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    針🐝

    @harimari0922

    龍ファク激ハマり中
    なんでも好きですがカイクラ中心です

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    針🐝

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    なんか湿度高めのやつ書きたくて書いたら思いのほか暗くなった。
    水不足の時の話です。
    クラマも弱い部分あるけど、カイ自身もふとしたときに自信のないようなことをポロっとこぼすのが意外だったので。
    そんな弱い2人の部分が書けたらいいなと。
    こういう弱さを知ってアズマの国を救った後平和に暮らしていってほしい。

    #龍ファク
    #クラマ
    #カイ
    chi
    #BL小説
    blNovel
    #カイクラ

    湿っぽいやつカイ…お前に会うのが、怖かったんだ──

    秋の里に、俺は台風を呼んだ。
    里民たちが大切に育ててきた田畑も家も、風と水に流された。
    秋の神として深刻な水不足を解消するため……とはいえ、俺は“壊す”という選択をしてしまった。

    そして、奪ったんだ。
    大切なものを──

    ずっと大切にしてきた──その民たちの信頼を。

    俺は、信じてくれていたはずの人たちから、見限られた。

    自分で選んだ結果だ。
    だから責任は受け入れる。後悔もした。
    けれど、他に手立てはなかった。
    俺には、他のやり方が思いつかなかったんだ。


    ……悩んでいたとき、カイはずっと俺のそばにいてくれた。
    あいつなら、きっと力になってくれただろう。

    ……でも、俺は相談しなかった。……いや、できなかった。


    ここは俺の里だ。

    責任は、俺ひとりで負うべきだと思っていた。
    ……もしカイまで巻き込んでしまったら、
    アイツまで里民たちに白い目で見られる
    そんな未来は俺がいちばん見たくなかった。


    せっかくカイが気に入ってくれた秋の里を、
    めちゃくちゃにした俺を見たら──

    きっと、カイにも嫌われてしまうかもしれない。

    あいつにまで嫌われたら、俺は──




    (カイ)
    ウラに負けて逃げてきたこの場所は、
    俺にとっては、居心地がよくて──気に入っていた。

    俺みたいな者も、黙って受け入れてくれる。
    そんな、優しい里だった。

    ……そんな里に、今、凄まじい風が吹いている。
    木々は薙ぎ倒され、田畑は洪水に流され、
    空は、ただ重く、黒く、沈んでいた。

    「……決めたんだな」

    そう呟いた声は、自分でも驚くほど静かだった。

    クラマが悩んでいたことは、気づいていた。
    どうにか助けてやりてぇって、思っていた。
    けれど──俺には、何もできなかった。
    何も言えなかった。

    だから、あいつも頼ってこなかったんだろう。
    相談なんか、一度もされてない。

    ……根の国から逃げて鬼としてもこんな中途半端な俺じゃ、
    あいつにとっちゃ、頼れる相手になんて見えなかったよな。

    降り続く雨は、冷たいはずなのに、どこか心地よかった。
    まるで、ずぶ濡れのままなら悲しみもバレずに済むようで──
    カイはただ、淀んだ空を見上げていた。

    どこかで──
    クラマは、きっと悲しい顔でこの台風を起こしているんだろう。

    ……その隣に、いてやりたかったな。




    (クラマ)
    どうか、誰も傷つきませんように。
    ……たとえ、それが俺のせいだったとしても。

    雷鳴が響く中、
    クラマはただ一人で祈っていた。

    壊してしまった信頼も、
    手放してしまった温もりも──
    すべて、戻らないと知っていても。

    「きっと、里民は分かってくれる」
    ……そんな都合のいい考えだったんだ。

    祈りは風に消える。
    どこにも届かず、どこからも返ってこない。

    耳を打つのは、容赦ない雨音だけ。

    ──カイに、会いたい。
    会って、慰めてほしいなんて……
    肯定してほしいだなんて、思ってはいけないのに。

    「俺でもそうするぜ」
    「また立て直せばいいだろ! 俺とお前と、里民たちで!」

    ──あいつなら、そうやって、
    軽々しく笑いながら言ってくれただろうな。
    ……その明るさに、いつだって救われていたのに。

    けれど──
    その逆の言葉が返ってきたらと思うと、
    怖くて、会う勇気が出なかった。

    その声が、聞きたいのに、
    もし──

    「なんであんなことをした」と、責められたら。
    「お前のせいで」と、否定されたら。

    ──その瞬間、自分の心が壊れてしまいそうだった。

    怖かった。
    あの明るさが、もしも自分を拒む刃になってしまったら。
    それが、何よりも恐ろしかった。

    数日後水不足は解消された。
    だが、里民たちからは「守ってくれない神」と呼ばれ、
    彼らとの関係も、次第に途絶えていった。

    カイも、もう訪ねては来なかった。

    ……俺が起こした台風は、
    風だけじゃなく、
    俺の心まで──ざわつかせた



    (カイ)
    秋の里に台風が起きた数日後、
    水不足は解消された。
    ──田畑なんぞ、また一からやり直せばいい。
    逆に、水がなけりゃ育ちようもねぇんだから。

