不死の人間と死への興味始まりはボクが死のうと思っていた、雨の夜。
「君、こんなところでなにしてるの?」
見ればわかるだろう、と思いながら相手の方をチラリ、と見る。
コイツは本当にボクがなにをしているか理解できていないみたいだった。
「見てわからないの?死のうと思ってるんだよ、ボク。」
「……死ぬ?死ぬって、なに?」
ああ、やっぱりコイツは死という概念をわかっていない。かくいうボクも何年も、何十年も生きてきたので死という概念はよくわかっていない。ただ、周りの一般的な人間は皆消えていった。
「あの、君が思う死って言うのを俺も体験してみたいんだけど、なにか手伝いをさせてくれないかな?俺も多分君と同じだから」
―ボクと同じってどういうこと?もしかしてコイツは……
「……俺も何年も、何千年も生きてて、周りの人間はみんないなくなった」
「……さあ、ボクとお前が同じかはわからないよ。」
「ま、俺は同じだと思っておくけど。で、君。名前は?」
「……水奈瀬、コウ」
「そっか。コウって言うんだね。俺は伊織弓鶴」
―弓鶴。コイツの名前は伊織弓鶴って言うんだ。
「うん、死ねない同士仲良くしようよ」
「だから、ボクは死ねないとは言ってないだろ!」
見ればわかるだろう、というツッコミは置いておいて、コウとは仲良くなれそうだな、と俺は思ったのでコウの元に毎日、色々ホームセンターで死ねそうなものを買っては持っていく。
「今日も死ねなかったね」
「しょうがないだろ、ボク達は特殊なんだから」
「あは、そうだったね。明日はなににする?」
「とっておきの死ねそうなやつを。」
俺は毎日毎日、コウと死ぬために奮闘しているけど、いつかこの日々も終わってしまうのかと思うとちょっと寂しくもなる。でも、それ以上に”死”というものが気になるんだ。
変な二人組なのは百も承知、楽しいから一緒にいる。
時には居酒屋で酒を飲みかわし、時にはファミレスでご飯を食べたり。平凡な日常のそばに”死”という概念を求めているなんてそこらの大衆は思ってもいないと思うけど、俺達はこれが楽しくてしょうがないんだ。
「いつか死ねる日が、来るのかな」
「そうだね。来るといいね」
「お前遠回しに来ないって言ってない!?」
「ふふ、どうだろうね~。」
いつか二人が死ねる日が、来ますように。