気付いたときには落ちている 同じ学年でも、別のクラスにやってくると、落ち着かない気持ちになるのは何故なのだろう。
着いてきてと頼まれて、他クラスの教室の前までやってきた。入口のところで中を覗き、目的の人物を探す。
「いる?」
「いない」
「あれ、どこ行っちゃったんだろね。トイレとか?」
「うーん、どうだろ……」
出直した方がいいかな、と友達がつぶやいた。私は、もう一度教室の中を見回し、目立つ赤い坊主頭がないのを確認すると、「もうちょっとなら、時間あると思うけど」と返す。
友達の手には、真っ赤なラッピングの施された手のひらサイズの箱がある。中身は言わずもがな、チョコレートだ。
授業と授業の合間の短い休み時間。このタイミングなら、勢いで渡せる気がするという友達に半ば引き摺られるようにして、私はここまでやってきていた。
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