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    ならん

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    ならん

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    仙道さんの夢
    出会うところから恋に落ちるまで

    #SD夢

    はじまり 水族館だという建物の前を通り過ぎ、海の家が立ち並ぶ間を縫うように抜けると、目の前には海が広がっていた。砂浜にスニーカーが埋まる。鼻をつく磯の匂い。そういえば、この匂いがするのは美味しい魚介が取れる場所だけなのだとか。
     季節外れの海に、人気はほとんどなかった。きっと夏になれば、この砂浜はカラフルな水着を身に着けた人々で埋まるのだろう。
     私は風に髪が乱されるのを手櫛で押さえながら、のんびり海の方へ歩いて行った。途中から、靴は脱いで手に持つことにして、砂の感触を楽しむ。海は思ったより青くなかった。けれど、南国の海というわけではないのだから、仕方のないことなのだろう。
     波際まで辿り着く。私は寄せては引いていく波を興味深く眺めつつ、ギリギリ濡れないところを撫でるようにして、さらに足を進めていった。目的地は先ほど目に入った赤いなにかだ。
     船着き場の先に、ちんまりと、しかししっかりとした存在感を持っている。なんだろう。見たことのないものだ。
     気になる。というのが、今の私の原動力だった。私は、砂浜の終わりで砂まみれの足を適当に払い、靴下も履かずにスニーカーをつっかける。
     そうして細く伸びた船着き場を辿っていく途中に、彼はいた。
     まず目に入ったのは、特徴的な髪型だった。そして、シャツにチノパン、草履といったラフなスタイル。釣り糸を海に垂らして、けれど水面を見るでもなくどこか遠くを見ているような、そんな横顔。
     その人は、その身一つで係船柱に座っていた。釣果を入れるバケツも、クーラーボックスも見当たらない。それがどうにも不思議に思われて、つい必要以上に見つめていると、不意にその人が振り向いた。
    「ん?」
     ばちっと火花が散ったみたいに、目が合った。私は思わず背筋を伸ばして、「あ、ええと」と何を言うべきともまとまらない声をこぼす。
     まっすぐ、人のことを見る人だ。その瞳は静かで、凪いでいて、何故か私の心まで落ち着かせるみたいな、そんな効果があった。
     そうして、何か言わなければと開いた口から漏れたのは、「釣れますか」という面白みも工夫もない一言だった。
    「全然」
     その人は、そう言って少し笑った。その顔にはずいぶん親しみがあって、私のとげとげしかった胸のうちが和らいでいく。
     無意識に一歩を踏み出していた。そのことに気付いてからは、自分の意思で彼の傍まで歩く。
     立ったままの私と彼の視線の高さは、それほど変わらない。座っているから分かりにくいが、きっと背が高いのだろう。
    「ぜんぜん、釣れないんですか」
    「うん。でも、もう少ししたら釣れるかもしれないし」
     今の餌がなくなるまではこうしてるつもり、とその人は言った。私は「へぇ」と相槌を打って、隣の柱に腰を下ろす。釣り糸の先を見下ろすが、特にこれといった姿は見えない。これで本当に釣れるのだろうか。
    「釣り、興味あるの?」
     声をかけられて、振り向く。彼はもう、私の方を向いてはいなかった。だから、私もまた海に視線を戻して、「釣りというか」と口を開く。
    「誰かが釣りをしてるのを、見るのが好きで」
    「へえ」
    「前住んでたところは沢が近くにあって、クラスメイトとかがしょっちゅう来てて、釣れたら焼いて」
     食べたりとかして、と続けようとした言葉を、私は飲み込んだ。恥ずかしくなったからだ。
