恋とは、どのような 俺には、絶対的自信があった。
封印した魔神は数しれず、どれだけの民を救ったかもわからない。魔神でありながら民の信用を得、契約を以て契約の通りに責務をこなす。傲慢だと言われても、俺の所業は書物に多く残されており、そのほとんどが事実だ。今思い返すと、若かりし頃の勇ましい記録も残っており、燃やしてしまいたいと思ったこともあるが、まぁいいだろう。
それはさておき。俺は最近気づいてしまったのだ。魈のことを好いているのだと。
神であった頃も気には掛けていたものの、それ以上の気持ちはなかったように思う。凡人としてゆったり生活していると、なぜだかよく足が望舒旅館へ向くようになったのだ。魈がいない時もあるが、見つけると自分の心が嬉しく思っているのを感じる。何か話がしたくて、要点もない話をして引き止めてしまうこともあった。魈は困惑の表情をしていたものの、決して嫌な顔はしていなかった。そればかりか、俺が声を掛けるといつも少し慌てだして、俺が訪れた真意をいつも探ろうと必死になっている。可愛らしいことこの上ない。魈は中々俺に近寄っては来ないが、俺から行くと少しだけ嬉しそうな顔をする。俺にはわかる。魈も俺のことを好いているのだと。思い返せば思い当たる節がいくつもあった。間違いないと思っていた。
3857