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    アロマきかく

    @armk3

    普段絵とか描かないのに極稀に描くから常にリハビリ状態
    最近のトレンド:プロムンというかろぼとみというかろぼとみ

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    アロマきかく

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    毎度毎度命使い潰すどこぞの緑が悪い。
    ウララン君毎回死に様見せちゃってすまないねぇ。見てくれる人がいるからこそ死にがいがあるってもんでさぁ。何だよ死にがいって。

    いやまずそんなホイホイ死ぬんじゃないよ緑。聞いてんのかダフネん。
    てかウラランの前に管理人のダメージ相当でかいやろこれ。作業中の、しかもPALEで生命力吸い付くされての死だからまだグロさは薄いんだろうけど。
    実際何回死んだんだこれ。

    #ろぼとみ他支部職員

    正義の天秤 まだ施設が上層しか開放されていなかった頃。E.G.O回収のため、2日作業して記憶貯蔵庫に戻る、という繰り返しの最中だった。
     見た目には大して恐ろしそうにも見えない、細長い……鳥?辛うじて羽毛はあったから、鳥だったのだろう。そう、その細長い鳥が収容された日のことだった。

     今日はどんなアブノーマリティが来たのだろう。あの時は興味津々で毎度収容室まで見に行っていた。今は……ちっと抱えている担当アブノーマリティがハードだから、毎回見に行く余裕はなくなってしまった。まぁ、それでも出来るだけ見に行くようにはしている。モニター越しに見るだけではわからないこともあるから。
     収容室の扉には小窓が据え付けてある。ペーペーの新人でもない限り、大抵の場合は直接アブノーマリティを見ることが出来る。見た結果ビビるかビビらないかは別として。
     それでも中には見たらいけないレベルのヤバい奴なんかが居たりするもので、その場合は直接目にすることのないように、遠隔操作でシャッターを降ろすこともできる。
     この日のアブノーマリティは推定WAWクラス。……『彼女』と同じ、WAWクラス。
     同じクラスであろうがピンキリだということはわかっている。でも、『彼女』の歪んだ正義の前になすすべもなかった身としては、WAWクラスは充分脅威たる存在なのだ。——この、触れたら折れてしまいそうな鳥だって、今の俺たちにとっちゃ、れっきとした脅威。そう捉えておいた方がいいだろう。
     ダフネ先輩が早足でつかつかと収容室に向かって歩いてくる。まだ業務開始には時間があるから、様子見にでも来たのだろう。いつも新しく収容されたアブノーマリティの作業を率先して行う先輩。明らかに危険なポジションを真っ先に確保する。その姿勢がとても勇敢に見えた。試練や脱走したアブノーマリティの鎮圧も、冷静で的確で。
     あるいはダフネ先輩こそ、この施設のヒーローなんじゃないか。そんな尊敬の眼差しを持って先輩を見ていたのは、きっと自分だけではないと思う。


     ある日、上映会が終わったあと。先輩と二人きりになるタイミングで訊いてみた。
    「ダフネ先輩、何でいっつも新顔のアブノーマリティに真っ先に作業行くんすか」
     先輩は視線だけ一瞬ちらと俺の方に寄越して、直ぐに正面を見据えた。その視線の更に先、きっと先輩にだけ見えているものをじっと見据えながら、いつもと同じ、飄々とした軽い調子で答えてくれた。
    「流れみたいなもんだよ。『お約束』って奴さ」
    「そういえば先輩と管理人、業務初日からの付き合いなんすよね」
    ——信頼ってヤツっすか。羨ましいっす。
     そう言いかけて、言葉が押し留められた。
     僅かに目を細める先輩。まるで翡翠のような、吸い込まれるかのように深い色をした瞳の奥。
     そこに、『何か』があった。胸が締め付けられる感覚を覚える。その正体がわかるはずもなく、かと言って直接訊くこともできず。無性に哀しさを覚えた。
     たぶん、正確な答えじゃないんだ。ただなんとなく、そう感じた。
     それからだ。たまにダフネ先輩からあの気迫を感じるようになったのは。


     細い鳥の収容室に向かって真っ直ぐ向かってくる先輩に声をかけ……ようとした。「あ、ダフネ先ぱ」
     緊張が走る。総毛立った。見ていると足が竦み、身体が震える。あの『気迫』は何度か視たことがある。モニター越しでもわかった。先輩の纏う空気がざわり、と震えて、雰囲気が一変する。皆には視えないのか。感じないのか。纏う空気に混ざって渦巻くある種の覚悟のようなもの。それが視える度、畏怖すら覚えていた。
     今回に至っては、そもそも目つきからしてまるっきり別物だった。
     無愛想なように見えて、笑えば優しい印象を見せる先輩の目。その面影が無い。何かを決意した目。見ていると重圧が伸し掛かってくる。息苦しい。自分の呼吸が荒くなるのをなんとかして抑える。
     据え付けられた小窓から細長い鳥を一瞥し、瞬間、踵を返して足早に去る先輩。
     すれ違う。刹那、翡翠色の風が吹いた気がした。
     はっとして振り向き、先輩の背中を目で追う。今まで視たものとはまるで違う、異質な何かが混ざっていた。
     なんだ、この感覚は。今までに視たことのない類の気迫。恐ろしさと、危うさと。そして無性に嫌な予感がした。
    「先輩……?」
     どうするつもりなんですか。周囲に聞こえないよう、小さく問いかけた。焦燥が募り、その背が見えなくなるまで目が離せなかった。
     業務が始まると同時に判明する。恐ろしくも危うい嫌な予感の正体。

