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    kudakituneko

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    kudakituneko

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    出られない部屋

    #水奈瀬コウ
    koMinase
    #フリモメン

    モメコウ 出られない部屋3RTで○○しないと出られない部屋に閉じ込められる推しカプを書く

    #腐の字書き絵描きさん用ボタン
    #みんなのボタンメーカー

    「どちらかが相手の手で女装させられないと出られない部屋」

    フリモメン 水奈瀬コウ ショタ




    ◇◆◇◆
     再起動を開始する。まずは機体の状態の確認から……電源・オン、ジャイロセンサ・水平、現在の位置情報・不明。
    (……エラー?)
    もう一度位置情報を確認する……不明。そして、自身の存在する空間において、電波が通っていない事にも気づく。最後に通信した時刻は30分ほど前、電脳体で掲示板を眺めていた記憶が再生される。自分はいつものように、暇つぶしと称して水奈瀬コウたちが集まるスレッドに入り浸っていた事も思い出す。
    (最後の記憶は?)
    狐…水奈瀬コンの機体で、スリープモードに入った以降の記録が無い。ぴくり、と自身の動揺を反映した『指先』が動く。
    「……っ!」
     ペットロボットの機体であるコンでは発生しない『生き物らしい』動作で息を呑む。指先の感覚と、何より機体の個体番号が、今の自分の姿が幼い水奈瀬コウであることを物語っていた。
    確認した平衡感覚は水平で、肌の感覚から察するにベッドの上に仰向けで転がっていたのだろう。薄く瞼を開けると、見覚えのない天蓋が目に入る。薄い桃色の布で作られたそれは、水奈瀬コウの既知の部屋には無いものだった。
    (やれやれ。誘拐、かぁ……)
    幼い姿の自分は、それなりに見た目が整っている。覚えはないが、子どもの姿で事務所を出ていたところを誘拐されたのだろう。子どもの姿でいるときは、必ず保護者役のそばにいるよう心がけていた。おそらくはその保護者ごと誘拐されたのだろうと検討がつく。嗅ぎ慣れないタバコの匂いは、誘拐犯のものだろうか。
    ぎしり、とベッドが揺れて何者かが離れていくのを感じる。数歩離れたところで足音は止まり、ため息が聞こえた。音の高さから推測して、東北イタコではないようだ。であれば、消去法でただひとり。事務所の古参で頼れる青年、
    「タカハシ……?!」
    に問いかけようとした水奈瀬コウの瞳には違う人物が映っていた。
    「やぁ、フリモメンだよ!」



     フリモメンはフリーモーションというソフトの精霊…妖精?である。今は存在する力が足りず、特定の語句を発して意思疎通を行える。最近は水奈瀬コウの兄を自称してみたりとフレンドリーな行動が目立つが、水奈瀬コウからは得体のしれない存在である……という認識だった。
    そんな存在と、知らない空間で二人きり。ネットも繋がらず助けも呼べない。つまり、
    「あんたが犯人かーーっ!」
    「おいおい、こいつはクレイジーだぜ。」
    「この状況が既に狂ってるよ!そしてそれができそうなのが目の前にいるって寸法さ。これが疑わずにいられるかい!」
    「ぐぬぬ……」
    フリモメンは眉根を下げ、右手の指を曲げた状態でこめかみに当てた。そのまま指を前後に動かすと、フリモメン(イケオジ)のはねた髪に触れる。
     警戒してベッドの上で体育座りをした水奈瀬コウを横目に、フリモメンは扉に向き直る。扉の取っ手を押したり引いたりしたのち、数歩下がってから扉に肩からぶつかる。鈍い音が部屋全体に木霊し、かなりの質量が扉に当たった事が水奈瀬にも予想できた。
    「現場からは以上です。」
    振り返ったフリモメンは、やれやれと肩をすくめる。脱出の意志は水奈瀬にも伝わったので、フリモメンに対する警戒を少し解き扉を目視する。フリモメンの後ろにプレートがあるようで、「〜〜部屋」と書いてあるのがわかる。
    視線を察したフリモメンが扉から離れると、プレートの全容が見えた。
    「『どちらかが女装しないと出られない部屋』?まさか、私がそんな都市伝説みたいなのに引っかかるとはね。」
    「割と、迷惑な……」
    フリモメンがプレートの下部を指で示すと、細かい条件が書いてあるのがわかった。
     条件は複数あり、
    曰く、『脱衣から着衣までをすべて相手の手で行うこと』
    曰く、『部屋の奥にあるクローゼットから、衣装を選ぶこと』
    曰く、『扉の前のカメラで写真撮影をすること』
    とかなり細かい指定がされていた。
     つまるところ、きせかえ人形になれということか、と水奈瀬は納得した。女装は男しかできない行為とも言うらしいし、狐の姿では服の用意がなかったのだろう。
    「しっかしこんなの、私に女装しろって言ってるようなものじゃないかい……。」
    水奈瀬の嘆息には理由があった。そもそも機械の水奈瀬コウは機体を頻繁に乗り換える関係上、発声器官と人格の記憶メモリ以外の器官を、機体に依存している。さらに、出力される馬力は使用している機体の中で、最も非力な機体の値を参照している。機体の乗り換え時に、誤って体に過負荷をかけないためのセーフティであると同時に水奈瀬コウが極端に非力である原因だった。背格好もフリモメンと差があり、フリモメンの衣服を脱がせたり着せたりするのは骨が折れそうだ。
    「コウ先生」
     声に振り向くと、フリモメンが両手に1つづつメイド服を持ち立っていた。クローゼットから持ち出してきたらしいそれは、二人の体格に合わせた大きさだった。どうやら、どちらが女装するかを聞きたいようだ。
    自分が非力であることをフリモメンは知らないが、タカハシや伊織弓鶴に介助されてる現場は見られている。もちろん女装の趣味はないが、図体の小さい自分が介助されたほうが時間が短くて済むだろう。水奈瀬は天を仰ぎ、長いため息をついた上で小さい方のメイド服を選んだ。



