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    桜餅ごめ子

    @yaminabegai

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    桜餅ごめ子

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    のべりすと使用。カビマホ。
    息抜きに作ったら思いのほかカービィがずっしり重くなった。

    ##全年齢

    きみのすきなところ ある日の午後のことだった。ローアに遊びに来たぼくはマホロアと昼食を食べたら眠くなってしまったので、彼の部屋を借りてお昼寝をしていた。
    「勝手にやってキテお昼食べて、ボクのベッドで寝て……キミはホント〜に自由ダネェ」
     隣で本を読んでいたマホロアは呆れたように笑うと、本をサイドテーブルに置いてぼくの傍らに寝転がった。
    「……ボク、雨って好きじゃないナァ」
     マホロアはそう言うと、両の手で己の身をきゅっと掻き抱いた。梅雨真っ只中のプププランドは、ここしばらく長雨が続いている。降りしきる雨の音は軽やかなBGMのようだと思うが、彼にとっては違うらしい。
    「そうなの? 洗濯物干せないから?」
     ぼくののんきな返答に、マホロアは呆れるように笑った。そしてこちら側に寝返りを打つと、ぼくの手を取った。マホロアの手はぼくの手より一回り大きいから、彼と手を繋ぐとぼくの手はその大きな手のひらに包みこまれてしまう。
    「……さむイ、から」
     ぼそっと呟いて目を伏せる彼の面持ちは、どこか悲しげだった。
    「じゃあ、あっためよう!」
     だからぼくは、繋がれた彼の手をぎゅうっと握り返した。ぼくはマホロアの手が好きだ。柔らかな手袋に包まれた手のひらは、いつもたくさんの楽しいものを作り上げている。厚い布の奥に感じられる肌はほんの僅かにごつごつとしていて、彼の人生の軌跡を物語っていた。
     一方のマホロアは、ぼくの手をふにふにと指先で触っていた。どうやらぼくの手の感触に興味を持ったらしい。くすぐったくて仕方ないけれど、嫌ではない。むしろ、彼の温もりを近くに感じられて、嬉しかった。
    「……カービィの手、ちっちゃいネ」
    「マホロアの手が大きいんだよ」
     唐突な言葉に、思わずきゃらきゃらと笑い声を上げてしまう。しかし彼はぼくの言葉には何も答えず、ぼくの手をじっと見つめていた。不思議に思って顔を傾げると、彼は不意に口を開いた。
    「ネェ、カービィは……ボクのこと、スキ?」
     唐突に投げかけられた問い。その意図は全く分からないけれど、答えは明白だった。
    「もちろん! だーいすき!」
     ぼくは満面の笑みで、はっきりとそう言葉にした。マホロアははっとして目を見開くと、やがて恥ずかしげに俯いてしまった。顔がフードで隠れてよく見えなくなってしまったので、下から覗き込むようにしてマホロアの表情を窺う。そうすると、互いの目がかちりと合った。マホロアの瞳はフードの闇の中でぼんやりと光を宿していて、まるでお月さまのようだった。
    「あのさ、マホロア」
    「……ナニ?」
     居心地悪そうに目をそらすマホロアに、ぼくは問いかけた。
    「どうして君は、そんなに綺麗な目をしているの?」
     思いもよらぬ質問だったのか、マホロアはぎょっとしてぼくを見つめ返した。
    「き、キレイじゃない、ヨ……」
     マホロアはフードの裾を引っ張って顔を覆ったため、お月さまの双眸が隠れてしまった。無理強いするのもいやだけど、どうしても残念に思ってしまう。
    「ウソつきの目が、キレイなわけナイデショ?」
     フードの隙間から笑みが見えた。それが無理に作られた笑顔であることはひと目で分かった。
