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    桜餅ごめ子

    @yaminabegai

    このポイピクを見る者は一切の希望を捨てよ
    (特殊な解釈・設定を含む二次創作が多いのでお気をつけください)

    ◆個人サイト◆
    https://gomemochiru.jimdofree.com/
    ・投稿作品データベース(作品をカテゴリ、シリーズ別に整理)
    ・SNSアカウント一覧
    ・マシュマロのリンク
    などを置いています

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    POIPOI 253

    桜餅ごめ子

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    ※特殊設定
    ループしてるカービィの結末。

    この話が前提です。
    https://poipiku.com/7411890/8884256.html

    設定詳細↓
    https://poipiku.com/7411890/8712548.html

    ##全年齢

    黄昏時のドリームランド 最後のパーツを探して、ぼくはナッツヌーンにやって来た。誰も連れてこず、一人で。
     繰り返しの物語によって心身は擦り減り続け、もはやぼくはかつてのぼくではなくなっていた。他者との関わりは、軋んだ心を痛ませる。だからここ最近の「繰り返し」では、一人でパーツ集めをしている。
     夕日に照らされる海を見つめ、せせら笑った。――かつては皆で、わいわい騒いで歩いた道だったのになあ。
     ふと、夕焼け空を見上げる。すると、ふらふらと浮かぶ雲の中に、君の姿を見た。ここにいるはずのない、黄昏時が見せた蜃気楼。それでもぼくは、縋るように手を伸ばしていた。

     歩を進めると、テーマパークのような空間に辿り着いた。人気が無いがそれはきっと夕刻ゆえで、昼間なら大勢の人で賑わっているのだろう。
     ぐるりと見回すと、どこもかしこも君の意匠であふれている。まるで、いつか君が語ってくれた「夢」を、そのまま結晶化したような――そんな場所だった。
     
