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    アロマきかく

    @armk3

    普段絵とか描かないのに極稀に描くから常にリハビリ状態
    最近のトレンド:プロムンというかろぼとみというかろぼとみ

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    アロマきかく

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    このままじゃどうも収まりが悪い。
    向こうが俺たちの戦いはこれからだエンド、じゃぁこっちは?
    せめて一区切り付けてやりたい。そんな気持ちから生まれた盛大な蛇足。の序章。
    ベースはラ・ルナのアブノーマリティとしての解釈。

    綺麗に終わると思ったろ?ここからgdgdになっていくんだよ。
    最初は親友Xとダフネを会わせてやりたかっただけだったんですぅ…。
    そしたら勝手にいちゃつきだして…。

    #ろぼとみ他支部職員

    月明かりの下、ふたり 西の空が朱に染まる。

     朝よりもずっと長い影。空の色を仄かに乗せた木々は大きくその印象を変える。
     吹く風はやや勢いを強め、暖かさを退けて肌寒さを齎す。

     後悔が無いと言えば嘘になる。
     自身の役目も目的も、もう果たした。
     でも自分は欲張りだから。
     ずっと側で守りたかった。
     自分には”今後”なんてないことくらい、とうにわかっていたのに。

     朱から藤へと移ろう空。

     ずっと空は灰色だと思っていた。
     灰色なのは自身の心だった。
     心が視界から色を奪っていた。
     こんなに空が多様な顔を持っていたのか。
     知ることが出来たのは、全てあの約束のおかげ。

     藤の空に紺が混ざる。

     後悔がもうひとつ。
     もう少し陽当たりの良い場所にしておけばよかった。
     きっとこの角度では朝方くらいしか陽が当たらないだろう。
     ずっと目的を果たすために入念に下準備していたあのときとは違う。
     ただ刹那的な感情に身を任せた。

     空は殆ど紺色が占め、その濃さも増してきた。
     ぽつぽつと光を放つのは星だろうか。
     かつて見た灰色の空に、星は無かった。



     日が落ちるにつれて風が強さを増す。少々喧しい。
     喧しさに若干うんざりして周囲に意識を巡らせる。

     風の吹きすさぶ中において、明らかに異質なものがあった。
     ”それ”は風に靡かない。喧しいほどに木々を煽る風のなかで。
     ”それ”は音を立てない。喧しくてもそれ以外の音が立てばすぐわかる。
     ”それ”は――

     真っ直ぐ、を見ていた。



     こちらに向かって一步踏み出す。草を踏み分ける音が立たない。
     踏みしめた足元の草が倒れない。
     風に靡かない白衣。歩く動きに合わせて裾が風を孕むように踊る。

     ゆっくりと歩き、立ち止まる。立ち止まると同時に白衣の裾も跳ねるのを止めた。
     手を伸ばせば触れられる程の距離。もう手は伸ばせない。
     わかっていると言わんばかりに、向こうから手を伸ばしてきた。
     葉に指先が触れる。くすぐったい。つつくなって。
     そこは触れられずにすり抜けるところだろう、と茶化したくなった。

     てっきり残ったのは意識だけかと思っていた。
     感情が溢れてくる。どんなに、どんなに会いたかったか。
     生憎今の感情を表現するすべを持たない。
     涙を流せないことがこんなにもどかしいとは思わなかった。

     そっと、枝葉を傷つけないように、包み込むように抱かれる。
     本当は力いっぱい抱きしめたいのだろう。
     それをぐっと我慢してこちらを気遣っているのがありありと伝わってきた。
     何も返せない自分が申し訳なくて、悔しくて、それでも嬉しくて。

     吹き抜ける風で葉を擦る音が、せめてもの礼の言葉として伝わって欲しい。
     それしか表現の方法を持たない。不器用になったものだ。
     まぁ、もともと感情表現に関してはかなり不器用な方ではあったが。



    ……触れられるのなら。
     もしかしたら、出来るのではないか。
     ここにあるのが、ただの意識や感情の残滓ではなく……
     魂だとしたら。

     奥底から、振り絞るように、伝わってほしいとの想いを込めて。

    『――エックス――』

     白衣の男の名を呼んだ。
     無事伝わったことは、エックスの反応ですぐわかった。
     びくり、と体を震わせる。動作が止まる。
     恐る恐る抱きかかえるように回していた腕を戻して、枝のひとつに触れる。
     感じたことを自分の中で咀嚼して、どうすれば良いのか気づいたのだろう。
     口は動いていなかった。

    『お久しぶりです――ダフネさん』

     外郭に近いせいか、星がやたらとよく見える。
     見ているのか、見ていると感じているだけなのかはわからない。
     ただそこにあるという事実が”わかる”。
     いつの間にか、月も浮かんでいた。

