「晋作、後で話があります。今晩は空けておいてくださいね」
え、と高杉が声に出す間もなく先生―吉田松陰は去っていった。衝撃をそこそこに米粒を口元に残したまま、呆ける姿を誰も見ていなくてよかったと高杉は持ち上げたままの茶碗を殊更ゆっくりと食卓に降ろした。
先生はふしだらである、これは高杉の持論だ。言葉通りの邪な意味でなく、己が総合的にこうだと勝手に思っているところが強い。だって生活力は壊滅しているし、研究の為に研究室に何日も寝泊まりしてしまう。主たる意味合いとして何がいけないのか、と問われればその―豊満な肢体だろうか。
頭一つ小さい体躯におよそ見合わない大ぶりの―西瓜の如き乳房。安産型めいた骨盤の豊かな臀部。いっそ口に出せば社会的に抹殺されそうな女性的魅力に満ち満ちている。
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