「手、出して」
「え? なんで?」
「何でも!」
撮影がもう間もなく始まる。あと少ししたら自分たちの新曲がテレビに映し出されてたくさんの人に届くのだ。
壮五が作曲して、そして、環が初めて振り付けを担当した絆をテーマにした一曲。
「そーちゃんの曲は今日も最高に格好いいです」
手を繋ぎながら環がそう言った。
その声は少しだけ恥ずかしそうで、それでも嬉しそうだった。
初めてメンバー以外の誰かに曲を披露するのはやっぱり緊張する。
環や、万理、メンバーは壮五の作った曲を素敵な曲だ、大好きだと言ってくれる。
けれど他の人は、と少しだけドキドキしてしまうのだ。
「ありがとう」
「俺、そーちゃんの曲、好きだよ」
「うん」
ありがとうを何度伝えてもきっと足りない。
いつも環は壮五の欲しい言葉を口にして背中を押してくれる。壮五も環が欲しい言葉を渡したいと思う。
「環くんの振り付けもすごく格好いいよ」
「へへ……」
「きっとみんなも好きになるよ」
「そーちゃんは?」
「もちろん僕だって好きだ。ううん、きっと、僕が一番大好きだよ」
環の手をぎゅと握ってこつん、と額を合わせる。
「いこ、そーちゃん」
「あれ、環と壮五さんまた手繋いでる!」
陸がそう言った。
気がつけばあの日から歌を歌う前にこうやって環と壮五は手を繋ぐようになった。
おまじないのようなものだろうか。
環が壮五の手をぎゅ、と握った。
「いこ、そーちゃん」
今日も環と二人で舞台に立つ。