     ダフネ先輩が『いつも通り』真っ先に作業に入る。収容室内のカメラ越し、今もずっと視えている。異質な気迫。先輩が僅かに呻く。直後、管理人に伝えた言葉に衝撃を受けた。そうか。だから――

    「あー……、管理人、コイツ青ダメージだ。近くに立ってるだけで怖気がする」
    ――それは、『決死』と言う名の覚悟。
    「……帰れなかったら、すまん」

     青。蒼。マニュアル曰く死そのものだというPALE属性のダメージ。防ぐ術はほとんど存在しない。
     この細長い鳥の作業ダメージが、よりによって作業ダメージが、PALE……?

     PALE属性。『死そのもの』という属性の恐ろしさは、今まさにそれに苛まれているダフネ先輩の次くらいには、自分がよく知っているつもりだ。
     『彼女』のE.G.Oから放たれる、4種の属性を持つ魔法弾。物理のRED・精神のWHITE・侵食のBLACK・そして死のPALE。
     鎮圧時には、自身の足の速さと射程の長さを活かして、長距離から魔法弾を放ち先制攻撃をすることが多い。意図した属性の弾を撃つことは叶わないのがもどかしいところだが。
     時折放たれる蒼い魔法弾、その蒼を見る度に、E.G.O使用者である自分自身すらも、背筋に冷たいものが走る。実のところ、魔法弾を撃つ度に蒼い恐怖と戦っている。明かしたことはない。それが俺の覚悟だから。
     魔法弾は仲間には当たらずすり抜ける。魔法弾がすり抜けた仲間は傷が癒える。攻撃と回復を兼ね備えた優秀なE.G.Oであることは間違いない。頭では充分承知しているのに。いまだにあの『蒼』が、仲間をすり抜ける度に恐ろしくなる。
     敵性個体に蒼の魔法弾が当たった瞬間、相手は大きく生命力を削がれ、一瞬動きが止まる。その様子を何度も見てきた。いくら敵性個体といえど、僅か一瞬なれど死の淵に立たされる際の挙動が、それが自分の手によるものだということが、まだ、慣れない。慣れてはいけないのだと思う。

     ダフネ先輩が作業を終えた。目に見えて傷を負っているわけではないのに顔面は蒼白で、肩で大きく息をしている。先輩の作業中ずっと、自分の手が握り拳を作っていたことに今になって気づく。手のひらに食い込んだ爪が紫色の痕を作る。このE.G.Oを着るにあたってマニキュアのために爪を伸ばすかどうか迷ったが、作業の邪魔になるからと切っておいて正解だった。
     握りしめていたせいでまだ若干痺れる手で端末から作業結果と職員情報を参照し、戦慄する。
     BOX生成は7割程成功しているのに、ここまでバイタルレベルが低下してしまうのか。残った推定バイタル値はせいぜい4割といったところ。管理情報が開いてないから、観測レベルに依る補正も期待できない。

    「クリフォト過負荷がついている状態での作業は、危険ですね……」
     コービン先輩の言う通りだ。たかが4%、されど4%。ダフネ先輩自身も言っていた。ギリギリの綱渡りだと。
    「……それでもまぁ、やってみようぜ」
     先輩、それは
    「今の俺達で青属性を管理できるかどうか」
     先にクリフォト過負荷を解除してから……!

     ダフネ先輩はあれ程のダメージを受けてなお、クリフォト過負荷のかかった状態で作業を試すつもりなのだろうか。……駄目だ。危険過ぎる。
     今までPALE属性の攻撃を扱ってきたからこそ、その危険性が解る。先輩もPALEダメージを受けて、その恐ろしさにはとっくに気づいているだろうに、先輩自らそれを言い出すのは――。
     回復を終えて再び収容室に入った先輩は、相変わらずあの気迫を纏っていた。無茶だ。無茶と知って、それでもやり続けるつもりだ。確信する。ならせめて、生きて戻って……

     あとわずかで作業が終わるというところで、先輩が崩折れた。
     解っていた。予想はついていた。

    「……せん、ぱい……」
     先輩は、死ぬまで続けるだろうことを。

     TT2プロトコルで1日が巻き戻る。巻き戻って、作業に行って、倒れて、巻き戻って。
     何度繰り返しただろう。過負荷がかかった状態では無理だ。無茶だ。過負荷さえ解除していれば1回はなんとかなる。でも先輩は、頑なに過負荷がかかった状態での作業ができるか挑戦している。
     先輩は諦めるつもりなど毛頭ないらしい。死の瞬間まで、『あれ』が視えるから。
     管理するだけなら、過負荷を解除すればいいのに、何でこんな無茶な、……