    けど、俺は──
    肝心な時に、あいつの支えになれなかった。

    誰よりもこの里を大事にしてきたのは、クラマだ。
    それを、自分の手で壊す決断を……
    たった一人で、させてしまった。

    ……不甲斐なかった。

    なんて会いに行けばいい?
    「すげぇ台風だったな!」
    「大変だったな!」

    ──違ぇだろ。

    クラマに会ったときに
    何を言えばいいのかが分からなかった。
    かける言葉が見つからなかった。
    だから……会いに行けなかった。

    「……俺がなにもできねぇから、
     あいつに全部、一人で背負わせちまった。
     あいつはいつだって、自分のことより人の心配ばっかして……」

    カイは拳をぎゅっと握り、震える息を吐いた。

    「神って……なんだよ……。
     なんで俺なんかに、神だなんてもんをよこしたんだよ……。
     守ってやりてぇ奴すら、守れねぇのに……」




    ──それからまた、数日後。

    カイは、意を決して秋の社へ向かった。

    「おーい、クソ天狗。へこんでんのかぁ?」

    そう呼びかけながら扉を開けると──
    ……そこに、クラマの姿はなかった。

    「……どっか、行ってんのか?」



    しばらく待ってみたが、帰ってこなかった。
    数年たった今でも姿を現さなかった。


    あいつは、もう……
    ここには、いねぇのかもしれない。

    俺が怖がって、
    何も言えなかった──
    ほんの一瞬の臆病さが。

    ……それが、
    もう一生届かねぇ距離を作っちまったんだとしたら。

    取り返しのつかねぇことって、
    こんなふうに、静かにやってくるんだな。

    気づいたときには、
    ただぽっかりと空いた穴が、心に残ってる。



    ──そして、龍星崩落が起きた。




    神威は日に日に薄れていく。
    このままアズマが滅びちまったら──
    クラマには、もう……二度と会えないんだな…。

    秋の里には、あいつがいた頃の風は、もう吹かない。
    それでも何度も社に足を運んだ。

    ある日、棚の奥でふと見つけた箱。
    中には──昔ふたりで遊んだゲームがしまわれていた。

    あの日、俺がふざけて壊した、あのゲーム機も。

    「……なんで、こんなの取ってんだよ……」

    懐かしい、と思った。
    けれど、その感情がひどく苦しくて──

    思い出せば思い出すほど、
    「もう、ここにはいない」ってことを、
    認めさせられる気がした。


    懐かしさなんてクソくらえだ。
    そんなもんにすがったら、もう終わりだろうが──!

    ……そう吐き捨てた瞬間、
    社の中が、いっそう静かになった気がした。

    どこからも風は吹かない。
    ただ、薄く積もった埃が、宙に舞っては、すぐに落ちる。

    ――重い、沈黙。

    誰もいないこの空間に、俺の声だけが滲んで消えていく。
    しばらく、何も言えずに立ち尽くして──
    それから、ぽつりと名前を落とした。

    「……クラマ」

    ただひとつの名。
    耳に馴染んだ、呼び慣れた名だった。

    けれど返ってくるのは、無音だけだった。
    笑い声も、毒舌も、皮肉も──何もない。

    静けさが、残酷なほど澄んでいて、
    その名を呼んだ自分だけが、まるで取り残されたようだった。

    どこにも行けず、
    どこからも来てくれず、
    この場所にあるのは、あいつの不在だけ。

    ──そんなの、認めたくなかった。


    懐かしさに踏み込んだら、戻ってこれねぇ気がした。
    あの日から、ここは──“戻る場所”じゃなくなった。


    あいつと……クラマと、帰ってくる場所だ。
    だから……もう、こんな空っぽの社に用なんてない。

    だから、俺はもう迷わねぇ。
    「次は俺も、一緒に背負う。だから……どこにいたって、必ず見つけ出す。クラマ──お前を、迎えに行く」




    それから50年後──春の里では、ひとりの青年が姿を現していた。
    大地の舞手。

    彼はまだ知らない。
    その小さな舞が、五十年ものあいだ凍りついていた風を、再び動かすことになるとは──
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    1939