     突然現れて、断りもなく近くに座ってきて、いきなり身の上話みたいなことをする女、なんだこいつと思われたって仕方ない。私は顔を赤くして、俯いた。
     どうしてこんなことを初対面の人に話せてしまったのか、私には分からなかった。ただ、この人の穏やかな雰囲気にあてられていると、何を話しても川のように流してくれるだろうと、そんな勝手な期待が浮かんでくる。
    「食べるの?」
    「え」
    「あれ、違った?」
     焼いたら食べるもんだろうと思ったんだけど、とその人は呟いた。私が顔をあげると、今度は視線が絡んだ。
     少しでも、向けられるものの中に嘲笑や揶揄が浮かんでいたとしたら、私はもう何も言えなかっただろう。が、彼はどこまでもフラットに、最初に私を見たのと同じ瞳で私を捉えていた。
    「そ、うです」
    「いいね。じゃ、釣れたら焼いて食べてみるか」
     彼は笑って、さあてどうかなと釣竿を引いた。リールを回し、慎重に引き上げていくのを、私も固唾をのんで見守っていた。傍から見る限り、糸は獲物がかかっているとは思えないくらい静かだ。けれど、私は海で釣れるもののことを知らないし、もしかしたら何かが――。
     つ、と水面に顔を表したのは、アルファベットのJの形をした釣り針だった。
     私たちはほとんど同時に顔を見合わせて、吹き出す。
    「こ、この流れなら、釣れてるんじゃないんですか」
    「いやあ、オレも、もしかしたらいけるんじゃないかと思って、ハハ」
     不思議だった。出会ってまだほんの十分ほどの人と、こんな風に笑い合うことができるなんて。新しいクラスの人たちとは、まだまだ打ち解けるにはほど遠い状態だというのに。
     私たちはひとしきり笑い合った。そして、波が引いていくように一瞬沈黙があって、彼が口を開く。
    「そろそろ行かないとな」
    「行くって?」
    「部活」
     彼はひとつ、伸びをして立ち上がった。首をめいっぱい逸らしても辛いくらいに、背が高い。
     部活って何の部活だろう、と疑問を抱く。けれど、それは踏み込み過ぎているような気がして、言えなかった。
     彼は釣り竿を片手に、足元に置いてあった小さなプラケースをパンツのポケットに捩じ込んで、「じゃあ」と声をかけてくれた。私が返事に迷って、「はい」と返すと、彼は何か考えてから、また口を開く。
    「土日のこのくらいの時間なら、大抵いるから」
    「え、えと?」
    「よかったら、来てね」
     じゃあまた、と彼は今度こそ片手をやる気なく振って去っていった。私はその背中が小さくなるまで、見つめたまま呆けていた。
     なんだったんだろう。誘われたんだろうか。どうして。そんなことを考えながら、波の音を聞いていた。
     肌が潮のせいでベトつく。髪も軋んでいるし、海風のせいで身体も冷えている。
     しかし何故だか、私は楽しかった。また来てもいいのだと、心が華やいだ。少なくともあの人は、私の存在を許容してくれている。それが嬉しかったのだ。
     そうして、あの赤い何かの正体を確かめそびれたと気付いたのは、軽やかな足取りで帰宅してからのことであった。
     
     ◇
     
     それから知ったこと。名前――仙道さん。同じ高校の二年生で、つまり先輩。バスケ部。いつもは、私たちが出会った船着き場から、川を渡ったもう少し先のところで釣りをしていること。それだけ。
     同じ高校とはいえ、学年が違うと関りなんてほとんどない。帰宅部の私に、部活動云々のニュースが伝わることはまずありえなかったし、そもそも学校では馴染むのに必死だった。
     だから私は、学校で仙道さんを積極的に探そうとは思わなかったし、むしろ出会いたくないとすら思っていた。何故なら、学校で会ってしまえば、いよいよ嵌まってしまうと思ったからだ。