    「オヤ、まだ残っていたのカイ、カービィ? わいわいマホロアランドはそろそろ閉園ダヨォ〜」
     背後から声をかけられた。小鳥のさえずりのように可愛らしい音色。どこか辿々しい片言口調。声の主が誰だか、分からないはずがない。
     バッと振り向く。そこには思った通り、マホロアが佇んでいた。しかし、ぼくが知っている姿ではなかった。
    「……どうしたの? その格好」
     歯車模様のおしゃれなシルクハットを被り、胸には大きなリボンを付けていた、服も、よく見るとマントが燕尾服のような形になっている。
     そもそも、マホロアがこんなところにいるはずがない。マホロアは四六時中せわしなくローアの修理をしている。たまにぼくの冒険を手助けしてくれる物語ときもあるけど、基本的には全く外出したがらない。ぼくの知るマホロアは、そんな子だった。
    「ン……アァ、ひょっとしてキミ、『迷子』にナッチャッタのカナ?」
     燕尾服のマホロアはずいっと顔を近づけて、ぼくをしげしげと観察した。その無遠慮さも、ぼくの知るマホロアには無いもののような気がした。
    「カービィ、聞いテル?」
    「あ……うん」
     燕尾服のマホロアにじとっと見つめられ、慌てて返事をする。
    「迷子……」
     燕尾服のマホロアの言葉を反芻する。迷子、か。確かにそうだ。同じ物語を繰り返して、あの子が無事なまま迎える結末を探してきたけれど、その過程で、ぼくはあの子が友達になった「カービィ」ではなくなってしまった。行く道も帰り道も見失ったぼくは、迷子と言うにふさわしかった。
    「……そうだね。迷子、かも」
    「ソッカァ。ダイジョウブ! ちゃんとボクが元の場所に帰してアゲルカラ!」
     燕尾服のマホロアは、ニコッと笑顔を浮かべた。しかしその笑顔は、いつもの愛想笑いではなく、心から笑っているように見えた。マホロアのそんな晴れやかな表情を、ぼくは見たことがなかった。
    「……う、うっ……」
     気づけば涙を流していた。
     そうだ。ぼくはマホロアに、こんなふうに笑ってほしかったのだ。なんのしがらみもなく、ただ笑ってほしかった。共に笑い合いたかった。それだけの願いだったのに、ぼくは随分遠いところに来てしまっていて。
    「帰れないよ、もう、無理だよ……」
     嗚咽が漏れる。泣き顔を見られたくなくて俯くと、涙がぽたぽたと地面に落ちて、余計に格好つかなくなって、さらに涙があふれてくる。もう嫌だ。もう続けたくない。やめてしまいたい。そうして二度と覚めぬ眠りにつきたい。そう思ってしまうぼくは、もうぼくではない。こんなぼくでは、きみと友達になれない。それならいっそ、この腐り落ちた輪廻ごと、ぼくを殺してほしい。
    「――ダイジョウブダヨ、カービィ」
     優しい声と共に、ぎゅうっと強く抱きしめられた。ぱっと顔を上げると、ぼくは燕尾服のマホロアの胸の中にいた。
    「キミはちゃんと帰れるヨ、カービィ」
    「……いや、いやだ……、カービィって、呼ばないで……」
     今のぼくに、その名で呼ばれる資格は無い。そう主張して彼の胸を押し退けようとする。しかし彼は逃してくれず、背中に回していた両の手をぼくの頬に沿えた。視界が彼でいっぱいになる。
    「ダイジョウブ、キミはカービィダヨ。このボクが保証スル」
     焔のような橙でもなく。
     血のような赤でもなく。
     毒々しい紫でもなく。
     虚ろに灯った白でもなく。
     残酷に嗤う隻眼でもなく。
    「ボクは、キミを信じテル。だからキミも、キミを信じテ!」
     まばゆく光る黄色い瞳が、真っ直ぐぼくを見つめていた。
    「……信じても、いいのかな。ぼくはまだ、きみと友達になれるぼくだって」
     ぐす、と涙をこぼしながら、弱音を口にする。燕尾服のマホロアは、涙が伝うぼくの頬を手袋でぎゅっと拭き取り、再びニコッと笑った。細められる双眸は、まるで三日月のようだった。
    「当然ダヨォ! ダッテ、ボクたち約束したモン! どこに行ッテモ、どこで出会ッテモ――、ずーっと、トモダチでイテネ、ッテ!」
     彼はぼくの手を取る。温かくて柔らかい、大きな手のひらだった。
    「……マホロア」
     彼の名を口にする。ぼくの知らない「マホロア」。でも、ぼくの心が叫んでいる。確かに彼は「マホロア」だと。
    「――ウン、ボク、マホロアダヨォ。キミのトモダチの、マホロアダヨォ」
     燕尾服のマホロアは、繰り返し言葉にした。ぼくの心に染み込ませるように。自らの宝物を確かめるように。ふと、彼の瞳がわずかに潤む。風に吹かれる湖のように、さざめいている。
    「マホロアランドはイツデモ、キミ達を待ってるカラ、サ」
     しかし彼はギュッと目を瞑って、柔らかく笑った。
    「だからサッサと、ボクをタスケてネ! 星のカービィ!」
     彼はそう言って、クックククと喉奥で笑い声を響かせた、特徴的で、意地の悪そうな声。ぼくの知るマホロアがその笑い方をするのは、本当に僅かな瞬間だけで。
    「ボクは、未来ここで待っテルカラ――たのんダヨ、カービィ!」
     彼はパチンと指を鳴らす。ふわりと風が吹いた気がして背後を見ると、空中に星型の渦が開いていた。
    「……うん! 任せて、マホロア!」
     身体が宙に浮かび、渦に吸い込まれる。遠ざかる彼に、笑顔を向けた。いびつで、不格好で、涙でぐちゃぐちゃだけど。
     いまのぼくにできる、とびきりの笑顔だった。

    「ガンバッテ、カービィ」
     果たして支配人の声は彼に届いたのか。知る者はいなかった。
     
     
     
     裏切りと過ちの果てで、小さな魔術師が目を覚ます。
     降りしきる雨空を見上げて、苦しげにため息を付きながらも。
     その双眸には、確かに光が宿っていた。
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