     クローゼットの前でフリモメンが手招きしているので近づくと、何種類もの衣装がつめられているのがわかった。
    フリモメンはチャイナ服、白ロリータ、ゴスロリ、メイド服、幼稚園のスモックなどをベッドに並べて「さぁどれにする」と水奈瀬に目線で問う。
    「体のラインが出るのは嫌だし、複雑そうなのも面倒で嫌かな。幼稚園児はなんか嫌だし……やっぱりメイド服、が幾分マシかね。」
    さすがに子どもじみた仕草に慣れきっていても、精神年齢が26歳の水奈瀬コウに幼稚園児のコスプレは精神的ダメージが勝った。フレンチスタイルで丈は短めだが、ブラウスで喉仏や肩などを隠せるメイド服を指差す。
    「じゃあちゃっちゃと始めようか、っと」
    「ちょっと待て!」
    自分のジャケットに手をかけたところで、フリモメンの手で静止が入る。
    彼は右腕をまっすぐ立てて、あごを支える動作をしたのち頷いた。
    「あーそうか、服を脱ぐところからだっけ。……わかったよ、きみがやればいいんだろう。」
    「そうそう。」
    「くっ……。」
     子どもの姿のときに自分で着替えをしたことがなかった──青年の姿でメンテナンスを行っていたため──ので好都合とはいえ、この年にもなって他人の手で服を脱がされるのはなかなかにキツいものがある。水奈瀬は顔をそらして、フリモメンがジャケットへ手を伸ばすのを耐えた。ジャケットの次はパーカーなのだが、万歳するよう動作で促すフリモメンに、水奈瀬はふと先程のジェスチャーを思い出す。
    「もしや、さっきのは手話かい?」
    「そういうの待ってた!」
    突然の大声に驚いて尻もちをついた水奈瀬をフリモメンは軽く持ち上げ、ベッドに座らせる。
     ベッドの上で固まる水奈瀬と目線を合わせるようにしゃがみ込み、首を傾げ曲げた指先を自身の左胸から右胸にトントンと当てる。
    「い、今のはわかるよ。『大丈夫?』だろ?」
    震えた声で確認する水奈瀬に、フリモメンは声を出さずに破顔した。
    「すこし驚いただけだよ。きみは決まった言葉しか喋れないと思っていたけど…私の認識が甘かったようだね、ごめんよ。」
    「大丈夫だ、問題ない!」
    音量の調整はできないようで、これまた大声で返ってきた返事に水奈瀬は「ふふっ」と笑う。
    「といっても、私は手話を少ししか知らなくてね。ネットも接続できないし……。できる限り口頭と手振りで話してくれると助かるよ。」
    「わかった。」
    一方的に言葉を放ってくるだけの存在かと身構えていたが、こちらの受け取り方次第ではコミュニケーションらしきものができるとわかって、水奈瀬の心は少し軽くなった。得体のしれない部屋にいることには変わりないが、一旦この存在の親切は無下にせず対応しようと思いなおす。
    「それじゃあ……はい、ばんざい」
    「ありがとう。」
     パーカーを脱ぎ、手早くネクタイを抜き取られてあとはシャツの段階になって、問題が発生した。フリモメンの手がボタンより大きすぎるのだ。小さいボタンは無骨な指をすり抜けてしまい、短くない時間がかかる。水奈瀬はベッドに置かれたメイド服を横目に見ながら
    (この状況、もしかして事案なんじゃ……いや、深く考えたら負けのような気がする)
    と、自分の状況を鑑みそうになるのを必死にこらえていた。小学校低学年くらいの自分の、シャツのボタンを外そうとする成人男性。その目つきに色はなく真剣なものだが、おそらくは事案である。ボタンの上を滑った指が、薄い胸板に触れる。若干のこそばゆさを我慢しながら、水奈瀬は胸を突きだしてボタンを外すのを手伝った。
     とうとう上半身の素肌が空気に触れ軽く身震いをする水奈瀬を尻目に、フリモメンは靴と靴下を脱がす。ベッドから立つように促して、ズボンも脱がそうとしたが、水奈瀬の手がそれを阻んだ。
    「どういうことだ?」
    「うぅ……やっぱり自分で脱いじゃ駄目かな?」
    「だが、断る。」
    「下着は男物のままでも良いよね!?」
    慣れた相手ではないフリモメンに、プライベートゾーンを晒すのは流石に抵抗感がある。服から見えない下着はどうしても死守したいと意思表示すると、フリモメンは着替えの中からかわりにパニエを取り出した。下着が見えない状態にすることで妥協したらしい。止めなければ彼の前で裸にされ女子の下着をつけられていたかもしれないと思うと、水奈瀬は冷や汗をかく思いだった。



