酔い宵 もうどれくらい飲んでるだろう。ボクとしたことが、すっかり羽目を外してしまったよ。燈京駅付近に、こんなに美味しい飲み屋さんがあったなんて。もう少し早く気づければ良かったな。教えてくれた四季くんに後でお礼を言っておかないと。
せっかくだからと仁武、十六夜を連れ出して酒を煽る。すっかり上機嫌になった十六夜が、「純壱位をハブくのは可哀想だろぉ」と、途中で一那を呼び出した。呼び出したと言うより、わざわざ地下まで迎えに行って、引っ張り出して来たって感じだったけれど。いやいや、しっかりお酒が回った十六夜の行動力には驚かされるばかりだね。
最初は嫌々していた一那も、お腹が空いていたのか、いざテーブルについたら、その小さな口でもくもくとテーブルに並べられた料理たちを食べ始めた。十六夜が頼んで一那のテーブルに置かれたのは…、薄い桃色の飲み物。苺関係のジュースだろうか。白い液体と混ざっていて……、あぁ、きっとこれは、いちごミルクだね。ガラスの中身をこくこくと煽った一那は、少し目を見開いて、でもそのままいつものように目を細めると、再びもくもくと箸を進め始めた。なんだか初めて食事をしているみたいで可愛いくて。見ていて飽きないなぁ。十六夜と仁武の愉快な笑い声をBGMにして、ボクはぼーっとその様子を眺めていた。普段はマスクに隠された、ピンク色の薄い唇が、ほうれん草のおひたしを挟み込む。箸を使って上手に口内へしまい込んで、小さく咀嚼する様が、なんだか見慣れなくて、可愛いと感じる。
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