     それは例えるなら、生まれたばかりの雛が初めて目にしたものを親だと思うような、お気に入りのおもちゃを取られたくないと意固地になる子供みたいな、そんな感情だった。
     休日の朝、船着き場に行けば、穏やかに迎えてくれる人。私の話を否定するでも肯定するでもなく、聞いてくれる人。そんな人がいるということを、他の誰にも知られたくない。
     恋とは、違っていると思う。
     あれはもっと、苦しくて胸が痛くなるような感情だ。今の私の中にあるものとは、どう考えても違う。しかし、私にとって、仙道さんとの時間は特別で。私は私なりに、あの時間を大切にしたいと思っている。
     そういえば、仙道さんと出会ったあの日、私が目指したあの赤い物体は灯台だった。あのときは気が付かなかったけれど、向かい側に白い灯台もあるらしい。
     けれどもう、私があの船着き場に通うことは、ほとんどない。私がいつも足を運ぶのは、灯台のない、仙道さんが足繁く通っているという漁港だ。
    「仙道さん」
    「ん、おはよう」
    「おはようございます」
     挨拶もそこそこに、釣竿が差し出される。出会って何度目かのあるとき、ふと、仙道さんが「釣りができないってわけじゃないんだよな?」と尋ねてきたのをきっかけに、その次から用意されるようになった、私用の釣竿だ。
     子供でも扱えるほど、細く、軽い。曰く、漁師のおじさんに貸してもらったのだとか。餌も余ったものを少しだけ分けてもらっているのだそうで、仙道さんが使っている餌は生き餌と呼ばれる類のものだ。見た目は大方ミミズに近い。
    「釣れましたか?」
    「釣れてると思う?」
    「全然、まったく」
    「あっさり言うなあ」
     仙道さんはそう言って笑って、私の釣竿に餌をつけてくれた。自分でも何度かやってみたのだけれど、どうしても触るのに抵抗があるせいで、どうにも上手くつけられない。
     私が小さく「カワゲラなら触れるんだけどな」とこぼすと、仙道さんは「カワゲラって?」と耳を傾けてくれる。
     私が前に住んでいた地域では、釣りと言えばカワゲラが餌だった。だいたい、水に半分くらい浸かった石をひっくり返せば、そこにひっついているのがそれだ。見た目は虫に近い。
     私が宙に絵を描き、言葉を尽くして説明したのを聞いた仙道さんは、「そっちの方が苦手って人も多そうだけどな」と言ってまた笑った。
    「……今さら聞くんですけどね」
    「うん?」
    「釣れたことあるんですか?」
    「あるよ」
     何回か、と仙道さんは続けた。私は「ふうん」と相槌を打って、心の中で(何回か)と反芻した。そこそこの頻度で釣りを嗜んでいるにしては、心もとない返事だと言わざるを得ない気がする。まあ、それを突っ込むことの無意味さはよく理解しているので、何も言うことはないのだけれど。
     私たちは互いに釣り糸を垂らして、じっと海面を見つめていた。波が堤防にぶつかり、複雑な砕け方をしている。こうして浮きが細かく上下に揺れるのは、必ずしも獲物がかかったからではない。
     川釣りだと、川の流れに沿って餌を動かしたりする。大きな岩の影なんかで休んでいたりもするので、そこを狙って釣り糸を投げ込むこともある。が、海釣りは基本的に撒き餌をしたりして、魚たちを釣り場に集めるのが主流のようだった。もちろんそうではない釣り方もあるのだろうが、私は知らない。
     そうして、ほとんど会話もないまましばらく経ったころ。不意に仙道さんが、「そういえば」と声をあげた。
    「来週の土曜日、空いてる?」
    「え。……空いてます、けど、どうしたんですか?」
    「もし、興味があればでいいんだけど」
     試合あるから見に来ない? と仙道さんは言った。いつもどおり、まっすぐこちらを見て、凪いだ瞳で。
     私は数秒固まって、あたりを見回して自分しかいないことを確認してから、「私が?」と自分を指さして問いかけた。単に、信じられなかったからだ。今まで仙道さんの部活の話なんて、ほとんど話題にも出なかったのに。