     ブラウスを着付け、パニエをつけ、上からフレンチメイドドレスのコルセットを締める。ニーハイソックスを履きエナメルの靴で足を飾る。自身を包む柔らかい布地を軽く引っ張り鏡台の前に立つと、鏡にはぎこちなくカーテシーをする水奈瀬が見えた。
    履き慣れない靴に、着慣れない服。これで写真を撮れば終わると思い、フリモメンを振り返った水奈瀬は固まる。そこにはウィッグと化粧道具を調達してきた彼がいたからだ。
    「まさかあんた、完璧主義じゃ……」
    「おお!」
    「サムズアップは流石にわかるけども!ええいしょうがないなあ!最後まで付き合うよ……。」



     鏡台の前に座ってウィッグ用のネットを被り、化粧水を塗る。途中、両目を閉じるのに抵抗感のある水奈瀬を察したのだろうか。目の周りを塗る際はフリモメンが合図を送り、片目ずつ乳液を塗っていった。同じくBBクリームをさっと塗り、フェイスパウダーをブラシでTゾーンにのせる。化粧を塗る時は手際よく、次のメイクに取り掛かる時は「ここ」と自分の顔を指し示してくれるので心構えがしやすい。最初は少し緊張していた水奈瀬も「次の化粧はこれかい?……当たった!」と笑みをこぼすほど打ち解けた頃、アイメイクが終わった。フリモメンはチークで頬に色を足したのち、口紅を手に取る。
    「これで決まりだ!」
     これで最後だ、と言っているようで水奈瀬も姿勢を正した。口紅の蓋を開けブラシで紅をとり、唇に塗る。アイメイクをしているときは彼の手で隠れて見えなかったが、飄々とした口ぶりとは裏腹に、真剣な顔つきでフリモメンが水奈瀬にメイクを施しているのが見えた。その篤実な眼差しに水奈瀬はどきりと固まっていると、知ってか知らずか彼が視線を合わせて微笑む。
    「ここ」
    フリモメンはアルカイックスマイルを浮かべて自身の口元を指し示し、軽く口を開ける。
    「……っ!ああ。」
    指示通りに口を開けると、ブラシが唇の縁をなぞる。口紅をつけ終わり、水奈瀬にティッシュを差し出すフリモメンは、また柔らかな笑顔に戻っていた。
    「はーどっこい」
    フリモメンが立ち上がるときに息をつく。その呼気にタバコの匂いが混じっている事に、水奈瀬は気づいた。