    「綺麗だよ、きみの目」
     ぼくはマホロアの頬に手を添えて、まっすぐに見据えた。はちみつ色の瞳。ほのかな、しかし確かな光を宿した瞳。ぼくの心に焼き付いて、ずうっと消えないきみの色。
    「ほらね。やっぱり、綺麗だ」
    「……ホント、キミって……変わってるよネェ……」
     マホロアはそう言ってふいっとそっぽを向くと、切なげにため息を付いた。その横顔に、かつて彼が発した言葉がフラッシュバックする。――どうしてボクなんかを助けてくれるの――……悲しい言葉だ。彼のあの言葉を、ぼくはずうっと忘れることができないでいた。きみが今までどんな人生を歩んできたのか、ぼくは全く知らない。いろんなことを知っていて、いろんなことができるきみは、きっとたくさん、たくさん頑張ってきたんだろうなって思うけど――思うだけだ。具体的なことは何も知らない。もちろん、無理に聞き出したい訳じゃない。ただ、彼の過去に「ボクなんか」と思わせるような者がいたのだろうと、出来事があったのだろうと、彼の言葉やふるまいの端々から感じるたびに。そのたびに、暗い炎がぼくの心をジリジリと焼き焦がす。ぼくにとって、ぼくがきみを愛していることは、ご飯を食べたらお昼寝したくなるのと同じくらい、当たり前のことなのに。きみにとってはきっと、そうではない。過去を変えることはできない。ぼくはそれが、全身をかきむしりたくなるほどにもどかしい。ぼくがそこに居たならば、そんなやつらの好きになんてさせなかったのに。きみを傷つけたもの、貶めたもの、追い詰めたもの、全てが憎い。そこに居なかった自分すらも憎い。今までこんなふうに思ったことなかったのに。明日の風は明日の風と楽しめていたぼくは死んでしまったのだろうか。
     沸き上がる激情を抑えられず、ぼくはマホロアをぎゅうっと抱きしめた。突然の抱擁に驚いたのか、彼は小さく悲鳴を上げた。振りほどこうとはしないが、狼狽した様子でふらふらと視線をさまよわせている。ぼくは少しだけ身体を離すと、マホロアの顔をじっとまっすぐ見つめた。
    「ぼく、きみの目が好きだよ」
     腕の中でマホロアがグッと身を強張らせたのが肌越しに伝わる。しかし、抱きしめる手を緩める気はない。
    「……ボクは、キライダヨォ。光ってて悪目立ちするシ……」
    「ぼくは好き」
     ボソボソと話すマホロアの言葉に、ぼくは間髪入れずに答えた。
    「ほかにもいっぱいあるよ。きみの好きなところ」
    「……例えバ?」
     マホロアはおずおずと尋ねた。訝しげ、というよりは、不安げな面持ちだ。
    「声が好き」
    「コエ……?」
     マホロアは不思議そうに聞き返すと、ぱち、ぱちとゆっくり瞬きをした。その様子に、締め上げられていたぼくの心が少しだけほぐれた気がした。
    「……うん。あのね、きみの声ってね、お星さまが笑う時の声によく似てるんだ」
    「お星サマ、が?」
     マホロアは不可解といった様子で眉間に皺を寄せて首を傾げた。そんな彼の様子に思わず頬が緩む。
    「ワープスターに乗って宇宙を飛んでる時にね、時々聞こえるんだ。お星さまが、楽しそうにくすくす笑ってる声。こんぺいとうの瓶をくるくる振った時みたいな、かわいい声なの」
    「は、ハァ……」
     理解の範疇を超えたのか、マホロアはぽかんと呆けた顔でぼくの言葉に耳を傾けていた。
    「だからぼく、こうやってきみとお話しするの、大好きなんだ。大好きなマホロアの声がいっぱい聞けるから」
    「え、エット……」
     マホロアは迷うようにもごもごと言い淀んだ。しかし、やがて意を決したように口を開いた。
    「……そんなコト言ったノ、キミが初めてダヨ」
     マホロアは言葉を切ると、苦しそうに息を吐いて、両の手を強く喉元に当てた。ぼくは何も言わず、彼の言葉をじっと待った。
