"としての星の子が誕生する。

    しかし、大精霊の加護を持たない"暴風域"を経由し大地に降り立つ存在がいる。
    大精霊や精霊の救いを求める祈りからメガバードによって大地に降り立つ星の子が、『祈るもののいない大地』に生まれることは『ありえない』。望まれずして生まれ、得るはずのない魂の器を持った存在が果たして星の子と呼べるのか。】

    器の根源たる加護を持たないソレらは、加護を得て器を得た星の子たちからは異質に見えていたのだ。姿形は同じでも何かが違う相手を理解できず、畏怖し拒絶していたのだ。

    事実を知ったとき、加護を得ずに存在し続ける己に興味が湧いた。純粋な好奇心だった。

    ソレは先ず、己と『同じ存在』を探した。
    しかし、見つからない『同じ存在』。

    書庫の、かつて資料室だったであろう崩れた室内で書物から同じ存在を探す方法を血眼になって探していた時。1人の星の子が近づいてきた。

    その星の子は、蝋燭を差し出すこともせず、ただソレに対して「此方へ来い」と身振り手振りで外へ連れ出した。

    油断していた。

    その星の子は、暴風域のホームと呼ばれるエリアへ続く通路を開けると、ソレを通路から蹴り出し扉を閉める瞬間に叫んだ。

    「なりそこないが俺たちと同じ星の子気取りか暴風域のバケモノが出てくるな‼︎」

    ホームに続く階段に体を打ちつけ、痛みに耐えるソレに投げつけられた言葉。
    ソレは、痛む体を引きずってホームの焚き火に近づき傷を癒した。

    「ねぇだいじょうぶ」

    いつから居たのか、星の子が声をかけてきたがソレは返事をせず相手を感情の無い目でじっと見ていた。

    「しゃべれないの」
    「…………」

    「なまえは」
    「………」

    「わたしは、アレだよ」
    「………」

    「みんなが、アレてよぶの…だから、なまえ アレなんだとおもうんだ」
    「………ソレ」
    「えっ」
    「みんな、ソレて呼んでた。」

    「そっか!ソレ、よろしくね」
    「…アレは…暴風域の子」
    「そうだよソレは?」
    「…暴風域だよ」
    「いっしょだね♪」

    ようやく出会った『同じ暴風域の子』
    ふわふわした雰囲気のアレに、ソレは痛む体を抑えて尋ねた。

    「どうして、アレはここにいるんだ他の子は、どこにいるんだどうして外にいなかったんだ」

    世継ぎ早に聞くソレに、アレは答える。

    「しらないのしかたないなぁ〜おしえてあげる『ぼうふういきのこ』はねながく いきられないの!」

    「……え?」

    「えっとね?『ぼうふういきのこ』は、『かご』をもたないで うまれる『バケモノ』だからカズもすくないの。でねだ〜れも、たすけてくれないし、おしえてくれないから ながいきが できないんだよみんな いなくなるの。そとにでたら…しんじゃうよ…ふふ‼︎あははははは‼︎」

    アレの言葉に絶句しソレが動けないでいると、アレは急に笑い出し暴風域の扉を飛び越え、扉の向こうへと消えていった。微かに遠くで、暗黒竜の咆哮と羽根の割れる音が聞こえた気がした。
    いくら待っても、アレが戻ってくることは2度となかった。

    ーーーーーーー

    後に、ソレは知る。
    暴風域生まれが、圧倒的に数が少ないことを。
    忌み嫌われる為、生きる術を『知る』ことができず『転生』することさえも知らずに短い期間に死んでいくことを。
    たとえ生き残っても不当な扱いを受け続け、加護を持たないことで『何かが欠けた』存在であり、何かを欲する『渇き』を持つが故に、精神が不安定となり最後は狂い死ぬと言われていることを。『何か』を求め、他の星の子に手を伸ばし彷徨う姿が侮辱と畏怖の対象となり、狂った星と呼ばれる所以。

    故に、
    暴風域生まれは「星狂いのバケモノ」と呼ばれる。
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