『日輪葉』「ほら、早く目を閉じて」
目の前に広がっていた鮮やかなライトグリーンが、視界から消える。素直に目を閉じた自分が感じ取られるのは、おひいさんが何かをガサゴソと漁るような音だけだった。
「急に『座って目を閉じてね!』だなんて、オレに一体なにをする気なんすかぁ?」
今日はオレたちEveの単独ライブが行われる。リハーサルも終え、後は控え室でスタートの時間を待つばかりだ。そんな中、またいつもの気まぐれを発動させたおひいさんが、うきうき顔で俺を安っぽいパイプ椅子に座らせた。
おひいさんのわがままはいつもの事で、別に特別ではない。けれど、大概が「~~してね」ということばかりで、今のように自分が何かをするからそのままでいて、と言われたことはあまりない、と思う。
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