     ウィッグをつけ、髪型を軽く整えたあと。フリモメンが鏡台の前の椅子を回転させると、水奈瀬から戸惑いの声が出た。
    「えっ。すごいね、こんなにも変わるのか。」
    「フリモメンプレゼンツ!」
    何重にも化粧を塗りかさねているのかと思っていたが、その印象はいい意味で裏切られた。目の上は薄く色づいたシャドウが乗り、アイラインもブラウン系を使うことで金髪と馴染むように塗られている。鼻筋、鼻先、目尻のCゾーンにはさり気なくハイライトが入っており、淡いパールが立体感をもたらしていた。
    「ナチュラルメイクってやつかい?」
    「そうそう!」
     水奈瀬がフリモメンの方を振り返ると、ちょうど彼が入口近くのカメラを手に取った所だった。写真を撮らなければいけないという条件を思い出す。
    「あー、うん……」
    声色がトーンダウンしたのに気がついたフリモメンに、水奈瀬は慌てた口調で弁解する。
    「いや、写真はちゃんと撮られるとも!ただちょっと、恥ずかしさが、ね!」
    「はははっ」
    「今更だって言いたいんだろ!?私だってわかってるよ、もう!」
    ここまでちやほやされたのもこの幼い見た目のせいだろうけど、こちとらフォーマットは26歳男性なのである。いくら自分の見た目が可愛くなろうと、いっぱしの羞恥心があった。
    ……あった、が、ここまで気を遣われて、お膳立てまでされては男が廃る。いやいや、女装は男にしかできない男らしい行為らしいじゃないか。そう自分に言い聞かせ、足を斜めにして椅子に座りなおす。すーはーと深呼吸をして、
    「いいよ、撮ろう。」
    とフリモメンの持つカメラに姿勢を正した。
    「行くぞ!ハイパァァァアアアアッ!!!えい!」
    「……あははっ!」
    いつしか自然にコミュニケーションできた気になってたけど、そういえばこいつって決まった語句しか喋れないんだった!そう思い出し笑ったところで、水奈瀬コウの視界は白く塗りつぶされた。



     再起動を開始する。まずは機体の状態の確認から……電源・オン、ジャイロセンサ・水平、現在の位置情報・Nine role floor building──通称、ナインビル。
    メインカメラ・オフ、嗅覚センサ・コーヒーとオイルとタバコの匂い……?
    「んぅ?うーん。」
    瞼を開ける。俯いていた視界には、狐の前足が映る。確かめるように右前足を曲げると、薄ピンクの肉球が見えた。
     ペットロボットの姿である私、水奈瀬コウは充電ドックから立ち上がり伸びをする。低い視界から見える事務所は、いつものように広大に見えた。
    「事務所の中で喫煙者は居なかったはず、だよねぇ。」
    私の電源が落ちている間に、来客があったのだろうか。ソファに飛び乗り嗅覚を働かせても、特にタバコの匂いはしなかった。首を傾げている私を抱き上げるものがいる。この高さは、
    「伊織、誰か来客などはあったかい?」
    「特に無いな。」
    どうかしたか、と聞く伊織弓鶴の声に嘘は見られない。もとより嘘をつかれるような関係でもなし、私も正直に「タバコの匂いが気になってね」と返す。
    「そんな匂いするか?そもそもウチの喫煙者はゼロだろ。」
    「そうだよねぇ。どうしてそう思ったんだったか……わっ」
    「つかせんせ、さいきん狐になりっぱなしだっただろ。ちょっと陰干ししたほうが良いんじゃないか?におうぞ」
    「げっ」
    狐の毛皮に顔を埋めた伊織の指摘に、私は体をこわばらせる。
    「小さい方は、もう置いてある部屋ごと換気してるから。大きい方使えよな。」
    「タカハシは今日バイトだったよね?」
    「そうだけど。……そんなに気にするか?」
    「私が気になるだけだよ。っとと、ありがとね。」
    「ん。」
     伊織に機体の乗り換えを手伝ってもらう。宇宙人狼をやっている時はこの成人男性の機体を使っているのだが、平常時に使うのは久々だ。アイドリング状態になっていた体に人格メモリを移すだけの作業は、つつがなく終わる。……目を開いた。
    「じゃあ消臭剤かけとくからな。」
    「ああ、ありがとうね。」
    部屋を出ていく伊織を見送って、伸びをしたり肩を回したりする。それじゃあ動作確認も兼ねて、
    「散歩にでも、行くかな……。」
    あくび混じりに一歩を踏み出した。

    ◇◆◇◆
    「どちらかが相手の手で女装させられないと出られない部屋」  生還
    水奈瀬コウ 記憶なし
    フリモメン 記憶?
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