     そういえば、ラ・ルナの記録にあった。
     月は綺麗なものだ。
     だが月の正体を知ってしまった瞬間、その事実に絶望する、と。
     ならば、正体を知っていてもなお綺麗だと思える、この感情は何なのか。

     裏路地から見上げた夜空に、月は浮かんでいただろうか。
     覚えていない。
     月が綺麗なものだということすら知らなかった。
     だから、絶望もない。
     自分の中に幻想的な光が一つ増えた。それだけでいいじゃないか。



     エックスは、俺がヒトとして立つ際に本来目があるだろう位置をずっと見ている。
     俺の目を見ている。
     自分自身、目なんてどこにあったのかよくわからなくなってきているのに。

     俺をヒトとして見ているはずのエックスは、”月桂樹”に触れていた。
     ヒトにも見えるし、樹にも見えるのだろうか。
     モノの見方は人それぞれ。同じモノだって、少し角度を変えればまるで違う顔を見せる。

    『なぁ、エックス――あんたには、俺が何に見える?』
     変なことを訊くものだ、という様子で、エックスが答える。
    『ダフネさんは、ダフネさんじゃないですか』
     今度は口を動かす。口の動かし方を忘れたくない、そんな感情が垣間見える。
    『――言いたいことはわかります。変ですよね』
     ヒトとしての俺を見つつも樹に触れているという自覚はあるらしい。

    『多分さ、あんたには両方見えてるんだよ。何というか……魂の形として』
     ヒトとしての魂の形。樹としての魂の形。無自覚ながらも両者の区別がついているから。
     俺の目を見つつ、俺の枝葉に触れることができる。
     きっとそういうことなんだろう。そういうことにしておこう。

    『魂……?』
     エックスがきょとんとして鸚鵡返しのように尋ね返す。
     そうか、まだカルメンの記憶が戻らないうちに死んじまったんだ。

     参ったな、自分でもフワッとしか把握できてないのに。
     なんと説明したらいいものか。
     なんたって情報源はこの点のエックスと、あとは運よく長期間生き延びたXたちから伝え聞いた分がおぼろげながら少しだけ。
     エックスも語彙が飛び飛びになるから、結局よくわからずじまい。

     自分なりの言葉で曖昧に説明する。
    『……多分、多分だぞ。魂ってのは……それそのものが持つ”解釈”みたいなもんなんじゃねぇかなって』
     真実でもない。事実でもない。
    『……えーっと……あんたから見える俺は、あんたにとっての”ダフネ”に見えてる。あんたにとっての”ダフネ”は勿論ずっと一緒に業務してきた俺だよな。でも今はしがない一本の樹だ。あんたは樹が”ダフネ”に見えるんだろ?だから、あんたの中で”ダフネ=樹”が成立してる。樹であることがわかってるから、”管理職ダフネ”としての俺を見ながら”樹”に触れてる。その状態が、あんたの中ではどっちも正しいんだ。これが、あんたにとっての俺の解釈』
     自分でも曖昧すぎて、何が言いたいのか若干行方不明になっている。
    『はは……わかんねぇよな。まぁ、モノの見方の問題なんだよ、きっとさ』
     ラ・ルナの話を思い出す。
    『……そんで、俺自身もあんたの無自覚な解釈が両方正解だと思ってる。本人……まぁ本人でいいか。とにかく、本人がそれでいいっつったら大体合ってんだ。それが俺にとっての俺自身の解釈』
     首を傾げて固まっているエックスに、あくまで自分なりの結論だけ大雑把に言う。
    『あんたがそう思うならそれで良いんだよ。否定されない限り』
    『なんだか、クラクラしてきますね……こんな状態なのに。不思議な感じです』
     自分でもよくわからないことを無理に説明するもんじゃないな。案の定理解できないといった様子で、首を傾げながらひたすら枝をなぞっている。葉っぱはくすぐったいからやめろって。

     半日も経たずにヒトとしての感覚を忘れつつある。それでもまぁ……いいんだけどさ。
     でも……本当にようやく、せっかく、逢えたんだ。だったら、管理職の俺として接したい。
    『――なあエックス』
    『? 何ですか、ダフネさん』
    『あんたがこれからどうするのか知らないけどさ……できればちょくちょくここに来てくれないか』
     おかしいな。何となくこうなるって予感がしたから、急いでこの点のエックスに親友になってくれるよう頼んで、了承貰って、それで覚悟はできていたのに。もうやるべきことは全て終わったから、そう思っていたのに。
     あぁ、俺は欲張りなんだ。