    「今でも、思っちゃうンダ。どうしてキミは、ボクなんかとトモダチになってくれたんダロウって。ボクだったら、ボクみたいなヤツ、ゼッタイ好きにならない。トモダチになんて、なりたくナイって思うノニ」
    「『なんか』じゃないよ」
     あんまり辛い言葉の羅列に耐えきれなくなって、思わず遮ってしまう。
    「ぼくはぼくの大切なひとを軽んじられたくない。たとえ誰が相手でも。きみ自身だとしても」
    「……カービィ」
     ぼくの言葉を受けて、マホロアは戸惑ったような、震える声でぼくの名を呼んだ。その表情は悲痛に歪んでいて、心細げな表情を浮かべていた。まるで迷子になった子どものようで、胸の奥がぐちゃぐちゃに磨り潰される。
    「きみは知らないんだ。ぼくがどれほどきみが好きなのか。きみのことを想うたびに、ぼくの心は焼け焦げてしまいそうなのに」
    「え、エッ? あ、アノ」
     切迫した心が早口にさせてしまう。よくないって分かっているのに、マホロアの言葉に被せるように喋り続けてしまう。
    「きみ自身が思えないなら、その分ぼくが言う。ぼくはきみが好き。きみは素敵な子だよ。きみと出会えてよかった。友だちになれてよかった。なりたくないなんて思ったこと、一度だってない」
    「か、カービ」
    「またこうしてお話できるのがぼくはすごく幸せなの。きみの作ったもので遊べるのがすごく嬉しいの。きみが生きててくれて、ぼくは本当に――」
    「わ、分かッタ! 分かったヨォ!!」
     マホロアは叫ぶように声を上げると、ぼくの身体をガシッと掴んで引き剥がした。ハアハアと全身で息をしながら、真っ赤な顔でぼくを睨みつけた。
    「も……モウ分かったカラ……勘弁シテ……」
     目をギュウッと瞑って、消え入りそうな声でマホロアは呟いた。いやな気持ちにさせてしまったのかと一瞬思ったが、耳はピコピコと嬉しそうに揺れている。ほっとして、へにゃりと破顔する。マホロアは自らを落ち着かせるように胸の上に手を置いて、数回ゆっくり深呼吸すると、ぼくに向き直った。
    「キミ……よくあんなコト言えるネェ……恥ずかしげもナク……」
     やれやれ、といった風に肩をすくめるような動作をするマホロアに、ぼくは笑みを返した。
    「ほんとのことだもん」
     そう。ぼくには恥ずかしがってる余裕なんてないのだ。ぼくが抱えるきみへの想いを、ちゃんときみに知ってもらうには、遠回りな言葉じゃ届かない。ぼくの大好きなきみの魅力を、他でもないきみ自身が分からないなんて、あまりにも悔しい。耐え難い。きみへの想いを伝えるためには、なりふりなんて構っていられないのだ。
    「キミって、ホント……ヘンなヤツダヨ……」
     言葉は悪口みたいなのに、笑みはあどけなくて、優しい。ああもう、どうしてくれるの。そんな顔をされたら、ぼくはいよいよおかしくなってしまうじゃないか。
    「~~……っ! マホロアっ!」
     ぼくは我慢できずに、彼に抱きついた。額が触れ合いそうな至近距離で見つめ合うと、彼は照れくさそうに目を伏せる。その仕草があまりにいじらしくて、思わず息を呑んだ。
    「照れてる?」
    「う、ウルサイナァ……ッ」
     ああ、やっぱり、きみが好きだ。ぼくはきみが愛おしくて仕方ないんだ。もういてもたってもいられなくなって、彼のお腹にすりすりと額をすり寄せた。青空と白雲をまとうような、マホロアのローブ。清潔だけど、こうやってじっくり匂いを嗅ぐと、奥の方にうっすらと薬品や機械油の香りが残っている気もする。ほのかな汗の匂いに混じったそれに包まれていると、なんだか頭がくらくらしてしまう。
    「フフッ」
     マホロアは突然小さく笑うと、ぼくの頬に手を添えて、ゆっくりと上を向かせた。
    「……キミの目だって、きれいダヨ? まるで、宇宙ミタイ」