     あれ、待てよ。何かがおかしい。

     まさか、まさかダフネ先輩は……こうなることを、知っていた……?
     業務開始前に収容室を覗きに来たとき。見る前からわかっていると言わんばかりのあの目つき。一瞥し、引き返すときのいつもとは質の違う気迫。今も、まだ背負い続けている気迫。
     十中八九死ぬとわかってて、それでも過負荷のかかった状態で作業できるか試す。いや、試しているんじゃない。一刻も早く情報を開きたいんだ。
     クリフォト過負荷はクリフォト暴走を起こせば解除される。だが、その度に暴走する収容室が増えていく。ただでさえ火の鳥とかいう厄介者を抱えているから。極力暴走させずに情報を開示したかったんだ、先輩は。

     だからってこんな無茶、

     先輩が倒れる。

     繰り返したら、

     倒れる。

     見てる方が先にどうかなっちまう――

    「――え、――」
     視界が歪んだ。ほぼ同時に、耳を劈く管理人の叫び声。

    「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

    ……

     1日ではなく、記憶貯蔵庫刻印日まで巻き戻った。
     先に折れたのは、管理人の心だった。言っても聞かないのなら、強引に戻すという手段を取れた時点で、まだ壊れるまで行ってないことは解った。……でも。
     死んだ職員の装備は失われる。1日をやり直すのなら問題はないが、そのまま記憶貯蔵庫に戻ると装備は失われたまま。
     管理人は一刻も早くこの光景から離れたいがために、装備を失うことも忘れて1日をやり直す前に記憶貯蔵庫に戻ったに違いない。

     先輩。
     先輩は、あの細長い鳥の情報を……、抽出できるE.G.Oがなんなのかを……、
     知っていたんじゃないですか。……ダフネ先輩。
     そうでもなきゃ、あんな無茶なこと。せいぜい2回も試せばわかるものを、何度も何度も……。

     でも、もし知っていたとて、
     それは管理人の心を壊しかけてでも得るべき価値のあるものだったんですか。
     自分の命が尽きるところを何度も何度も見せて、心に傷を負わせて。
     あの恐ろしくも危うい気迫は、先輩が自らの命を投げ捨てる覚悟なのだろうと確信しました。

     先輩は……自分の命を何だと思ってるんですか……。
     投げ捨てても良い命なんてあるわけないのに。管理人も、他の職員たちも皆、ダフネ先輩の命は命のひとつだって、そう思ってるんです。
     自己犠牲で人を傷つけるのは、……ヒーローじゃない。



     それでも俺は、ダフネ先輩の強さに惹かれる。今ならわかる。先輩は、強すぎるんだ。あまりにも強すぎて、周囲を置いていってしまう。それに気付ければ。
    「愛と正義の名のもとに……か」
     強く在るべし。しかして守るべき人を守れず、それの何が正義か。何が愛か。
     肝に銘じる。管理人が錯乱する前に、止めようと言い出せなかった俺にだって責任の一端はある。

     きっと……絶対、先輩だって、管理人を壊したくはないはず。
     管理人の心に傷を負わせないために、真っ先に自分が作業に入るという日常を作る。危険な作業で先輩が死ぬ光景を『いつものこと』にしてしまえば。『いつものこと』ならば、当たり前の光景として流せるから。

     それ……無理ありすぎっすよ、先輩……。
     皆が皆、先輩ほど強いわけじゃないんすから――



     力と、人の心と。秤にかけて傾くのはどちら側?
     あの細長い鳥が首に掛けていた歪な天秤は、どちら側へ傾いていたのだろう。
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    アロマきかく

    MOURNINGコービン君から見た緑の話。
    と見せかけて8割位ワシから見た緑の話。未完。
    書き始めたらえらい量になり力尽きて改めて緑視点でさらっと書き直したのが先のアレ。
    コービン君視点、というかワシ視点なのでどうしても逆行時計がなぁ。
    そして33あたりから詰まって放置している。書こうにもまた見直さないといかんし。

    緑の死体の横で回想してるうちに緑の死体と語らうようになって精神汚染判定です。
     管理人の様子がおかしくなってから、もう四日が経つ。



     おかしくなったというよりは……”人格が変わった”。その表現が一番相応しい。むしろそのまま当てはまる。
     Xから、Aへと。

    「記憶貯蔵庫が更新されたらまずい……それまでになんとかしないと……」
     思い詰めた様子でダフネが呟く。続くだろう言葉はおおよそ察しがついていたが、念のため聞いてみる。
    「記憶貯蔵庫の更新をまたぐと、取り返しがつかないんですか?」
    「……多分」
    「多分、とは」
    「似た状況は何回かあった。ただし今回のような人格同居じゃなしに、普段はXが表に出ていてAは眠っている状態に近い……っつってた、管理人は。相変わらず夢は覚えてないし、記憶同期の際に呼び起こされるAの記憶は、Aが勝手に喋ってるのを傍観しているような感じだったらしい」
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