    『ここに来て……そして俺の目を見て欲しいんだ。正直、もう自分でも若干曖昧になってきててさ。俺自身の認識が曖昧になると、きっとあんたが見る俺の姿も……』
     諦めていたはずなのに。予想される事態を話そうとすると上手く言えない。忘れてしまうのが怖い。
     俺がヒトであったときの俺を忘れたら。俺の魂からヒトであった俺が失われたら。きっとそのとき本当に俺は死ねるんだろうな。
    ――死にたくない。
     そうだよ、最初からそうだったじゃないか。諦めたくせに、覚悟したくせに。我儘な、生への執着。きっとそれこそが俺の本質。似たようなことをさっきも言ったな、この点のエックスに。

    『大丈夫です。ちゃんと見えていますから。頼りがいのある、あのときのままの姿で』
     だから、そんなに不安そうな顔をしないでください。エックスが言う。感情が顔に反映されちまうのか。じゃあ結構バレバレだったんじゃないのか。
     途端に恥ずかしさが襲ってくる。ってことはエックスには耳まで真っ赤になった俺が見えてるんだろうな、あーもう。
    ――ふふっ。エックスの笑い声を感じる。案の定笑われてら。
    『そんな恥ずかしそうにしているダフネさん、初めて見ました。……ちょくちょくどころか、毎日でもいいですか?姿は同じですけど、僕と業務にあたっていた頃とは何か雰囲気が違うというか……。僕が色々教えていたあの頃から、すごくたくさんのことを経験してきたんだな、と思います。だから、』
     エックスが”俺の目”を見る。目がこの高さなら――
     思い出せる。俺はまだヒトでいられる。
    『きっと積もる話がいっぱいあると思うんです。僕の知らない話が、いっぱい』
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    アロマきかく

    DOODLEたまにはサブ職員さんの解像度を上げてみよう。
    49日目、オフィサーまでも一斉にねじれもどきになってその対応に追われる中、元オフィサーであったディーバにはやはり思う所があるのではないか。そんな気がしたので。
    甲冑で愛着禁止になったときも娘第一的な思考だったし。
    なお勝手に離婚させてしまってるけどこれは個人的な想像。娘の親権がなんでディーバに渡ったのかは…なぜだろう。
    49日目、ディーバは思う 嘔吐感にも似た気色の悪い感覚が体の中をのたうち回る。その辛さに耐えながら、“元オフィサー”だった化け物共を叩きのめす。
    「クソっ、一体何がどうなってやがんだよ……ぐ、っ」
     突然社内が揺れ始めて何事かと訝しがっていたら、揺れが収まった途端にこの有様だ。
     俺がかろうじて人の形を保っていられるのは、管理職にのみ与えられるE.G.O防具のお陰だろう。勘がそう告げている。でなければあらゆる部署のオフィサーばかりが突如化け物に変貌するなどあるものか。

     もしボタンを一つ掛け違えていたら、俺だってこんな得体のしれない化け物になっていたかもしれない。そんなことをふと思う。
     人型スライムのようなアブノーマリティ――溶ける愛、とか言ったか――が収容された日。ヤツの力によって“感染”した同僚が次々とスライムと化していく。その感染力は凄まじく、たちまち収容されている福祉部門のオフィサーが半分近く犠牲になった。そんな元同僚であるスライムの群れが目前に迫ったときは、すわ俺もいよいよここまでかと思ったものだ。直後、管理職の鎮圧部隊がわらわらとやって来た。俺は元同僚が潰れてゲル状の身体を撒き散らすのを、ただただ通路の隅っこで震えながら見ていた。支給された拳銃を取り出すことも忘れて。
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    アロマきかく

    MOURNINGコービン君から見た緑の話。
    と見せかけて8割位ワシから見た緑の話。未完。
    書き始めたらえらい量になり力尽きて改めて緑視点でさらっと書き直したのが先のアレ。
    コービン君視点、というかワシ視点なのでどうしても逆行時計がなぁ。
    そして33あたりから詰まって放置している。書こうにもまた見直さないといかんし。

    緑の死体の横で回想してるうちに緑の死体と語らうようになって精神汚染判定です。
     管理人の様子がおかしくなってから、もう四日が経つ。



     おかしくなったというよりは……”人格が変わった”。その表現が一番相応しい。むしろそのまま当てはまる。
     Xから、Aへと。

    「記憶貯蔵庫が更新されたらまずい……それまでになんとかしないと……」
     思い詰めた様子でダフネが呟く。続くだろう言葉はおおよそ察しがついていたが、念のため聞いてみる。
    「記憶貯蔵庫の更新をまたぐと、取り返しがつかないんですか?」
    「……多分」
    「多分、とは」
    「似た状況は何回かあった。ただし今回のような人格同居じゃなしに、普段はXが表に出ていてAは眠っている状態に近い……っつってた、管理人は。相変わらず夢は覚えてないし、記憶同期の際に呼び起こされるAの記憶は、Aが勝手に喋ってるのを傍観しているような感じだったらしい」
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