     興味があるかないかと言われれば、ある、と答える。いつものんびり穏やかな空気を纏った人と、勝つか負けるかというスポーツというものが結びつかない。
     だから、気になってはいた。しかし、マネージャーというわけでもなく、何かしら特別な関係でもない私が、試合を見に行くなんてことをしていいのかが分からない。
     私がなんと答えたものかと言い淀んでいると、それまで一度だってうんともすんとも言わなかった釣竿の先が、クンッとしなったのが見えた。
    「え」
    「あ」
     私たちは同時に声をあげて、私は慌てて釣竿を握り直す。ぐっと水中に引き込もうとする何かが、確かにこの竿の繋がった先にいる。リールを巻こうとしても、かたくてなかなか巻き取れない。四苦八苦する私を見かねて、いつの間にか背後に回っていた仙道さんが、私の手ごと釣竿を握った。
     どくん――。
     子供と大人の手かな、と思うほどに手の大きさが違うことを、私は初めて自覚した。自分以外の体温と息遣いを背後に感じて、落ち着かない。
    「ゆっくり、落ち着いて」
     耳元で、低く深い声がする。私は一度目を閉じ、煩い心臓を落ち着けるように深呼吸をして、慎重にリールを巻き上げていった。
     水面に、鈍く煌めく何かが見える。想像より、大きな獲物がかかったようだった。
    「あと、ちょっと……あっ」
     突如として抵抗がなくなった。ぶつん、と何かが千切れた感覚があったのを、遅れて、逃げられたのだと理解する。
     リールを巻きとって確認すると、見事に釣り針がなくなっていた。ちょっとやそっとじゃ千切れないはずの釣り糸を引き千切るなんて、いったいどれほどの大物だったのか。
     私が呆けて後ろの仙道さんを見上げると、仙道さんは海の先を確かめるように目を細めていた。それから私の視線に気が付いたようにこちらを見やり、「惜しかったな」と柔らかく笑んだ。
     私はどぎまぎしながら、何とか口を開く。
    「ほんとに釣れるとは、思ってませんでした」
    「言っとくけど、釣れてないからな。逃げられただろ」
    「海釣りは素人なんです。……次はもっと落ち着いてやります」
    「次がいつになるやら」
    「仙道さんにだけは言われたくないです」
     私がそう返すと、「厳しいなあ」と仙道さんは笑った。そして、気を取り直したように、「で?」と首を傾げる。
    「『で?』って……さっきのやつのことですか?」
    「そうそう」
    「仙道さん、興味があったら来てって言ってたじゃないですか。今答え出せってことじゃないと思ったんですけど」
     私が生意気にもそんなことを言うと、仙道さんは珍しく目を丸くした。屈みこんでいた体勢を戻し、片手で口元を覆って、「確かに」と呟く。
     自分でも想定外だ、と言わんばかりのその様子に私は面食らった。なんとなくだけれど、つい口に出してしまったなんてこと、この人には似合わないように思われる。
     私が口を噤んでいると、仙道さんはちらと私を見て、「迷惑?」と問いかけた。迷惑ではない。むしろ嬉しい。ただ、素直にそう言ってしまえるほど、私は子供ではない。
    「……迷惑っていうか……」
    「うん」
    「……知らない人ばっかりだから、抵抗があるだけで、別に」
     行きたくないわけじゃない、と、私は小さく小さく口にした。視線は地べたへ、軽く開いて座っていた膝はきちんと揃えて、両手をぎゅうと握る。
    「……そっか、分かった。じゃ、行けそうだなと思ったら来てよ」
     遅れてもいいから、と仙道さんは言った。まるで頭を撫でるみたいな、懇ろな声音だった。私はその響きにつられるように頷いて、「はい」と答える。仙道さんの顔は、まだ見られそうにない。
