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    asagi_di7

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    asagi_di7

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    本番前のおまじない

    「手、出して」
    「え? なんで?」
    「何でも!」
     撮影がもう間もなく始まる。あと少ししたら自分たちの新曲がテレビに映し出されてたくさんの人に届くのだ。
     壮五が作曲して、そして、環が初めて振り付けを担当した絆をテーマにした一曲。
    「そーちゃんの曲は今日も最高に格好いいです」
     手を繋ぎながら環がそう言った。
     その声は少しだけ恥ずかしそうで、それでも嬉しそうだった。
     初めてメンバー以外の誰かに曲を披露するのはやっぱり緊張する。
     環や、万理、メンバーは壮五の作った曲を素敵な曲だ、大好きだと言ってくれる。
     けれど他の人は、と少しだけドキドキしてしまうのだ。
    「ありがとう」
    「俺、そーちゃんの曲、好きだよ」
    「うん」
     ありがとうを何度伝えてもきっと足りない。
     いつも環は壮五の欲しい言葉を口にして背中を押してくれる。壮五も環が欲しい言葉を渡したいと思う。
    「環くんの振り付けもすごく格好いいよ」
    「へへ……」
    「きっとみんなも好きになるよ」
    「そーちゃんは?」
    「もちろん僕だって好きだ。ううん、きっと、僕が一番大好きだよ」
     環の手をぎゅと握ってこつん、と額を合わせる。
    「いこ、そーちゃん」


    「あれ、環と壮五さんまた手繋いでる!」
     陸がそう言った。
     気がつけばあの日から歌を歌う前にこうやって環と壮五は手を繋ぐようになった。
     おまじないのようなものだろうか。
     環が壮五の手をぎゅ、と握った。
    「いこ、そーちゃん」
     今日も環と二人で舞台に立つ。
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    会話も何もかも同僚視点で語られる話です。
    水木が消えた話ある日唐突に水木が消えた。
    何かの比喩ではなく、文字通り消えてしまった。

    朝の事だ。出勤したら普段は誰よりも早く来て仕事を始めている水木の姿はなく、こんなに遅いとは珍しいとそんなことを思いながらいつも通りに過ごしていた。
    だが、水木は始業時間を過ぎても来なかった。どうしたことかと思っていると、見知らぬ男が慌てるように室内に入ってきて俺に挨拶をしながら水木の席に腰かけていそいそと仕事の準備を始めたではないか。
    もしかしたら部屋を間違えている新人かもしれないと思い、声をかけてみると隣席の男はキョトンとした顔をして、それから大声で笑った。そしてこうも言う。

    元から僕の席はここですよ、と――

    思わず耳を疑った。つい先日まで水木が座っていた席にも拘わらずここは自分の席だと宣う男は一体何なのだと思った。ふざけるのも大概にしてほしい。そんな言葉が口から出かかるが目の前の男かが嘘をついているようには見えず、それどころかそう言われてみればそんな気がしてしてきている自分がいて、どうにかなりそうだ。
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