     黄色い瞳が三日月のように弧を描いた。柔い微笑みに、鼓動がドキンと高鳴る。頬の、きみの手が触れているところが、じわじわと熱を帯びていく。マホロアが途中で制止した気持ちが、少しだけ分かった。好意を伝えられるのって、胸の奥をこしょこしょとくすぐられているような、温かい面映ゆさを覚えてしまう。もじもじして、心も体もそわそわとしてしまう。
    「ネェ、カービィ。お星サマの笑い声って、ホントに聞こえるノ?」
     マホロアはぼくから窓辺に視線を移した。雨はいつの間にか止んでいて、空は夕日の薄紅色に染まっている。
    「うん。雨の音も、風も、お日さまの光も、みんなお星さまの声でね……宇宙にいると、聞こえてくるんだよ」
     マホロアはふわり、と窓辺に近づくと、窓硝子に手のひらをぺたりとくっつけて、雨粒が伝った跡を辿るように指を滑らせた。
    「ククッ、非科学的なハナシダネェ」
     くすくすと笑う彼の声は、やっぱりぼくの心を惹きつけてやまない。きっとぼくはもう、どうしうようもなくきみに魅入られてしまっているのだろう。
    「じゃあ、一緒に宇宙をお散歩しようよ! お星さまの声、聞きに行こう! 今夜!!」
    「宇宙をお散歩なんて、スケールが大きいネェ」
     はしゃぐぼくにマホロアは肩をすくめて笑うと、くるりとこちらに振り返った。
    「……しょうがないナァ。せっかくだし、行ってあげてもイイヨ」
     言葉そのものはイジワルだけど、声色も表情も、好奇心に満ち満ちていた。
    「やったぁ! 決まりだね!」
     ぼくはうれしさでいっぱいになって、ベッドからぴょんと飛び降りてマホロアに抱きついた。マホロアはもう慌てずにぼくを抱き留めると、クククッとイタズラっぽく喉を鳴らした。
    「サ~テ、星の笑い声の正体は何だろうナァ~? 電磁波の影響? それとも圧力波? 可聴域の違いの可能性もあるヨネェ。色々考えられるナァ~」
     白々しく、しかし楽しげにつらつらと言葉を重ねる。言葉の意味はよく分からないけど、お星さまの笑い声が事実かどうか疑われてることはなんとなく分かった。
    「もう! ほんとに聞こえたんだもん!」
    「クッククク! 楽しみダナァ~」
     ムッとしてぷうっと頬を膨らませるも、マホロアがあんまり楽しげに笑っているものだから、結局ぼくもつられて笑ってしまうのだった。
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    桜餅ごめ子

    DONE #晩夏_魔術師とあの子は
    二次創作ホラー企画「晩夏、魔術師とあの子は」( https://togetter.com/li/2209738 )用作品です。
    「ストーリー5 彼岸花の川」を使用。
    企画終了までもう少し。最後までお楽しみ頂ければ幸いです!
    尚この小説自体は100%私の性癖(ヘケッッッ!!!!!)で構成されています。
    この世で一番怖いのは 目を開くと、そこは知らない部屋だった。ボクはそこで、見覚えのないベッドに寝かされていた。
    「……?」
     しかし、ボクは少しも驚かなかった。それどころか、恐怖や警戒、疑念といった、本来なら発生するはずの感情が全くわかなかった。
     ベッドの中から周囲を見渡す。やはりどこもかしこも記憶にない。窓の外に広がる彼岸花畑も、遠くで流れるメロディも、部屋に漂う甘い匂いも、何もかも。異常事態であるはずなのに、心は警報の一つも鳴らさない。だが、ボクの論理的な思考が叫んだ。この状況はおかしい、ここから逃げ出さなければならない、と。
     自分でこの部屋に来た覚えはない。ならば誰かに連れてこられたのだろう。一体誰が? 何のために? 分からない。推理しようにも手がかりがない。まずはこの甘い匂いの発生源を辿り、少しでも情報を得よう。ボクはそう思い至ると、ベッドから下りた。
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