     仙道さんは十秒ほど、そんな私を見下ろしていたようだった。けれどすぐに気を取り直したように、「じゃあ、残りも釣るか」と言って、隣に座り直す。私は、何事もなかったように釣りを続ける仙道さんを何度か横目で見て、残りは海を眺めていた。
     
     ◇
     
     そういえば時間を聞いていなかった、と気付いたのは当日の朝だ。遅れてもいいと言っていたし、仙道さんがいつも部活に向かう時間から考えて、それよりも後に行けばいいかとあたりをつける。
     私は迷った挙句、私服ではなく制服で学校へ向かうことにした。制服なら、部活にやってきた他の生徒に紛れて目立たないと考えたからだ。
     休日に制服へ袖を通すのは新鮮で、親からも補習か何かだと声をかけられた。私はそれに曖昧な返事をして、平日よりも遅い時間に家を出る。
     少し高い太陽の光が、すっかり見慣れた道に注いでいた。時間帯が違うだけで、同じ場所でも違う場所のように感じられる。きっとこの先、季節が移ろうたび、私は同じことを思うのだろう。
     恐る恐る校門をくぐる。学校のあちらこちらから人の気配がしていて、そこここから人の声がしていた。当たり前のことだが、普段休みの日に学校へ来ない私にとっては、新鮮だった。
     一度止まっていた脚をふたたび動かして、私は体育館へと向かう。校舎のどこかから、金管楽器の音色が響いてくる。その音は力強く、しっかりと、怖気づきそうな私の背中を押してくれた。
     体育館の近くまで来ると、ボールが弾む音や、人が駆ける音、靴と床が擦れる音なんかが聞こえてきた。声もする。なんと言っているかまでは、聞き取れない。
     私はここまでやってきて、なんで来ちゃったんだろうな、なんて考えていた。好奇心だけで来られるのは、ここまでのようだ。私は風取りの為か、開け放たれた両開きの扉の斜め後ろで、耳を傾ける。
    「仙道さん!」
     誰かの声が響いてくる。誰かが呼んでいるのは、いつも港で顔を合わせるあの人のことだ。わっ、と体育館が沸いたのが分かる。何故か、心臓が大きく跳ねた。
     そこから先は、もう無意識だった。
     勝手に足が動いて、私を先へ連れて行く。一歩、もう一歩。またひときわ大きな歓声が上がる。聞こえるのは、バスケットボールをしている音だけだ。
     階段を上る。足が床についている感覚が遠くて、現実味がない。二階まで上がりきったところで、あたりがグッと明るくなった。
     このとき目にした光景を、きっと私は一生、忘れることはないのだろう。
     一人を躱し、もう一人の上から、華麗にボールをリングに叩きつけた仙道さんは、仲間に声をかけたあと、ふと視線をこちらに向けた。
     ふっと真剣な表情が解け、柔らかくなる。来たんだ、と言われた気がした。
     私は思わず、胸に手を当てる。ぎゅうと引き絞られるように、そこが痛んだ。
     コートの上の仙道さんは、私の全然知らない顔をしていた。ど素人の私でも分かる。仙道さんはものすごくバスケが上手で、チームで頼りにされていて、何よりかっこいい。
     体育館に女の子の歓声があがる意味が分かる。この人たちは、もっと前からこんな仙道さんを知っていて、だからこうして応援に来ているのだろう。
     だけど。でも。のんびりと釣れない釣りを楽しむ仙道さんを知っているのは、この中で私だけだ。試合があるから見に来ないかと直接言われたのだって、たぶん私だけだ。
     そんなことを無為に思ってしまう状態を、一般的になんと言うのか、私は知っている。知っているから、困ってしまう。
     私はこんなつもりで、今日ここへ来たのではなかったのに。
     次、どんな顔であの船着場へ行けばいいのだろう。仙道さんは、いったいどういうつもりで、私のことを誘ったのだろう。
     飛び出しそうになる心臓をなんとか抑えながら、私は試合が終わるまで、仙道さんから目を離せないでいたのだった。
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