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    6時半のラッコ

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    6時半のラッコ

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    クトゥルフ神話TRPG
    「ワンルーム殺人事件」
    一応ネタバレ注意!

    入居者
    ・稲荷田狐
    ・白石白波

    #TRPG
    #TRPG小説

    ワンルーム殺人事件 狐の口から鮮血が漏れた。
     ゴブ、ゴブッと咳と一緒に吐き出された血が真新しいフローリングに飛び散る。赤い斑点を狐はまじまじと観察する。想像していたよりもずっと鮮やかな赤い色をしていた。
     これ、僕が吐いた?
     確認を取るかのように白波を見る。その手にナイフが握られていた。刀身にはぬるりとした粘りのある血液が光っている。
     それで僕を刺したの?
     目で訴えかけるが、白波はいつも通りほのかに笑みを湛えた不思議な表情をしていた。その顔を見て、狐も思わず血を吐きながら笑った。
    「ひどい、僕の事刺したんだ」
     狐の言葉に白波は何も答えない。緑色の目がじっと狐を見ているだけだった。
     初めて会った時も白波は狐を見ているだけだった。ジャングルジムに腰を下ろし、星空を眺める姿は今でも思い出せる。流れる銀髪を見た時の驚きと恐怖だって、鮮明に記憶の中にあった。
     体から力が抜け、膝からぐしゃりと崩れる。自分が吐いた血に顔を擦り付けるようにして、狐はうつ伏せに倒れた。その拍子に眼鏡が床の上を転がっていく。
     血はまだほのかに温かかった。刺された胸からまた新たに血液が漏れて狐の体を濡らしていく。
     トンと鈍い音、衣擦れの音がする。何かわからないが頭の方で何か動いたのだろうか。確認するのが億劫だった。
     床と胸の間に手を差し入れられ、ぐるんと仰向けにされる。抵抗する力も気力も無い。頭がクラクラするし、胸の傷が熱い。もう少し優しくして欲しかったが、口を開くのも面倒だった。
     後頭部を持ち上げられ柔らかな場所に置かれる。何をしているのかと閉じていた目を開くと、白波が狐の顔を覗き込んでいた。
     白波の緑色の目が笑っていた。膝枕をしながら、優しく狐を見ている。
     ひどい。
     狐の目に涙が浮かんだ。
     そっと白波の手が優しく狐の頭を撫でた。顔にかかる銀髪を丁寧に払われる。温かくて柔らかい指の腹の感触が頬に触れた。
     狐が顔を強張らせる。
     怖い、触らないで。
     怯えだした狐に白波が安心させるかのように微笑む。静けさと優しさ。まるで死んだ星を見ているかのように狐を見ている。
     恐怖と悔しさがないまぜになった酷い感情に、狐が顔を歪めた。
     ひどい、ずるい。僕が缶蹴りが弱い事を知っていても負けてくれないくせに、こんな時ばっかり優しくしないで。
     活けられた杏の花。からかう視線。
    (臆病な愛、乙女のはにかみ…。君にぴったりだね、狐先生?)
     僕の事知っているくせに、だけど嬉しいと思った僕の気持ちなんて知らないくせに。
     流れる涙を白波の指が丁寧に拭った。
    「ねぇ、狐先生。私の事は好き?」
     そんな事を聞かないで、僕の近くに来ないで。
     最期の力を振り絞り、狐は口を開いた。

    「大嫌いだ」
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    6時半のラッコ

    SPOILERTRPG
    「レコードユアレポート」
    (ムーキセキ 著)
    TRPGの探索者ならどなたでも遊べるシナリオです

    記された名前
    ・稲荷田狐
    レコードユアレポート■タイプライターからの挨拶
    |ではあらためて。ワタシは記録とお喋りが好きなしがないタイプライターだが、しばしよろしくお願いするよ。|
    |あなたのことを記録させて欲しい。|

    狐「僕も似たようなモノだけどね。よろしくお願いしちゃおうかな」


    ■あなたの『名前』
    |最初の質問だ。|
    |まずはあなたの『名前』を教えてもらえるだろうか?|

    狐「稲荷田狐。変わった名前でしょう?同じ名前の方にお会いした事はまだ無いね」


    ■あなたの『世界』について
    |ここには様々な世界からやってくるようでね。これを記録しておかないと。|
    |あなたの言葉で『あなたの住む世界』がどんな場所なのか説明してくれるかい?|

    狐「ごく普通の生活の中に、非日常が舞い込んでくる世界だね。魔法であったり、怪物であったりと、一般常識では理解されないようなモノに遭遇するよ。…そうだなぁ、僕が一番最初に事件に巻き込まれた時は、自殺した方を運ぶ電車に詰め込まれたっけ。そういえばあの時の言葉って、僕にとって重要な約束に繋がるものになってるね…」
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